出会いがあれば必ず別れがくる。

先日、私の通い続けていた歯医者で治療が最後の日であった。

気付いた方もいるかもしれないが私がこのブログを書き始めた一番最初の話は『つば女』。そう、歯医者の話である。
あれから一年以上、先生にずっと怒られながら、そして迷惑がられながらも通い続けていた歯医者。
全部の虫歯の治療が終わってからは私の歯磨きが雑だということで月に一度の歯磨きチェックで通っていたのであった。

そしてそんな歯磨きチェックもついに最後の日を迎えたのである。さすがにこんなに長いと歯医者に愛着が湧いてくるものである。

「今日で最後か…。」

私は少しおセンチな気分になりながらも先生に口の中を見せた。すると、口の中を覗く先生から思いがけない言葉がでたのである。

「すごい!!」

そして私の歯、一本一本を見て興奮しながらまたつぶやいた。

「いいですね~、いいですよ~。」

滅多に誉めることがない彼の口から次々と出てくるお誉めのことば達。

「すごいです!いいです!!いいですよ~!!!」

彼はこの言葉を何度も何度も連呼した。

私は写真家アラーキーにシャッターをきられるヌードモデルのような気分になりながら、口の中を見られていた。

「歯磨きが上手になりましたね。」

先生は今まで私に見せたことがない満面の笑みで私に最後の別れをいった。

「がんばってこの調子で歯磨きを続けていってくださいね。」

「…はい。」

先生は私のことがよほどストレスであったのだろう。ストレスに解放された先生の笑顔はキラッと光る白い歯で輝いていた。
私も笑顔で返した。キラッと光る治療したての銀歯を輝かせながら…。