アースルーリンドの騎士追加特記その108 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

ソルジェニーがギデオンを見守ると、彼はファントレイユを見据えて、つぶやいた。
「・・・どうして私と話すと、感激が台無しに、なるのか聞こうか?」
ファントレイユは、困ったように言った。
「・・・本心を言うと君は、きっと怒る。
それですめばいいけど、殴られたく、無いんだ」
「・・・私が、殴りたくなるような事が、言いたいんだな?」
ようやく、ファントレイユは言葉が通じたと、安堵した表情で頷いた。
「その通りだ。
私はこの顔が、とても気に入っているから、変えたくない」
ソルジェニーが、ギデオンをじっと見て、ささやいた。
「・・・ファントレイユを、殴ったりしないよね?」
ギデオンはソルジェニーを見つめ、そしてファントレイユに、笑い掛けた。
「勿論、殴らないから、聞こうか?」
ファントレイユは、本当に?という顔を、見せた。
そして、ギデオンの両拳を、その手で握り込む。
ギデオンが、両手首を握るファントレイユの手を見て、訊ねた。
「・・・何だ?これは」
「私の、安全保障だ」
ギデオンの眉が更に寄ったが、顎をしゃくって、促した。
ファントレイユはそれでもためらいながら、つぶやいた。
「・・・きっと、この拳は上がりかけると思うんだが・・・」
「いいから、さっさと言え!」
「・・・ほら、君と来たら、それは素晴らしく綺麗だろう?
今の姿は、凄く似合っていて最高に、美しいし。
性格さえ思い出さなければ、一生に一度、見られるかどうかの、晴れ姿だし。
だから、綺麗な君の姿を・・・・・・・・・」
ファントレイユの握る、ギデオンの拳が、震え出し、ファントレイユはつい、心配顔で、訊ねた。
「時間差で、この手を放した頃に殴ったり、しないよな?」
ファントレイユの、心から恐れる様子に、ソルジェニーも言った。
「ギデオン。私も彼の、顔が変わったりするのは、嫌だ」
ギデオンは拳の震えを止めると途端に、にっこりと、微笑んだ。そしてファントレイユに向かって、低い声で言った。
「・・・つまり、姿だけは綺麗だから、本来の私を忘れて、綺麗な外観だけを心に止め置きたいと、そう言いたい訳だな・・・?!」
ファントレイユは心から頷くと、言った。
「君の性格迄変えてくれだなんて、贅沢は言わない。
せめて、今日一日、君の姿を見ている間だけでも、君の性格を、忘れていたいだけなんだ」
その場に居る一同が、命知らずのファントレイユの言葉に、顔を下げきった。
「つまり君は、私の姿だけを、気に入っていると、そういう訳だな?」
ファントレイユは途端に異論を唱えた。
「誰もそうは、言ってやしないだろう?
君のその容姿にその性格は、酒の聞いたパンチみたいなものだ。とても強烈で個性的だし、味があるとは、思ってるさ。
第一、今日一日だけの事だ。
どうせ、今日を過ぎればいくら私が、君の外観だけを思いだそうとしたって、君は嫌でも、その性格を思い出させてくれるじゃないか・・・・・・・・・」
ギデオンは、それは不満そうだったが、言った。
「口を聞かない事が、感謝になるなんて聞いた事が無いが、ご要望なら仕方無いな・・・!」
このギデオンの返答に、全員が思わず、驚愕の表情を浮かべてギデオンを振り返った。
ファントレイユは心から嬉しそうに
「・・・ありがとう・・・!
そして、就任、おめでとう!」
そう言って、彼の前を去った。
だがギデオンは
「どうして、ありがとうを言う筈が、言われる羽目になるんだ?!」
と、心の底から、憤慨してみせた。
つづく。