マイケルの曲の中で私はビリー・ジーンが一番好きで、親しみを抱いてる。
他の曲は、素晴らしい大スターが歌ってる。
凄い!キングの名にふさわしい。
と、ちゃんと感動もするんだけど、ビリー・ジーンだけはなぜか、まだ年若いスーパーキュートなブラック・プリンスだった時代を思い出すのか、彼を凄く身近に感じる。
あの素敵な笑顔のプリンスが、キングになっちゃったな。
その後の彼の活躍を、そんな風に手の届かない場所へ行ってしまったかのように、眺めてた。
この映画の中のビリー・ジーンで彼は、歌いながらあの頃に戻ってた。
肌の黒い、プラック・プリンスに。
正直、50歳の彼がどう歌うのか心配だったけど、明らかにあの頃に彼は戻っていて、自由で、爽快で、力強かった。
けど、サングラスを外し…そしてまたかけ、外し…。
その時、垣間見えた。
まるで魔法のサングラスのように、外すと彼は50歳に戻ってしまう。
肌は白く、顔も変わり…。
けれどサングラスをかけると、彼は若かった頃に戻る…。
幾度か外してはかけ、最後に感じたのは…。
彼は現実を認識して見えた。
今彼の肉体は、50歳なのだと。
凄く、弱々しく感じた。
正直、凄く痩せていて、時々気分が悪いんじゃ無いか。
と心配するほど。
どんどん、痩せてってないか。憔悴してないか…?
そんな中、ビリー・ジーンで見せた、迫力のある歌声とパフォーマンス。
ほっとしたのもつかの間…。
やはり、弱々しい彼に、最後は戻ってしまった。
どうしても、昔行ったカイロ博物館を思い出す。
エジプト王朝の初期の頃の彫像は、荒削りだけどもの凄いパワーを感じた。
ブラック・プリンスだったマイケルにも、もの凄いパワーがあった。
そしてクレオパトラの時代のレリーフは…とても繊細で緻密。
けれど儚い。
弱々しさと衰退を感じさせ、そのレリーフが細やかに彫られて美しければ美しいほど、悲しくなるのだ。
この映画のマイケルは、とても美しかった。
それだけに、悲哀を感じた。
公開当初、彼の死ですら、商売にしてしまう人々の事が頭をよぎって、映画を見るのを躊躇った。
実際レンタルでも見たけれど、どうしても彼の死を悼む気持ちより、もうけ主義が気になって、流し見してしまった。
けれど今見て…。
改めて、ファンの為にこの映画を作ってくれたこと。
彼の最後の姿を残してくれたことに、感謝してしまう。
「SHERLOCK」でも言ってたけど、マスコミは、最初上げてビックになったらこき下ろす。
そうすれば売れるから。
マイケルがキングになった後は。
高い高い山だから、マスコミは彼を叩き続けた。
でも彼が歌い始めて。
踊り始めて。
彼の魂が輝き始めて。
誰が彼の容姿を気にするだろう?
そんな表面的な事など、どうだっていい程の輝きを放つ彼の前では
中傷や嘲笑など、遙か下界。
そんなものなど、追い付かない程高みに駆け上がってしまう、スーパー・スターなのに。
カー・ラジオで流れてきて、聞き惚れた歌声。
後に、マイケルだと知った。