アースルーリンドの騎士追加特記94 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

彼らが、やれやれと首を振り、もう聞くに耐えないという様子で、室内を出ようとした時、ローゼがギデオンの背に、必死で命乞いするように叫んだ。
「・・・ギデオン。確実に公の場で証言するから、身の安全を保証してくれ・・・!」
決死の哀願で、まるで命綱にすがるような悲愴な声だった。
ギデオンは恋に悲惨に破れ、ファントレイユの言葉で思い切り切り刻まれてずたぼろで、更に命迄もファントレイユに握り潰されかけている、それは哀れなその男に、一つ、頷いた。
ギデオンの保証は誰よりも信頼出来たから、ローゼは心から、安堵した。
が、ファントレイユは大いに不満そうだった。
腕組むと、ギデオンの真正面に、立ち言った。
「ギデオン。君は甘すぎる。
君の命を狙ったんだぞ?
そんなに優しくて、どうする?」
“優しい"と言う言葉に、皆の足が、途端にその場に、凍り付いた。
ギデオンは心の中で、これは優しいんじゃなく、哀れな相手に対する、最低の情けをかけただけだ。と反論したかったが、ファントレイユの反撃を想像した途端身が震って、止めた。
それで、出来るだけ差し障りの無い言い様を、心がけた。
ファントレイユの、言葉の暴力が自分に矛先を、向けないような。
「・・・ファントレイユ。君に言われた事は彼にとっては、全身を切り刻まれたも同然だ。
体の傷には薬が塗れるが、心の傷薬は、無い」
ファントレイユの眉が、珍しいギデオンの意見に、思い切り寄った。
「・・・・・・・・・そんなに、柔な神経はしていないだろう?
私に、ちょっと言われた位で・・・!」
ギデオンはため息混じりに、心から言った。
「・・・ファントレイユ。君のちょっとは、他人には、ちょっとなんて程度では、とても済まないものなんだ」
ファントレイユは暫く、黙っていたが、口を開いた。
「君達は彼の口を割らそうとして出来なかったんだろう?
・・・吐かそうと思っていない私が話して、どうしてあの男はさっさと口を割る?
・・・ふざけているとしか、思えないだろう?
あまつさえ、最初に人に向けて言った言葉が、『犯してやる』だ。
しかも、平気で人の命を奪う。
そんな男にまともな神経が通っていると、君は本気で考えているのか?」
ギデオンが、ファントレイユを見つめた。
「・・・そりゃ、ローゼがさっさと口を割ったのは、彼に神経が列記としてあって、これ以上君を敵に、回す根性が、無かったからだろう?」
「・・・君とレンフィールは敵に回せてか?
・・・・・・それはどう考えたって、おかしいだろう?」
だがギデオンは、どうあっても納得いかない様子のファントレイユに、辛抱強く語りかけた。
いつも短気なギデオンのその態度に、レンフィールもシャッセルもが心から感嘆したが、アドルフェスは、ギデオン迄もがファントレイユを、本心ではそれは、怖れているなと感じた。
「・・・ファントレイユ。私は全然おかしいと思わない。
むしろ良く、耐えた方だと、感心したものだ」
だがファントレイユは、ギデオンのこの返答に、心から驚いてつぶやいた。
「・・・・・・君が?本当に?」
ギデオンが途端に、憤慨する。
「私を一体何だと思ってるんだ?
ちゃんと神経は普通に通っているんだぞ!
誇りだって、一応ちゃんとある・・・!
第一、尋問で『あっちの方は全然大した事無い』
とか『下手くそ』とか罵倒されたりしたら普通そこで、思い切りヘコまないか?
・・・しかもあんな男が真剣に恋心を抱いた相手に、『期待外れで失望した』という理由で振られたりしたら、男としてもう立つ瀬はどこにも、無いじゃないか・・・!」
ファントレイユはそう言うギデオンを見つめたが、思い切り眉を、寄せた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そういうものか?」
「・・・そういうものだと、私は今まで思ってきたし、事実それでローゼは降参したじゃないか!」
ファントレイユは思わず、それは項垂れるローゼの姿を、見た。
「・・・まあ、確かに」
後ろでアドルフェスが、レンフィールに小声で聞いた。
「・・・ローゼと渡り合った時、ファントレイユは我が目を疑う程の凄腕だったよな・・・?
彼は自分の腕は、全然大した事が無いように、言うが。
俺が見た限り、かなりの腕に、見えたんだが・・・」
アドルフェスの、それは混乱する様子にレンフィールが同情するようにつぶやいた。
「・・・安心しろ。アドルフェス。
俺にもちゃんと、大した使い手に、見えたから」
だよな。とアドルフェスは頷いて、つぶやいた。
「・・・それにあれだけ凄まじい罵倒を浴びせおいて、『ちょっと』だとか、ほざいてただろう?あいつ。
ファントレイユの物の価値観は完全に、いかれてる。
あいつに、正しい価値観を教えてやる奴は、誰も居ないのか・・・?」
レンフィールが思い切り、本心から頷いた。
「・・・それについては、全くの、同感だ」
シャッセルが途端に、それは無理だろうと、深く暗いため息を付き、振り向いたアドルフェスとレンフィールの、救いを無くした。