登場人物紹介
イラスト入り登場人物紹介(まだ全部じゃありませんが…)「また…お前か………」
ドロレスが唸る。
「それは、こっちの台詞よ。
折角罠を仕掛けたばかりなのに…!
最初にかかったのが、お前だなんて!」
その、真っ赤に燃える灼熱の溶岩の中、女は真っ赤な炎の髪を揺らめかせ、真っ黒な顔に不気味な黄色の瞳を現れた神聖騎士に向ける。
どろどろと…溶岩がドロレスの足元へ流れ出し、周囲は燃えさかる炎で覆われ、人間が誤ってここに踏み込んだりしたら、護符を付けていない限り一瞬で、燃え尽きたろう………。
灼熱の闇の炎で焼かれる苦しみにもがきながら………。
「本当に私が初の獲物か?」
聞かれて、女は憮然。と腕組んだ。
その燃え上がる炎の髪の真っ黒な体に、炎の衣服を纏った女はつん!と顔を上げると、朱っぽい跳ねた白金の長髪を炎の中靡かせ、真っ青の瞳を向ける素晴らしい容貌の神聖騎士から顔を背け、そっぽ向く。
「サランディラ……」
女はかっ!と黄色に黒の縦筋の入った瞳を見開くと、怒鳴った。
「いくら見知りでも、敬称は必要よ!」
ドロレスは苦笑し、体を少し前へと屈め、右手を優雅に胸元へと振りささやく。
「炎の女王サランディラ。
これでいいのか?」
「結構よ!言いたい事は解るわ!
以前、たっぷり聞いたものね!
私に闇の国で大人しくしてろ。と言う気でしょう?」
「“影”も飛ばすな」
ドロレスの目前の、女王の“影”は怒鳴った。
「食事を、するなと?!」
「“闇抜き”をし、『光の一族』に戻ればいい」
「簡単に言わないで!
『光の一族』に戻った途端、体も存在も消え失せるわ!
私を一体、何歳だと思ってるの?
あんたなんか、小僧っ子ですら無い!」
「それだけ生きても、まだ死にたくないのか?」
「そうよ…!
“狩り”は最高に楽しいわ…!
人間が燃やされて苦しむ姿とその叫び…!
幾度聞いて癒される……!
その楽しみがあるのにどうして…死ねるのよ!」
ドロレスは、付き合いきれない。と言うように女王に言った。
「よっぽど心満たされる幸せとは無縁だったようだな。
俺より年上だと威張っても、中身がそれじゃな。
年上だと言いながら、俺に少しでも年上らしく教授出来る、事すら無いのに生汚く命を惜しむのか…?
それともここで決着を付けるか?
俺も哀れなお前をこれ以上見なくて済む」
「お前に哀れまれる程、情けなく無いわ!」
ドロレスは悲しげに眉を寄せた。
「…自分の姿を…見た事が無いのか?
お前は長生きだとぬかすが…それ程変形し…醜く変貌した闇の女に俺は、会った事が無い………」
女王はむっとした。
「この姿は…闇の世界じゃ皆が最高に美しいと崇め、そして私の力に恐れ、ひれ伏すのよ!」
ドロレスは、頷く。
「とびきり…醜いものな…。
幾人もの人間を苦しめ…歪め、葬り去ったに相応しい…とても、醜い姿だ…」
女王は“醜い”と連発するドロレスに、激しく眉を寄せる。
「…あんたは、嫌いよ!」
「知ってる。あんたに“闇抜き”を勧める小僧だからな」
だが女王は腕組みし、尊大に顎を上げる。
「そろそろ…あんたの方がこの炎に限界じゃないの…?
末裔で、『光の王』じゃない…。
光の力に限界が、あるんでしょう?」
ドロレスは頷く。
「だからいつも説得に失敗する。
どうする?帰るか?
それとも俺がここで、思い切り暴れていいのか?」
女王は咄嗟に組んだ腕を振り解くと、突然その体が透け始めた。
と、共に周囲の炎が暗く、陰って消えて行く。
『…あんたと戦うのは、二度とごめんよ!
年上の女に容赦もしない!』
ドロレスはくすり。と笑った。
「光の氷山に、余程懲りたようだな」
『乱暴者!常識外れ!『光の王』の方がまだもう少し、礼儀正しいわ!』
「“王”ならお前に断りも無く真っ白い光をぶつけ、強引に“闇抜き”にかかるものな!」
『…氷山をぶつけるだなんて!しもやけに成ったのよ!
あんたのお陰で私の自慢の黒い肌が、白黒斑に成ったわ!
恥をかかせて!
これだから、小僧っ子は嫌いよ!』
ドロレスは周囲の炎と共に消えて行く炎の女王の雄叫びを聞き、その後に残された空間が巨大な空洞に成っているのに、吐息を吐いた。
「よくこれだけ、広げたものだぜ………」
つづく。

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の2008/6/11から



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