登場人物紹介だが、皆が見ているとアリシャの顔色が戻り、生気を少し、取り戻したように見えた。
彼女は頭を揺らす。
そして、その手を、取り巻く群の中に居るディングレーに差し出す。
ローフィスが見るとディングレーは一つ、吐息を吐き出し、アリシャの前に屈んで自分の首を、差し出した。
ローランデとシェイルは顔を見合わせたし、ゼイブンはその男の中の男の、仕方無しに従う姿にくすりと、笑う。
アイリスが、ディングレーを気遣い慌てて言った。
「私が抱き上げるから…!」
だが、とっくにディングレーに抱き上げられたアリシャは、ディングレーの背から腕を差し出すアイリスに、つん!と顔を背けた。
「私、お兄様は卒業したの」
アイリスはおろおろと、それでもアリシャに告げる。
「でも、ディングレーで無くてもいいだろう?」
「言葉が、通じて無いようね?
お兄様より彼がいい。って、私今、そう言ったつもりだけど」
アイリスは呆然とし、テテュスが心配そうにそっと、アイリスを見上げた。
アイリスは、尚もつぶやく。
「でも…ディングレーはそうじゃないと思うんだけど」
アイリスが自分に気遣いを見せる事に気づき、背を向けていたディングレーはアリシャを抱いたままアイリスに振り向くと、タメ息混じりに告げる。
「…仕方無いだろう?」
ギュンターが呆れてつぶやく。
「お前、病人に弱いのか?」
ローフィスはくすくす笑うとギュンターに振り向く。
「か弱い相手には、奴はお手上げなんだ」
ローランデが、俯いてぼそりとつぶやく。
「通りで、初めて見る姿だ…」
シェイルも、親友の言葉に頷く。
「近衛にか弱い者は一人も、居なかったものな」
オーガスタスがつい、くすくすと笑い続け、アリシャを抱いて戸口に消えるディングレーの背を、見送った。
つづく。

この連載を、始めから読む
携帯でこの連載を始めから読む『野獣の初な恋心』『幼い頃』
の2008/6/11から



ぽち。してね


こっちもね
天野琴音のその他の作品
アースルーリンド 
『ファントレイユとの出会い』 大人のファントレイユが近衛で大活躍してます!
『教練校での出来事』入学したてのファントレイユに貞操の危機が?
『野獣のうぶな恋心』天然テテュスに惚れ込む、遊び人のグエンの翻弄される恋心
『ゼイブンの夢。』ファントレイユの教練入学でゼイブンがパニック!
『確かなもの』ギュンターの生い立ち
『ドゥーゼンの、思い煩い』成り行きでローランデを犯したドゥーゼンは、ギュンターに睨まれ捲り・・・。
『仮初めの時間』「幼い頃」アイリスの屋敷に来る前の、ローランデとギュンターのお話。
事件勃発で15Rに成りました。完全BLです。
『卒業』ローランデの卒業時のギュンターとのお話。
近衛に進むローランデに同居を申し込むギュンター
ギュンターが突進し続けたので、15禁になってます…。
その他SF
『Memory of Haruka or the far past』彼はかつて、アトランティスに居た・・・。
『キリスト教圏では絶対書けないショート。』キリストの、もう一つの物語