だがそれぞれが会話を始め、ゼイブンがファントレイユの前に向いた時、ファントレイユはそっ、とゼイブンの左手を、取った。
「・・・うんと、訓練した?」
ゼイブンは小さな息子に頷いた。
「暇が、あればな」
「ローランデが、いっぱい訓練しないとあんな風に成れないって」
「俺は殺された奴を、見てるからな。
あんな様に成りたくなかったら、訓練を積むしか無い。だがお前は、見て無いだろう?」
ゼイブンのブルー・グレーの瞳が、伺うようで、ファントレイユは訊ねた。
「やっぱり、騎士にしたく無い?」
「アイリスも、同様だろう?
餓鬼を自分より早く亡くしたいと思う親は、いない。
ファントレイユ。お前は解って無いが、俺は不器用で・・・。だがお前は、可愛い」
ファントレイユがじっ、とゼイブンを、見た。
「ゼイブンが僕の事、ちゃんと好きだって解ってる」
ゼイブンは、頷いた。
「いい女の見分け方なら、幾らでも教えてやる」
レイファスはテテュスと話してたけどつい、口を挟んだ。
「・・・でも、捕まえたのは、セフィリアだろ?」
ローフィスもアイリスも、苦笑する。
「セフィリアはいい女だし第一・・・惚れちまったら、関係無い。ギュンターを見ろ。
在学中、マジ惚れだと解ったから、とんでもないのに惚れたもんだと感心した」
「いざ、自分がそうなったら?」
アイリスに聞かれ、ゼイブンは俯いた。
「こっちが惚れて、相手が応えてくれたら、天国だ。
俺は子供も、授かったしな」
ギュンターが、睨んだ。
「俺よりうんと、マシか?」
ゼイブンは肩をすくめた。
「茨の道でもめげないお前に、心底脱帽してる。
俺にはそんな根性は、無い」
ギュンターは吐息を吐いた。
「お前に根性があると誉められてもな」
アイリスが、相づちを、打った。
「嬉しく、無いだろう?」
ギュンターが頷き、ディングレーがつぶやく。
「だがアイリスよりはマシだ。
アイリスが今一番気にしてるのはテテュスで、テテュスと来たら天然で、アイリスを袖にしまくってる。
あんなにみっとも無く誰かの関心を必死で引こうとするアイリスを初めて見たし、周囲も構わず余裕を無くす様もだ」
アイリスは吐息を吐いた。
「どれだけみっとも無くても、テテュスが元気で私より長生きしてくれたら、それでいい」
テテュスは途端にアイリスの横に掛け寄り、彼の衣服を掴むと包むように受け容れる、アイリスの両腕にくるまれた。テテュスはアイリスの胸に抱かれて、叫んだ。
「私は置いていったりしないから!
ちゃんと、アイリスに負けない剣豪に成って、敵に勝って生き残る!」
アイリスは微笑むと、そっと、彼を見つめた。
「約束だ」
「第一、そんな事ローランデが許さない。
あの厳しさを、見てるだろう?」
シェイルが言い、皆が、笑った。
つづく。