アースルーリンドの騎士追加特記その96 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

アドルフェスが、ほっ、とため息を、吐いた。
レンフィールも顔を下げたままだった。
シャッセルがつい、つぶやいた。
「ローゼの場合は仕方無いとしても・・・最近の君は、実力行使の相手には殺気で応えるのか?」
ギデオンが頷いた。
「・・・私だったら、顎を割る程度で済むぞ」
ファントレイユの眉が、思い切り寄った。
「・・・普段温厚な私だって、キレるさ!相手を気遣って、上品に私がどういう人間かをお教えしようとしたのに、鳩尾なんかに喰らわされちゃ!
・・・やり方があまりに下品で汚い!
第一、レイファスに同意する訳でも無いが、どヘタな口づけしか出来ない男が、いかにもテクがあるような顔をするなんて、最悪に図々しいじゃないか!」
シャッセルが眉を寄せたがつぶやいた。
「・・・余所から転属で来て、君の事を知らなくて、君に目を付けるような男なら、警告するようにしよう」
アドルフェスも黙して頷き、レンフィールも下を向いたまま、頷いた。
「・・・確かに、警告は必要だ。
どうせ君の事だ。
誰にも気づかれないよう殺して、死体の処理迄考えてあるんだろう?」
レンフィールのつぶやきに、ファントレイユは思い切り眉を寄せた。
「・・・人聞きの悪い。
言ったろう?私はギデオンと違ってそれは温厚なんだ。滅多に切れたりしない。だがその私がキレる程、ローゼは礼儀知らずだったんだ!
・・・これだけあいつの事が嫌いだと言うのに、ギデオンに暗殺は企むは、レイファスと付き合ったりするわで最高調に嫌われきっているのに、尋問に訪れた私に、あの大馬鹿が何て言ったか、君達も聞いたろう?
『犯してやる』だ。
どこ迄人を舐めたら気が済むんだと腹綿が煮えくり返るし、思い知らせてやろうという気になるだろう?
・・・なのにあの根性無しと来たら、さっさとぺらぺらしゃべっちまって情けないったら!」
シャッセルがつい、聞いた。
「・・・でも君は尋問したんだから、相手をしゃべらせたら職務を果たした事になると思うが」
ファントレイユがつい、そうつぶやく彼を振り向いた。
「・・・シャッセル。君には誰もが一目置いて君を尊重するから、相手のぞんざいな態度に腹を立てて、殺してやりたいと思うような事は起き無いんだろう?」
シャッセルは、思い浮かべて、確かに、と微かに頷いた。
「・・・私が短気なら今まで何人殺していたんだという位居る。
でもとても温厚だから、殺してやりたい程腹を立てた相手は、あいつを入れてもたったの二人だ。
・・・少ないもんだろう?」
その場に居た全員が、数は少なくとも、一度怒った時のその、容赦無しの徹底しきったやり方に、全然同意出来ずに、ため息をつきまくったが、ギデオンが代表して言った。
「・・・ともかく、君の外見に騙されるなとは警告して置こう。君を本気で怒らせると・・・・・・それこそ、権威も名誉も自尊心もズタボロにされて・・・それはひどい事になるからな」
ファントレイユは異論を唱えようとしたが、他二人同様、シャッセル迄もが
「・・・・・・ヘタをすれば、自信を全て無くして、廃人同様だ・・・・・・・・・」
と結果を憂いた。
見栄張りのレンフィールも、ついぼそりと言った。
「人前で平気であれ程有無を言わせず罵倒されたりしたら、社会的地位も他人からの評価も一気に下降して、抹殺されたも同然だしな・・・・・・」
アドルフェスは口を開きかけて閉じ、そして結局、言った。
「・・・・・・確かにあいつのやり用は下劣だが・・・・・・・・・あれは・・・・・・。つまり、その・・・・・・」
ファントレイユは顔を上げて即座に言った。
「・・・テクなし?下手くそ?」
アドルフェスは耳に入れたくないように顔をしかめた。
「・・・・・・そういうのは、個人の感覚なんじゃないのか?
つまりお前はヘタだと思っても、別の奴に言わせれば、それ程ひどく、ないとか・・・・・・」
ファントレイユはため息を、ついた。
「・・・そう言って、ローゼを慰めるつもりか?
残念ながら、あんなんでいいと思える奴は、余程経験が無いか、お世辞しか言わない奴だと思うぞ。
その場ではいい顔をしておいて、後で絶対、口をハンケチでそれは丁寧に、幾度も拭っているだろう」
アドルフェスが、自分の事のように、肩を、落とした。
「・・・ともかく、君たちは大貴族でいつも媚びへつらわれているから、まっとうな庶民の感覚が、解らないんだ。
身分だけで、人の心からの尊敬と正当な評価が得られると思うのは、大間違いだ」
三人が、一気に沈み込み、ギデオンが慌ててファントレイユの、肩を抱いて、促した。
「・・・ともかく、アイリスに顔を立てられる。ローゼを吐かせたんだから、君の手腕と頭の回転は、大したものだ・・・」
ファントレイユは自分の本心とは違う結末に、それは不満そうだったが、三人は遠ざかる二人の靴音に、それは、ほっと胸を撫で下ろした。

つづく。