*パラレルユンジェ先生(旦那さま)×生徒(お嫁ちゃん)続きもの*
ユノとジェジュンはあの足でデパートを出て、車に乗り込み少し走った後、ファミレスへと立ち寄った。
「ジェジュン~ほら、お腹空いただろ!好きなもの食べていんだぞ」
「‥‥‥‥‥」
「ステーキ食べるか?」
「‥ユノ先生‥突き飛ばした‥」
「ごめんて~!しようがないだろ~あの場はさぁ‥」
まだむくれたままのジェジュンをなんとか宥めようと、ユノがさっきからあれこれ言っているのだがなかなか機
嫌が直る気配がない。適当にジェジュンが好きそうなものを注文して、店員が去った後、突き飛ばしたほうの腕を
さする。
「そんなに痛かった?ごめんな。」
確かにジェジュンとの関係に、過敏になっているところはあるだろう。
良いのか悪いのか男同士だからこそ、校外で二人きりで会っていたからといってすぐに恋仲だと思われるわけ
じゃない。
さっきだってジュンスやアラになら「クラスに馴染めていなかったジェジュンの相談相手になっていた」とかなん
とかこじつけて、二人でいる理由を作ることは可能だったと思う。今日見たことは言わないで欲しい。と頼み込め
ばあの二人ならきっとユノを信じて口を噤んでくれたはずだ。
けれど人の噂なんて、どこからどう流れてゆくものか分かるものじゃない。
教師と生徒が学校外で会って友達のように遊んでいる。ましてやジェジュンのこの容姿を考えれば、誰にも疑
われないとは言い切れない。
もし仮に二人の関係がバレたとして、自分は学校を辞めれば済むかもしれない。
しかしジェジュンは?好奇の目に晒されながら学校に留まるのか?それともユノがもう二度と触れられないよう
な遠いところに行かされてしまうのか?
いずれにせよ別れさせられるのは目に見えている。
自分の体裁のことより、なにより、ユノはジェジュンを失ってしまうことを心底恐れて臆病になってしまっている
のだ。
「突き飛ばされたのはもぉいい‥おれだってしょうがないのくらい分かってる‥」
「じゃあ何怒ってるんだよ‥?」
「‥‥‥‥アラ先生って‥‥」
「え?」
「ユノせん‥ユノの事好きなんじゃないの?」
「?」
ジェジュンの発言にユノの目が点になる。どこからそんな発想になるのか全く理解出来ず、口をぽかんと開け
ていた。
「そんなわけないだろ~!アラ先生はただの同僚だって」
「だってさっきだって‥ううん‥最初からそうだった!クッキーとか作ったりっ!」
「あれは別に俺だけじゃなくって皆に配ってたんだよ?」
「そぉだけどっ!」
「大変お待たせ致しました。ごちらセットのサラダとスープになります~」
会話の途中で店員が来てしまったので、二人とも一気に押し黙る。ジェジュンが目の前に並べられたサラダの
レタスに思い切り良くフォークを突き刺しながら「ユノってば‥変なとこ鈍感なんだから‥っ」と小声で漏らすも、
ユノの耳には届かなかった。
食事も終わりに差し掛かり、ユノがステーキの最後の一切れを口に運ぼうとしたとき、突然ジェジュンに両手で
フォークを持つ手を握り締められる。そのまま力を込められて、無理やりユノの手ごとジェジュンの顔の前に持っ
ていき、ぱくっと食べらてしまった。
「ジェ‥ジェジュン?」
「仕返し!」
そう言って舌をペロッと出すジェジュンに苦笑いしたけど、そんなユノの顔を見て機嫌が直ったのかケラケラと
笑っていてちょっとほっとした。
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帰り道。
薄暗くなった街を車の中で走り抜ければ、反対車線のヘッドライトがジェジュンの白い頬に反射しながら通り過
ぎてゆく。
今日あったことがユノの頭を巡り、楽しかった気持ちと疲れた気持ちが重なり合う。
最初のデートからこれじゃあ、もしかしたらもうジェジュンは自分と外に出掛けることなんて躊躇ってしまうかも
しれない。ただでさえ名前を読んだり、暗闇で手を繋ぐことさえ憚られてしまうようなデートなんてきっと煩わしい
ばかりなんじゃないだろうか。
そんなことを考えつつ、ユノはジェジュンの綺麗な横顔を盗み見る。
「‥‥‥なぁジェジュン‥今日、楽しかったか‥?」
「え?うんっ!!」
何の迷いもなく答えられれば、問い掛けたユノのほうが驚いてしまった。
「ほんとうに?」
「なんで?ユノ先生は楽しくなかったの?」
「いやっもちろん楽しかったよ」
むしろ良い意味でも悪い意味でも、忘れられない日になっただろう。
「すごい楽しかったよ!ユノ先生と一緒に映画見れて、二人でご飯食べて、ユチョンとチャンミンや‥
先生達にも会っちゃって‥びっくりしたけど」
満面の笑みを零し、指折り今日の思い出を辿るジェジュンが、ユノに気を遣って言っているわけじゃないことは
手に取るように分かる。
「きっといつか笑って話せるよね。ふふっ。むしろ終わってみれば良い思い出かもね。」
最悪とも言えなくはないデートのことを、さも楽しそうに話すジェジュンにユノは、どうしようもなく愛おしい気持ち
が込み上げては止まらなくなってしまう。
前の信号が黄色に変わり、右足でゆっくりブレーキを踏めば、徐々に車のスピードが落ちてゆく。
「ジェジュン」
「ん?」
少しの沈黙の後、名前を呼べば髪をなびかせユノに振り向いたジェジュンの唇に触れるだけのキスを落とす。
チュと音がして離れ、もう一度、引き寄せられるように唇全部を重ねた。
「ユノせんせ‥」
途端にジェジュンの顔がみるみると赤く染まり、瞳が潤んでゆく。ずっと我慢していた手を強く握れば、運転席と
助手席の少し空いている距離を詰めたジェジュンがユノの肩に頭を預け、熱の帯びたような艶っぽい声で囁いて
きた。
「ユノ先生‥この後どうするの‥?」
「ん?」
「‥‥‥‥ホテル行くの?」
直球すぎる物言いにぶっと吹き出したユノは、慌てて肩に置かれたジェジュンの頭を、長い腕で元の位置に戻
す。ちょうど良く青になった信号に合わせてアクセルを踏み込んだ。
「もちろん家に帰ります!明日学校だろ!」
「えー!!なんで?デートの最後はホテルって決まってるんでしょ?」
「決まってません!どこで聞いたんだ!そんなこと!」
けれど家のギリギリまで「帰りたくない~!ホテルに行くー!」とジェジュンは譲らなくて、次のデートでは、翌
日学校が休みの時に、もっと遠出して帰りにホテルに泊まるとゆう約束を取り付けられてしまった。
朝待ち合わせた公園前で車を止める。家まで送れないことを謝れば、男なんだから大丈夫と明るく返されて救
われた。
ユノだって本当は離れがたくて、連れ帰ってしまいたい気持ちを閉じ込めて無理やり笑う。
何度も振り返ってジェジュンが手を振っている。
その後ろ姿が夜に消えてしまうまで、ずっと見送っていた。
だがこの日、素直にジェジュンを帰してしまった自分を、ユノは後に心の底から後悔することになってしまうので
ある。
‥夏休み偏に続く‥
