アースルーリンドの騎士外伝。『幼い頃』三人の子供と騎士達編98 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

ざっ!
ギュンターが剣を振りかぶると、相手の男が青冷めた。もう二人が足元に、転がっていた。
「・・・なあ・・・まだ俺を、仕留めたいのか?」
ギュンターが嗤うと、残った二人の男は背筋に冷や水掛けられたように、ぞっ、とした。
金髪の美男が、月明かりに顔の半分を影にし、獰猛な猛獣のように、嗤ったからだった。
一人の剣を握る手が、ぶるぶると震える。
ギュンターはそれに気づき、剣を、下げた。
「死にたくないんならとっとと逃げろ。俺は手加減が、苦手だ。それとも本当に近衛の隊長がたった四人で仕留められるとでも、思ってたのか?
・・・だいたい隊長を殺って賞金貰おうなんざ、どれだけ無謀で馬鹿げてるか考えた事が、無いのか?
俺でさえ、同僚の隊長を殺れ。と命令されたら『考えさせてくれ』と言うぞ?
第一俺ならもっと楽な金儲けを考えるがな。
命が無くなったらそれも出来ないが、どうする?」
言われて、だが、男達は立ち去る様子も、剣をしまう様子も見られず、ギュンターは不審に思った。
その時門が、開く。
きぎい・・・と大きな軋む音と共に馬の駒音がし、ローフィスとシェイルが馬上で姿を見せ、一瞬月明かりに浮かぶギュンターとその足元に転がる死体。そして対決するごろつき二人に視線を送るが、大丈夫そうだと確認すると二騎はそのまま、彼らの脇を猛スピードで飛び去って行った。
「・・・愛想無しだな」
ギュンターはぼやくと、二人の男に怒鳴った。
「これ以上付き合えないぞ!」
そして、斬りかかる。

シェイルが、叫んだ。
「ローフィス!」
ローフィスはシェイルの視線の先を、見る。
煌々と照る月明かりの下、公爵領を取り囲む小高い丘のような石塀の一部の破損場所から、かなりの数の男達が中へ続々と侵入する様子が見えた。
そして気づいた男の一人が、溝を挟んだ公道に居る二人に向かって弓を、構える。
狙い飛ぶ、大きな弧を描く矢をローフィスは咄嗟に剣を抜き様凪払い、シェイルに怒鳴った。
「屋敷に、戻って知らせろ!」
シェイルは頷くと、馬の首を元来た方向に向け、一気に駆け出して行った。

「ぎゃっ!」
残った一人の背を斬り、ギュンターは眉を、寄せた。
「剣を向けといて、土壇場でどうして背を向ける?
これじゃ俺は卑怯者扱いされるじゃないか!」
シェイルが馬で駆け込み怒鳴った。
「・・・死んだ奴に文句付けてる場合か?乗れ!
奴ら、屋敷に入ってる!」
シェイルはしかし速度を全く落とさず、ギュンターは横に飛び込む馬の鞍を走り寄って掴むと、地を蹴って飛び乗った。
腰にギュンターの腕が回るのを見て、シェイルはぼやいた。
「・・・落ちないんだな・・・」
その言葉を耳に、ギュンターが瞬間沸騰して怒鳴った。
「乗れと言って、落とす気だったのか?!」
シェイルは、そこまで陰険じゃないぞ。と、怒鳴り返す。
「乗り損ねて、落ちると思っただけだ!」
ギュンターが、腹の底から、怒鳴った。
「同じ事だ!俺が無様に落ちるのを見て、笑う気だったろう?!」
が、シェイルは知らんぷりを決め込み、振り向かない。
「・・・大概図星だと、認めろ!」
後ろから迫るギュンターに、シェイルは思い切り突っぱねた。
「笑い損ねて機嫌が悪いんだ!」
ギュンターは思い切りぶすったれた。
「そうだ、ろうよ!」

少し走ると、シェイルは庭の灌木の間から黒い人影が、屋敷に続々と向かう様を目に、拍車をかけた。
後ろにでかい男を乗せて速度が上がらぬ上、このだだっ広い公爵領の庭から屋敷迄は、かなりの距離があったので。
「ミュス・・・。重いだろうが、頑張ってくれ・・・!」
そのシェイルのつぶやきに、ギュンターは馬を、見た。シェイルの馬は彼に似合い、小柄で機敏だった。ギュンターは、今更体重を落とす訳にもいかないと、シェイルの腰を抱いたまま、腰を浮かして馬を、労った。
つづく。