「・・・どうして私の話に、成ってる?」
その声に、全員が座ってる椅子から、飛び上がりそうに驚いた。見るとローランデは剣を下げてテーブルの前に、居た。
「・・・肩慣らしは終わった。
ゼイブン。剣を持って来てくれ」
名指しで言われてテーブルの皆の視線を浴び、彼は息子、ファントレイユのあどけない瞳がじっと自分を伺う姿を目に、凄腕の剣士を見ないでつぶやいた。
「・・・俺に息子の前で恥をかけって?」
だがローランデは素っ気なかった。
「恥をかくかどうかは、君次第だ」
ゼイブンはくるりと背を向けるローランデの取り澄ました端正な横顔をチラと見、オーガスタス、そしてギュンター、ディングレーを順に、見た。
「・・・お前の番だ。俺もやられた」
ディングレーがささやく。
ローフィスはさっさと椅子を立て。と小ずく。
ゼイブンは仕方無しに立ち上がると、テテュスの横に居るアイリスに怒鳴った。
「・・・何とか、しろ!」
アイリスは肩をすくめて応える様子が無く、ゼイブンは俯いて、首を横に振った。
レイファスの横に居たシェイルが、腕組んだ。
「剣持って突っ立ってろ!ローランデが勝手に、捌いてくれる」
ゼイブンは彼を睨んで歯を、剥いた。怒りながら剣を持つローランデの前に立ち、シェイルから剣を受け取ると、その刃先を見て怒鳴った。
「・・・潰してないぞ!真剣だ!」
シェイルは頷いた。
「だからギュンターも怪我をした」
ゼイブンは剣を持ったまま、固まった。
「・・・冗談だろう?」
顔を上げて向かいのローランデの顔を伺うが、その文句無く端正な貴公子は、真顔で青い瞳で真っ直ぐ、見つめてくる。
アイリスが、ぼそりとつぶやいた。
「・・・せいぜいローランデの剣でなぶられて怪我でもし、女の事は暫く忘れて息子の事でも、考えてやるんだな」
かっ!と怒った感じが、したがゼイブンの表情はまるで変わらなかった。
動作も。だがそのブルー・グレーの瞳が冷たく、アイリスを見据え続ける。
「君の相手はこっちだ」
ローランデが声を掛ける。が、ゼイブンの視線はアイリスから離れない。アイリスはゼイブンの、真っ向から向ける眼差しを受け、微笑を洩らすとローランデにつぶやいた。
「・・・この通り、侮辱されると本気に成る」
テーブルの男達は一斉にローフィスを見たが、彼はそうだと、頷いた。
つづく。