その日、ソルジェニーはずっとファントレイユを待ったが、彼はなかなか姿を、現さなかった。
軍務で、出頭が遅くなるとは聞いていたが。
午後の日が暮れ始めても彼の姿が無く、ソルジェニーはぽつんと室内で、時間を持て余した。
大抵午前中には、色々な行儀見習いだの歴史だのの講義は終わっていたし、昼食後は夕食まで、彼は放って置かれるのが常だった。
以前は一人が気にならなかったが、ファントレイユと出会って以来、あんまりたくさんの人との出会いで、一人で居る事がどれ程孤独な事か、彼は改めて、思い知った。
召使いが夕食の支度をしていき、彼はいつも一人で食べるその食卓に、着く気すら、無くぽつんと椅子にかけたまま、ぼんやり戸口を眺めては、それが開く様子の無いのに、落胆した。
だが、並べられた夕食が冷め切った頃、その戸口はいきなり、開いた。
「・・・失礼。大変、遅くなって・・・」
つづく。