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NHK-Eテレ 「100分de名著・菜根譚(さいこんたん)」
11/5(水)から毎週水曜23:00~23:25 <全4回シリーズ>
【NHKテレビテキスト】
「100分 de 名著 ~菜根譚」
2014年11月1日NHK出版発行、10月25日(土)発売済み
https://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=C5010101&webCode=62230442014
【参考図書】
今井宇三郎「菜根譚」岩波文庫1975/1
釈宗演「人生論の名著『菜根譚』」三笠書房・知的生きかた文庫1997/5
湯浅邦弘「菜根譚 中国の処世訓」中公新書2010/2
【原著の概要】
内乱や政争が相次ぎ混迷を極めた明代末期・万歴帝の時代(1572~1620年)に生まれた、
処世訓の随筆集「菜根譚」。
優秀な官僚として活躍後、政争に巻き込まれ隠遁(いんとん)したと推測される人物、洪自誠(こう・じせい)が著した。
前集222条、後集135条の断章からなり、主として前集は人の交わりを説き、後集では自然と閑居の楽しみを説いている。
「菜根」という言葉は、「人はよく菜根を咬みえば、すなわち百事をなすべし」という故事に由来。「堅い菜根をかみしめるように、苦しい境遇に耐えることができれば、人は多くのことを成し遂げることができる」という意味。
「人は逆境において真価が試される」という思いを込めて付けたと考えられている。
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【各界リーダーの座右の書】
中国ではあまり重んじられず、日本の加賀藩儒学者・林蓀坡(1781~1836年)によって文化5年(1822年)に刊行(2巻、訓点本)され、禅僧の間などで盛んに愛読されて来た。
近代日本では、処世訓の最高傑作の一つに数えられ、田中角栄、吉川英治、川上哲治、五島慶太ら各界のリーダーたちから座右の書として愛されて来た。
「菜根譚」が書かれた時代は、儒教道徳が形骸化し、国の道筋を示すべき政治家や官僚たちが腐敗し、誰もが派閥争いに明け暮れ、優れた人材が追い落とされ、ズル賢い人物だけが取り立てられていた。
「菜根譚」は、そんな生き辛い世相の中、何を縁(よすが)に生きていいか分からない人に向けて書かれた。それは既存の価値観が揺らぐ中で、戸惑いながら生きている現代の日本人にも通じる。
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【番組の概要】
そこで11月の「100分 de 名著」では、混迷する時代の生きる指針の書とも言うべき「菜根譚」を採り上げる。
ゲスト講師: 大阪大学大学院教授: 湯浅邦弘
1957年島根県生まれ。1980年島根大学教育学部国語専攻卒業、1985年大阪大学大学院文学研究科中国哲学博士課程満期退学、1987年北海道教育大学講師、1989年島根大学助教授、1995年大阪大学助教授。1997年「中国古代軍事思想史の研究」で大阪大学文学博士号。2000年大阪大学教授。2009年大阪大学文学研究科懐徳堂研究センター長を兼務。
中国哲学専門の湯浅邦弘教授を指南役として招き、
「菜根譚」の世界を分り易く解説。様々な言葉を現代社会に繋げて解釈。
そこに込められた独特の「幸福論」「交際術」、現代にも通じる「人格の磨き方」を紐解いて行く。
「菜根譚」が時代を越えて読み継がれるのは何故か?
湯浅教授は、その理由を、「洪自誠が本流から外れて不遇を囲ったからこそ、持ち得た冷徹な視点があり、そこから時代を超えた普遍性、鋭い人間洞察が生まれた」と語る。
人生、誰もが陥る「逆境」にどう立ち向っていくかを「菜根譚」から読み解く。
出演: 平泉成、高野アツシオ
司会: 伊集院光,武内陶子
語り: 小野卓司
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11月5日(水)23:00~23:25 [再放送11月12日(水)5:30~5:55/12:25~12:50]
第1回 「逆境を乗り切る知恵」
「菜根譚」には「逆境は良薬」「逆境は人間を鍛える溶鉱炉」など、本来ならマイナスに捉えてしまう「逆境」を前向きに捉え、それをバネにして更に高みを目指す生き方が数多く示されている。
そこには、政争に巻き込まれ隠遁(いんとん)せざるを得なかったと推測される著者・洪自誠自身の境遇が色濃く反映している。
辛酸を舐(な)め尽くしたからこそ、「逆境」を活かし切る珠玉の言葉を生むことができたのだ。
単に「逆境」に対する姿勢だけではない。逆境にあって、力を蓄積することの大事さ、冷静に物事を見る方法等、「逆境を過ごす方法」まで書かれている。
人生、誰もが陥る「逆境」にどう立ち向って行くか?
