アースルーリンドの騎士追加特記その11 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

ギデオンはいつも通り、それは人目を引く、見事な波打つ金髪を背迄たらし、色白の小造りの小顔の上の、その宝石のような青緑の瞳を煌めかせ、瞳の色と同じ青緑色のビロードに金の豪奢な刺繍の入った上着をその身に付け、美女のような女性的な顔立ちとは裏腹の、尊厳溢れる堂とした態度で、そこに立っていた。
彼はソルジェニーのいとこで、彼の母親は以前、王位継承者だった。
それに、彼の母親が継承権を放棄しなければ、ソルジェニーに代わって王子で次期国王たる地位の、それこそ大貴族ですらひれ伏す、それは身分の高い王族だ。
婦人は、『軍神』と呼ばれる代々右将軍を継いで来た家系の、その厳しい武人の前から慌てて罰が悪そうに色気を隠し、軽く礼を取ると、用があるので・・・と、そそくさとその場を、立ち去って行った。
ソルジェニーは、暫く呆けたようにその、劇の一部のような展開に、言葉を無くしてギデオンを見つめた。
ギデオンは困惑した表情を浮かべてその、小さないとこをそっと見つめ、ファントレイユに告げた。
「・・・君といるとソルジェニーは、いつもこんな事に、巻き込まれているのか?」
ギデオンが言うとファントレイユは素っ気なく返答した。
「・・・巻き込んでは、居ないつもりだが」
ギデオンはその大広間の周囲を見回し、女性達が、群れては遠巻きにファントレイユに注ぐ熱い視線を、呆れるように見つめ、ため息をつかんばかりにファントレイユに向き直った。
「・・・君がここに顔を出すようになってから、随分浮ついたな」
ファントレイユはその美貌で、明るく微笑む。
「それは、光栄だ」
ギデオンの、眉が寄った。
「・・・誉めて、無い」
だがファントレイユは肩をすくめて言った。
「・・・それは、残念だ」
ギデオンに対して宮廷内では、大抵の者が大公爵夫人のような態度を取るのに、ファントレイユのその、全然彼に臆する様子の無い同等の口の聞きように、ソルジェニーはなんだかとても、ほっとした。
ギデオンは全然身分を気にしない男だったけど、周囲はそうでは無かった。大抵、とても丁重に彼に、相対していた。
ギデオンはそれに何も言わなかったけれど、もどかしく感じているのを、ソルジェニーは知っていた。
だから、対等の口を聞くこの護衛には、ギデオンも軽口を叩くみたいだった。
「・・・何しろ、君を推薦したのは、私だからな」
「・・・やっぱり?
君のご指名だとは思ってはいたよ」
ファントレイユは、それは身分の高い大貴族にそう、告げた。
が、ギデオンは身分等相変わらず構う様子無くつぶやいた。
「・・・君は女性には、それは念入りに親切だが、部下に対しても評判が良い・・・態度が柔らかく気が利くしで押したが、ここでそれは、君の本領が発揮され過ぎて、ソルジェニーに悪影響が無いか、心配だ」
ファントレイユはその彼の様子に、つい本音を覗かせて尋ねた。
「・・・ほう。どんな?」
「・・・君を一人占めしていると、ご婦人に恨まれないか?」
ギデオンの、その本心から心配げな声音に、ファントレイユはつい、くすくす笑った。
「・・・冗談だろう?
この職務じゃなきゃ、私はここには、顔は出せないと言えば皆、納得するさ」
ギデオンの、眉が途端にまた、寄った。
「・・・君はソルジェニーの後ろから巧妙にお気に入りのご婦人の気を引いて、それ以外のご婦人の興味が自分に向いて都合が悪くなった途端、職務だとか言ってソルジェニーの後ろに、隠れるつもりなんじゃ、あるまいか?」
ファントレイユはギデオンの疑問に、呆れながら言い返した。
「・・・それをするのは、当たり前じゃないか。
気の無いご婦人の、相手をする義理なんて私には無いし、第一その気も無いのに気を持たせるのは、相手に対して失礼だ」
ギデオンはファントレイユのこの隙の無い返答に、それは不満そうに腕を、組んだ。
だがファントレイユはふと、思い返してギデオンに微笑みかけると、口を開いた。
「・・・ああ。君に、礼がまだだったな。
助かったよ。・・・さすがの私も、彼女くらい大御所で身分の高い女性だと、あしらいかねる」

                               つづく。

本編、「アースルーリンドの騎士」は

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