肺がんになるちょっと前、歯科医院でアクシデントにあってから、近所の歯科医院に行く気になれませんでした。
アクシデントとは、治療後、歯科衛生士がマシンで歯を磨き始めたときです。
手が滑ったのか、その磨くマシンから手を離したのです。
突然、先端に歯磨き用のものが付いたワイヤーがぐるぐると口の中を飛び跳ねだしました。
衛生士は、そのまま奥に消えました。
逃げたのかな?
口の中、ほっぺの裏をぐるぐると削られて、血だらけ。
あわてて、歯でガツンとワイヤーにかみついてしとめ、自分でそのワイヤーを取り出しました。血だらけです。
ワイヤーを持ったまま、「誰か?」と声を掛けましたが、誰もいません。
歯科医師は、一つ空いた隣の席でほかの人を治療しています。
声を出しても、血があふれてきてうまく言えません。
やっとのことで、「ティッシュください。血が周りに飛び散りますっ」と叫びました。
すると、さっきの衛生士が、首をすくめてティッシュの箱を差し出しました。
捕まえたワイヤーを渡して・・・
「先生助けて・・」と言いましたが、先生は、自分の患者から離れません。
ティッシュで、口を押さえながらしばらく待ちました。
自分の患者の治療を終えてから来た医師は、「口の中は自然に治りますから」と。
ティッシュで口を押さえながら、治療費を支払い帰りました。
ところが、翌日、祝日でしたが、高熱を出し、救急病院に駆け込みました。何らかの感染だということで、抗生物質と痛み止めを処方してもらい、しばらく寝込みました。
それ以来、近所にたくさん歯科医院があるのですが、足が向きませんでした。
立派な大学の証明書を掲示していても信用できません。
ファーストラインに入院したときに、吐き気の中、左上の歯がうずくような感じがしました。
すると、気遣いのある女性研修医が、すぐに歯科に予約してくれました。
歯科に行くと、すべての歯を点検してくれました。
うずいている歯に特段問題はなかったのですが、左上下の親知らず・・ちゃんと出ていないため、虫歯になりやすいから抜歯するようにとのことでした。
親知らずの抜歯は、顔が腫れるほど大変だと聞いていたので、躊躇しました。
でも、抗がん剤治療は白血球が下がり、虫歯があると悪化すると言われて、しかたなく抜歯の予約をしました。
憂鬱なまま予約日になって、「不安だ」と言うと、看護師さんが、「今日は、抜歯専門の先生が来るから大丈夫」と慰めてくれました。
抜歯専門の歯科医は、30代前半くらいの男性医師でした。
とても軽いノリで、「なかなか取りにくいね。でも大丈夫。血を一滴も出さないで終わるよ。麻酔もいらないんだけどね。麻酔は、跡が響いて気持ち悪いでしょ」と。
言われるまま、緊張していると、なんだか器具が差し込まれ、「そろそろ取れるよ」と。
軽いポキッとした感覚があった後、抜歯終わりました。
ほんとうに、血が一滴も出ませんでした。痛みもありませんでした。
すると、「もう一本抜いといた方がいい歯があるな」と。
「また来るの大変でしょう」ということで、もう一本「親知らず」を抜歯してもらいました。
まったく痛みがなく、2本終了しました。
すごい職人技でした。当日も、翌日も何も問題なく過ごせました。
抜歯を待つ患者がたくさん集められていました。でも、その医師は、「今日は少ないね」と。
がん患者の歯科治療は、抜いてしまうことだと・・・のちに分かりました。
「一生自分の歯で食べましょう」ではなく。
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