アースルーリンドの騎士外伝。テテュス編。『幼い頃』 164 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

ギュンターは振り向く。弓使いは居ず、ごつい男が五人、馬に跨り付いて来る。
「・・・ゼイブンがちゃんと、言った事を覚えてるといいが・・・」
ギュンターは月明かりの中身を屈め、疾風のように駆け出した。
男達が速度を上げるのが解った。が、ギュンターは鞍から腰を浮かせて馬への負担を減らし、膝で体を支えて体を浮かせたまま、鞭を軽く入れると、更に頭を、馬の首の後ろに隠れる程低く下げ、速度を、上げた。
その一本道を駆けて行くと直ぐ、アイリスの公爵領の巨大な木門が目に、飛び込む。
立派な、鉄の錨の打たれた木門は、閉まってる。
ギュンターは門の前で馬から飛び降りると、門を思い切り蹴って門番を呼んだ。
三度蹴ると門の向こうで、慌てて駆け寄る人の気配にギュンターは怒鳴る。
「開けなくていい!
直ぐそこの酒場で、ゼイブンが戦ってるから援軍を寄越せと、アイリスに告げろ!
屋敷まで、絶対馬で行け!一刻を争うからな!」
門の向こうで、声がした。
「旦那様は・・・?門を開けなくてもよろしいんで?!」
「開けるな!今から戦闘だ!」
「は・・・はい!」
ギュンターは再び馬に乗ろうとしたが、月を背に、四人の男が馬の足を止め、馬上からこちらを伺っているのを目にした。
ギュンターはそっ、と馬の尻を叩くと、自分の馬を門の脇へと逃がした。馬は門を伝って走り、やがて門を囲む茂みの中へと姿を消して行った。
男達は、馬を降りながら、つぶやく。
「馬を逃がすなんざ、さすがに近衛の、隊長だな。
逃げ出す気は無いか」
酒場の馬場で取り巻いてた、ロクに剣を振った事の無いへなちょこ共とは違い、どうやら剣を扱い慣れたその荒くれ者達に、だがギュンターは眉を寄せて言った。
「本当に、近衛の隊長を仕留めると金が貰えるのか?」
四人の男が馬を降り様、剣をぎらりと抜き、つぶやく。
「本当に、貰える」
だがギュンターは五人居た男の内一人が消えているのに、気づいた。
「・・・一人は逃げ出したか?」
男達は、笑った。
嫌な予感がした。が、今は門を背に、剣を抜くしか手は、無かった。
つづく。