アースルーリンドの騎士追加特記その61 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

ギデオンがローゼとその配下に、取り囲まれるように出立したその様子を見守り、暫くその場から、アドルフェスもシャッセルも、レンフィールも足が動かず立ちすくんでいた。
かなりの時間、三人が三人共、口もきかずに所在なく、その場につっ立っていた。
が、その多数の馬が繋がれている場所に姿を現すファントレイユを、レンフィールが目にした。
彼の、自分の馬の手綱を解き、さっと馬に跨って、見慣れたグレーがかったたっぷりの栗毛を散らして駆け去る姿を目にし、レンフィールは手近にあったシャッセルの腕を、思わず掴んだ。
「・・・どうした?」
シャッセルにそう言われ、レンフィールが馬が繋がれている場所を指差して、叫んだ。
「・・・ファントレイユだ・・・!
確かに、あいつだった・・・・・・!
馬に跨って・・・・・・・・・!」
アドルフェスの、顔が曇った。
「・・・あいつは王子の警護だ。抜け出す訳が、無いだろう?!」
レンフィールが幻覚でも見たと言いたげな、気の毒げな声音でそう言う。
だが、その後ヤンフェスとマントレンが、人目を忍んで王子のテントの方へとこっそり足を運ぶのを見て三人は、目を見交わしてその後を、付けた。

テントがまた開いた時、相変わらず親しげな微笑を浮かべたヤンフェスが顔を覗かせ、ファントレイユが『彼に任せて置け』と言った小柄なマントレンの青白い顔が、彼に頷いて、ソルジェニーがどれ程安堵したか知れない。
ヤンフェスとマントレンは王子に心配無い、と告げるような顔をして見せた。
マントレンはソルジェニーの隣迄来たが、ヤンフェスはファントレイユが、もう発ったのを確認すると直ぐに入り口へと取って返し、乱入しようとするレンフィールと、入り口ではち合わせた。
「・・・レンフィール」
マントレンが王子の隣でささやいたが、レンフィールは中にずけずけと入って見回し、ファントレイユの姿が無いのを確認する。
後ろから、アドルフェスとシャッセルの姿が見え、彼らもファントレイユの姿がその場に無いのに、呆然とした。
アドルフェスが、唸った。
「何を考えてるんだ!あの男は・・・!
俺達ですら除隊なのに、護衛なんて放り出したら、それこそ投獄だぞ!」
その不用意な言葉に顔を青冷めさせる王子を見つめ、マントレンは力無く肩をすくめて見せた。
ヤンフェスは彼らに構わず、こっそりとその場を抜けようとしたが、シャッセルにその腕を掴まれた。
「・・・ファントレイユの、加勢に行く気か?」
ヤンフェスは、そう言うシャッセルに、軽く肩を、すくめて見せた。
レンフィールとアドルフェスが、二人を振り返る。
シャッセルはヤンフェスの身を気遣うように告げた。
「・・・お前は弓使いだから、フェリシテが同行しないと背後が危ないだろう・・・?」
ヤンフェスが、長身で素晴らしい容姿の白碧の騎士を、見上げて告げた。
「・・・フェリシテの代わりに君が王子の護衛に残ってくれたら、私だってフェリシテに背中を護られて、安心して弓が、使えるんだがな・・・・・・・・・」
シャッセルが、ヤンフェスの腕を放さぬまま素早くつぶやいた。
「君の身は、では、私が護る」
そう言い、二人は目を、見交わすと同時にテントを出て行こうとしてアドルフェスに怒鳴られた。
「・・・どこへ行く!」
シャッセルが振り向いて彼に叫んだ。
「・・・投獄覚悟の奴がとっくに出かけたと言うのに、たかだか除隊でここに残れるか?」
シャッセルがさっさと背を向けてヤンフェスに続くと、それもそうだな、とレンフィールがすっとその身を進めた。
アドルフェスが、二人に何か言おうとし、言うより動いた方が、早いと気づき、後を追った。
「・・・抜け駆けするなよ・・・!」
残ったマントレンは、王子がその次々と訪れた来訪者がさっさと出ていく様子に目を丸くしている姿を見、フェリシテに肩をすくめて見せた。
そしてぼやいた。
「・・・どいつもこいつも・・・王子に礼を取らない、礼儀知らすばっかりだ・・・!」
ソルジェニーはだが、フェリシテを見た。
フェリシテはそれに気づき、彼に微笑んだ。
「・・・二人が無事に帰る確率が、ぐんと上がったようです」
フェリシテのその言葉に、ソルジェニーは思わず、それは嬉しそうな笑みを、その顔に浮かべた。

         つづく。