アースルーリンドの騎士外伝。『幼い頃』冒険の旅 392 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

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王冠2 登場人物紹介
王冠2 イラスト入り登場人物紹介(まだ全部じゃありませんが…)
ローランデが心配げにアイリスを見つめる。
「そんな深手を負ってるのに…ディンダーデンは本気で君としようとか、思ってたのか?」

アイリスはローランデの優しい心配げな顔を見つめ、顔を下げたまま笑う。
「心配されて凄く嬉しいから、詭弁で逃げ続ける。
それに…いざとなれば、オーガスタスかギュンターの背後に逃げ込むから」

ギュンターは咄嗟に顔を上げ、怒鳴ろうとし、がアイリスの深く抉れた肩の傷をつい目にし、顔を下げた。
ローランデはそれを見たが、アイリスは肩を竦めた。
「ほらね。
ギュンターはちゃんと庇ってくれる」

ローランデが見ていると、ギュンターは凄く、不本意そうだった。そして唸った。
「…傷が、癒える迄だ!
治ったら見捨てるからな!」

アイリスは全開で、笑った。
「治ったら自分で処理するさ!勿論」

ローフィスが、俯いた。
オーガスタスも親友の、言わんとする事が解った。
「治ったらディンダーデンはお前の本来の性格を思い出し、お前はまた奴にアイリスと呼ばれず、口説かれたり決してしなくなるさ」

それは本望だ。と、アイリスはにっこり微笑った。



 全員が、頭の中に響く声に、やれやれ。と湯から上がり始める。
ディンダーデンはぐったりするアシュアークを抱え、湯から上がった。

全員が濡れた体を拭き、用意された衣服に着替えた頃、扉が空いた。
「“里”の人?」
ラフォーレンの声に、オーガスタスが応える。
「人間だろう?奴らなら空間から、沸いて出る」

その戸から顔を覗かせたのは、アイリスにとても良く似た面差しの、がアイリスよりもっとしっかりとした顔立ちの、気品と威厳溢れる美男だった。
「エルベス!!」

アイリスが駆け寄るより前に、その若き威厳溢れる大公は甥に、駆け寄って抱きしめる。
「大丈夫だったか?
話を聞いて、気が気じゃなかった!!」

オーガスタスとローフィス、そしてギュンターも見ていると、ディンダーデンとスフォルツァの眉が一気に、寄る。

叔父は顔を上げると、大切な弟のような甥の顔を見、つぶやく。
「やつれたな…。ひどい怪我なのか?
テテュスは?
“里”の者は今は君と、一緒じゃないと…」

アイリスは立派な美男の叔父を見つめると微笑む。
「治療で傷を、曝さなくちゃいけなくて…。
あの子に傷を見せたらまた…落ち込むから」

「そんなにひどい傷なのか?」
問われて、アイリスが肩布を少し、ずらす。
そこから覗いた傷口の無残さに、気品溢れる大公が、眉をしかめる。

「君がそんな傷を負うのは、余程の事だろう?
どうして…そんな傷を負った?」
アイリスは少し、俯くと、途切れがちにそれを口にした。

「テテュスが……相手していた。近衛の騎士を。
しかも…相手は准将だ。
ファントレイユを庇って。
けど………」

「テテュスが?!あの子が、危なかったのか?!
それで君は………」
「褒めてくれ。エルベス。
あの子を真っ二つに切り裂こうとした刃を、止めた傷だ」

そう言うアイリスは誇らしげに微笑んでいて、皆もそうだったが、叔父も戸惑う様に俯くと、囁く。
「勿論…それはそうだ………。
君は素晴らしい父親だ。が………」

心配げなエルベスに、アイリスは叔父の胸を軽く手で押して、止めるように囁く。
「それで、十分だ。
あの子が無事だったんだ。
それだけで痛みが、吹っ飛びそうな程嬉しかった」

エルベスは、苦く笑った。
「でも君はテテュスにその傷を見せられない。
…堂々と…曝して誇る事が、出来ない…」
「それは………」
言って、アイリスは俯く。

「テテュスに傷を、見せられないのはどうして?
君は…あの子の前でうんと…ひどい様を、見せたのか?」
叔父の言葉に、アイリスは俯く。
がその表情が厳しく、エルベスは吐息を吐く。

「解ってるだろう?アイリス。
あの子は母親を、亡くしたばかりだ…。
たった一人の拠り所の君迄…亡くす恐怖にあの子が、耐えられないだろうとは…思わないのか?

アイリス。解ってるとは思うがきちんと言葉にして言おう。
君は大切な私の弟だ。
父親を知らない君を…赤ん坊の頃からずっと面倒見て来たのはこの、私だ。
父親には成れないと姉に笑われて以来、君の兄で居ようと…ずっと大切に、して来たんだ。
だから君が逝ってしまったら私はとても…とても悲しい。
多分君が、思う以上に。
勿論、テテュスは私が引き受けて君だと思って大切に育てる。
けど二人してきっと…先に逝ってしまった君への、愚痴を言い続けるだろうな。
死んでしまった君は一言も、言い返せない。
一言も。

それを…君は考えた事があるのか?」

皆がつい、顔を上げたアイリスの返答に、聞き耳立てる。
「エルベス。私は今ここに居る」
エルベスは素っ気なく言った。
「ならずっとこの先もそうしてくれ。
君が死んでしまったら私は鬼に成って、君を滅ぼした相手に身が凍るような報復をして、“闇”に魂を売った。と陰口を叩かれ続けるだろうから」

その時ようやくアイリスが、理性をその表情から消し、袖を掴み背を向ける叔父を振り向かせ、素の表情で囁き返す。
「すまない…心配かけて。本当に…………」

エルベスは無言で、自分を見つめる甥をきつく抱きしめ、そして放した。

ギュンターがディンダーデンに振り向くと、親愛籠もる兄弟の抱擁に、顔を背けていた。





つづく。

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