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■■ 第1回
逆境を乗り切る知恵を「菜根譚」から読み解く。
■ 居逆境中、周身皆鍼砭薬石、 砥節礪行、而不覚。 処順境内、満前尽兵刄戈矛、 銷膏靡骨、而不知。
逆境の中にいる時は、身の回りの全てのことが鍼(ハリ)や薬になり、それで節操を砥(と)ぎ、行動を研(みが)いている。だが本人は気付かないものである。
逆に、順境にある時は、目の前の全てのことが、実は刃や戈(ほこ)となって、それで肉を溶かし骨を削っている。だが本人はそれを知らずにいるものである。
ピンチはチャンスに違いない、逆境でラッキーと前向きに捉えることが大切。
但し、逆境へやみくもに飛び込めば再起不能に陥る表裏一体(紙一重)の危険があるよ。
■ 苦心中、常得悦心之趣。 得意時、便生失意之悲。
あれこれと苦心している中に、とかく心を喜ばせるような面白さがある。
逆に、自分の思い通りになっている時に、すでに失意の悲しみが生じている。
マイナスの中にプラスがあり、プラスの中にマイナスが隠されている。
子育ての苦心の中に喜びがあり、振り返った時にあの子育ての頃が一番幸せだったよね。きっと幸せが潜んでいるに違いないと心に刻みながら。
■ 伏久者、飛必高、開先者、謝独早。 知此、可以免蹭蹬之憂、可以消躁急之念。
長く地上に伏せて、力を養っていた鳥は、一旦、飛び立つと他の鳥よりも高く飛翔でき、他の花よりも先に咲き誇った花は、早く散ってしまう。
この道理を理解していれば、中途で足場を失ってよろめく心配を免れることもでき、成功を焦(あせ)る気持ちを消すこともできる。
三年鳴かず飛ばず、果報は寝て(練って)待て、逆境とは力を蓄える時。
いざ上昇する時には大きくジャンプできるポテンシャルとなり得る。
■ 漁網之設、鴻則罹其中、螳螂之貪、雀又乗乘其後。機裏蔵機、変外生變,智巧何足恃哉。
魚の網を張ったところ、思いがけず大きい鳥がかかる。カマキリが獲物を狙っていると、雀がの後ろからカマキリを狙っている。
仕掛けの中にまた仕掛けが隠されていて、思わぬ異変が異変を生む。小賢しい智恵など何の役に立とうか。
視点を変えてみることも重要だよ。
下り坂に向かう兆しは察知しにくいが、最盛期にはもう始まっている。
■ 進歩処、便思退歩、庶免触藩之禍。 着手時、先図放手、纔脱騎虎之危。
一歩前進する時に、直ちに一歩退くことを思えば、牡羊が垣根に突っ込むような災難を免れることができるだろう。
また、何かに着手しようとする時に、先ずはそのことから手を引くことを考えておけば、それでやっと虎の背に乗るような危険を脱することができるであろう。
石橋を叩いて渡る。例えば、外食産業の社長は次の店舗拡大ばかりを考えずに、事業がうまく行かなくなった場合の危機管理(幕引き)も必要だ。
イケイケどんどんの売上シェア至上主義は危険、利益率確保の視点も大切。しかし無理なコスト削減(人減らし)はもっと危険。
■ 衰颯的景象、就在盛満中、発生的機緘、即在零落内。故君子居安、宜操一心以慮患、処変、当堅百忍以図成。
物事の衰える兆しは、最も盛んで満ち足りている時にあり、新しい芽生えの働きは、葉の落ち尽くした時にもう始まっている。
だから君子たる者は、無事平安な時には、本心を堅く守って患難に備えておき、また異変に遭遇した時には、忍耐を重ねて事が成功することを図るべきである。
ピークもどん底もなかなか分からない、過ぎてからしか分からない。
舞い上がることもなく落ち込むこともなく、程々に暮らして行くことが大切。
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11月12日(水)23:00~23:25 [再放送11月19日(水)5:30~5:55/12:25~12:50]
第2回 「真の幸福とは?」
明代末期は、それまで人々の価値観を支えていた儒教が形骸化し、何が幸福か? が揺らいだ時代だった。
「菜根譚」は、形骸化した儒教道徳に、「道教」や「仏教」の中の最良の部分を導き入れ、新しい命を吹き込む。
あくまで現実に立脚しながらも、「富貴や名声によらない幸福」「欲望をコントロールすることの大切さ」「世俗を超えた普遍的な価値に身を委ねることの重要性」などを説き、新しい「幸福論」を再構築しようとしている。
■■ 第2回
儒教・道教・仏教を融合した「菜根譚」ならではの「幸福論」を読み解く。
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11月19日(水)23:00~23:25 [再放送11月26日(水)5:30~5:55/12:25~12:50]
第3回 「人づきあいの極意」
醜い政争に揉(も)まれながら様々な人間模様を見続けたと推測される洪自誠は、人間洞察の達人でもあった。
「菜根譚」には、「人づきあいの極意」ともいうべき交際術も数多く記されている。
「家族との接し方」「友人との接し方」「組織人としての振舞い方」「人材育成法」……およそ人とかかわるあらゆる局面で、どう振舞ったらよいかを具体例とともに細かく指南している。
■■ 第3回
「菜根譚」から「人づきあいの極意」を読み解く。
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11月26日(水)23:00~23:25 [再放送12月3日(水)5:30~5:55/12:25~12:50]
第4回 「人間の器の磨き方」
晩年に達観の境地に至ったとされる洪自誠は、人格の陶冶には長い年月が掛かると繰り返し述べ、その重要性を訴える。
既存の価値観が揺らぐ現代、「どう生きれば人間的に成長できるのか」は多くの人たちの共通の課題だ。
「菜根譚」は、「自分の心を見つめること」「ゆとりをもつこと」「中庸」「高い志」などを、人間的な成長に不可欠なものとして提示する。
■■ 第4回
「菜根譚」から「人間の器の磨き方」「人間力の高め方」を読み解く。
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