アースルーリンド外伝。テテュス編。『幼い頃』 42 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

11 明るい、世界。

 朝、テテュスはもう笑わなかった。表情無く、彼の方が人形みたいで、ファントレイユはそれを目にする度に瞳を潤ませた。
アイリスは彼を伺い、彼の側に寄り添い続け、だが朝食後に皆に頷き、テテュスを促した。

 領地の外の森で、テテュスの姿を見つけて彼の仲間が駆け寄って、来た。
「テテュス!」
ザックが呼ぶ。デングとデニーと、ヨハンセは笑顔で駆け寄り、サルダンは腕組みして笑い、でもその後ろに続く一行に、組んだ腕を、外した。
ロッテンが、アイリスに顔を上げ、後ろの二人の立派な騎士に、「わぁ・・・!」と感嘆の、声を、上げた。
サルダンは可憐なレイファスに見つめられ、つい頬を、染めて俯いた。
「親戚が来てるから遊べないって?もういいの?」
デニーに腕を引かれて聞かれ、テテュスは彼を、見つめた。
「・・・ええと・・・あの・・・・・・・・・」
ファントレイユとレイファスに振り向くと、三人は目を丸く、した。
「女の子だ!二人も!」
デングが叫び、途端にファントレイユが眉をしかめて怒鳴った。
「男の子!」
ローフィスとディングレーは、元気の無かったファントレイユが一発で元気を取り戻すのを見て、ファントレイユをどう扱えばいいのか解って、肩をすくめた。
だがデニーが叫んだ。
「嘘だい!そんな男の子なんて、居ないよ!
男の子ってどういう風か、解って無いんだろ!」
チビの彼にそう言われて、ファントレイユはもの凄く、むっとした。
「・・・来いよ!見せてやる!」
レイファスはそんなチビ相手にムキになるファントレイユに、呆れた。
二人は皆に背を向け、ファントレイユはズボンの腰を緩めてデニーを上から、覗かせた。
「ちゃんと、付いてる!」
デニーのその声に、ファントレイユはそうだろう。と言う顔をし、皆がくすくす、笑い出した。
テテュスはほうっ、と、暖かい空気に包まれた思いが、した。
ザックが言った。
「テテュス!約束していたチーズだ!アメンネ叔母さんの痛めた腕がやっと直って、作ってくれた!」
ディングレーが思わずローフィスを、見た。
「果実酒をちゃんと持ってきたか?」
ローフィスは肩をすくめた。
「お前の持ってるバスケットから覗いてる瓶は、何だと思ったんだ?」
ディングレーは腕にかけた籠を、見つめた。
アイリスが微笑んだ。
「こっちは焼きたてのパンとハムがある」
レイファスが続けた。
「焼きたての、ハニービスキーとりんごのパイも!」
皆がわっ!と叫んだ。
ディングレーはまん中に広げた食べ物があるのに、チビ達が落ち着きなくしょっちゅう周囲を走り回り、眉を、寄せた。
さっき、デングとヨハンセが走ったと思うと、今度はロッテンとデニーだ。
「お前ら、食ってる間くらいは静かにできんのか!」
怖いディングレーに怒鳴られ、デニーもロッテンもデングもヨハンセも動きを止めて固まり、顔を引きつらせた。それを見てテテュスはようやく、くすくす笑って言った。
「大丈夫。ディングレーは怒鳴るけど、凄く、優しいから」
固まっていた彼らはまた、カン高い声を上げてはしゃいで走り回り、ディングレーは思わずテテュスを睨んでテテュスをより一層笑顔にし、隣で寄り添うアイリスを、うんとほっと、させた。
つづく。