登場人物紹介全員が、ベットが間を空けず、ずらりと横一列に並ぶ寝室に通され、ディンダーデンがぼやく。
「雑魚寝かよ…」
ウェラハスがすまなそうにつぶやく。
「光の結界を強くするのに、あまり広さが確保出来なかった。
だが…濃い光に包まれているから、疲労は直ぐ、癒える筈だし眠りも深い」
オーガスタスは、奴は気にするな。とウェラハスに視線を向け、アイリスが微笑を送って礼を言った。
「どこからどこ迄深いお気遣いに、感謝致します」
ギュンターはそれを聞き、そっ。とアイリスに寄った。
「俺も、礼を言わせてくれ。
ウェラハス。あんたとそれに…」
自分の為にウェラハスに礼を告げたアイリスに振り向くと、アイリスは途端、その濃紺の瞳を見開く。
「頼む…!
私に感謝しないでくれ!」
その様子があんまり必死でつい、ギュンターは金の髪を肩に滑らし、眉間を寄せる。
「どうして俺の感謝が素直に受けられない…!
やっぱり、とっくにローランデに手を出してたのか?!」
途端、シェイルと共に寝台に登るローランデに、振り向かれて怒鳴られる。
「いい加減、下世話は寄せ!ギュンター!」
ギュンターは振り向き様、怒鳴る。
「おかしいだろう?!
感謝を受けられないのは、後ろめたい思いが俺に、あるからに決まってる!!」
ウェラハスは呆然とアイリスを見たし、アイリスは俯くと、ささやいた。
「だって、折角ローランデがこちらに来て、蜜月を過ごせた筈だったのに、息子の為に台無しにして私を大層、恨んでるだろう?
私だって最愛の相手と二人きりでゆっくり至福の時を過ごしたい気持ちは理解出来る。
だから………」
ギュンターはアイリスを、拍子抜けしたように見つめた。
「どうしてお前がすまなさそうにする。
ここに来ると決めたのはローランデで、彼の気を変えられなかったのは俺の力不足だ」
「でも、それでもやっぱり私に腹を、立ててないか?」
ギュンターはアイリスを、じっと見た。
「お前、本当にアイリスか?
普段のお前なら八つ当たりは不当だと、俺が睨もうが歯牙にもかけない癖に」
ローフィスが、いい加減にしろ。とジロリとギュンターを見、言った。
「アイリスは妻を亡くしたばかりだし、愛息テテュスが不安定でボロボロなんだ!
俺だけで無く、ディングレーもローランデもシェイルも、人が変わったようなアイリスを散々、見てるし、取り乱すアイリスを目撃して、オーガスタスは疲れ切っている。
大概、その当たりの事情を良く、頭に叩き込んどけ!」
言われてギュンターは、まじまじとアイリスを見た。
「そうか…。
普段のお前じゃなく、時々別人に成るのか?
厄介だな」
アイリスは、苦く笑った。
ウェラハスにはバレていても、彼はそれを口にはしないだろう。
あの時ローランデは意識が飛んでいたし、自分はちょっと慰めたつもりで、不可抗力だと幾ら告げてもきっとギュンターは、“抱いた事実は変わらない!"と、納得しないに違いない。
アイリスはウェラハスをチラと見たが、とっくにお見通しのウェラハスは心話でアイリスに告げた。
『ギュンターはとても、カンが鋭い。
ローフィスに感謝するんだな』
アイリスは彼に、情けなげに微笑んだ。
つづく。

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