アースルーリンドの騎士追加特記その103 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

「・・・さて。右将軍の地位を明けたままにしておく訳にはいかない」
その言葉でギデオンの顔が一瞬、揺れた。
叔父が居る以上、自分がその地位に着く事等無いと、とっくに諦めていた地位だった。
代々、祖父も父も、右将軍だった。
彼が産まれた時、父が、跡継ぎが出来たと、どれ程喜んだ事か・・・。
そして幼い彼に、右将軍の地位の、重責と誉れを、いつだって延々と、語り続けてきた。
だが、その父が命を落とし叔父が居座り、今のギデオンに出来たのは、その誉れ高い彼らの顔に泥を塗る、叔父の汚いやり方を、体を張って止める事だけだった。
「・・・ギデオン。君の、役職だ」
ギデオンは席を立つと、補佐官長の前に、立った。
彼に、虎の紋章の入った、金の肩当てを、手渡す。
「・・・就任式の日取りはこれから決めるが、これをつけて出席して欲しい」
アイリスが、先立って拍手を送り、次々に拍手が、沸いて起こる。
ギデオンの父の親友だった男が、感極まってギデオンを、抱擁すると次々に、勇猛だった彼の父親の面影を忍び、彼に心を寄せる者達が、彼に祝福の、抱擁を、した。
ギデオンは少し涙目で、俯き加減だったが、どの相手にも気丈に微笑み、抱擁と握手を、返していた。
彼は、ひとしきり彼らの抱擁を受けると、ソルジェニーに微笑みかけ、王子の瞳が涙で潤むのを見て、優しく、頷いてみせた。
だがソルジェニーは今にも涙が滴り落ちて止まらなくなりそうで、両手で口を覆って彼を、見つめ返した。
ギデオンの瞳にも涙が光ったように見えたが、彼は微笑んだまま、視線をゆっくり、ソルジェニーの後ろにひっそりとたたずむ、マントレンとヤンフェス、フェリシテ、そして、横に座るファントレイユに送る。
マントレンの瞳は濡れていたし、ヤンフェスはそれは嬉しそうに、輝くように微笑み、フェリシテは心から安堵した表情で、彼を見つめ返した。
ファントレイユは、視線を受け止め、静かに頷いて、見せた。
ギデオンはすっと顔を上げ、どれ程感謝しても足りない、という表情を一瞬浮かべ、彼らに向かってゆっくり、深々と膝を折り、腕を胸に当て、深く頭を垂れて、一礼した。
ギデオンの挙動に、周囲の注目が一斉に集まる。
その場の全員が、深い礼を取るギデオンに目を止め、続いて、その礼を捧げる相手、マントレン、ヤンフェス、フェリシテ、ファントレイユを、視界に捕らえる。
彼らが注目と視線を浴び始めて、慌てる。
ギュンターが、彼らがどうしてここに居るのか問いただされるとやっかいなので、彼らに顎をしゃくって促すと、マントレンとヤンフェスは直ぐに察し、フェリシテも続いてその場から、姿を、消した。
ソルジェニーが、隣のファントレイユに拍手を送り始めたが、ファントレイユは慌てた様子で椅子を蹴立てると、ギデオンの元へと駆けつけ、彼に屈んでその腕を掴み、頭を、上げさせた。
「・・・頼むから・・・・・・・・・!
後で、幾らでも感謝を受ける!
膝を、上げてくれ・・・・・・・・・!」
だがギデオンは自制心を忘れて慌てるファントレイユを見つめ、静かに、言った。
「・・・本当に、感謝を受けるんだな?」
「・・・受けるさ!勿論!」
「君の言うことはあてにならない!」
「・・・約束する!」
ギデオンはようやく笑うと、折った膝を伸ばして立ち上がり、ファントレイユを安堵させた。
つづく。