クレーム処理 | WAS IT ALL WORTH IT ?

分譲住宅の仕事をしていると、時々、近隣の方の中に

「クレーム」を言う人が現れる。


このクレーム・・・・古い家の建て替え工事の場合は、ほとんど無い。

なぜなら、お隣さんと、建て替えをする建築主さんはもともと「お隣さん同士」

なわけですから、よほど、普段から仲が悪くない限り、ケンカも無ければ、

工事に対するクレームも無い。

隣同士で、変な関係になりたくない・・・・という隣人同士の配慮の気持ちが

働くためだと思われます。


しかし!


分譲住宅の場合は違う。

つい最近まで空き地だった隣に、ある時、突然、家が建つ。

どこかの業者がいつの間にか土地を購入し、断わりも無く家が建つ・・・・・。

・・・・ということが、あってはならないので、私達は、土地を購入した段階で、

必ず、ご近所様に挨拶し、この後、「新参者」として、ここに住むお客様が、

ご近所様から嫌われることが無いように、一生懸命配慮するのですが、

この挨拶の段階では何もなかったお隣さんが、後にクレームを言ってくる。

・・・・というケースもまれにあります。


今回は、そのパターンでした。


当社の分譲住宅に住むお客様から電話があったのは一月以上前のことです。


「隣の田んぼのおじさんが、

『お宅の擁壁の水抜き穴から、いつも決まった時間に水がでる。

配管に穴でもあいてるんじゃないか?

ウチの田んぼも、乾かしたいのに水浸しで迷惑している。』

・・・・と、言って来るんですが、見てもらえませんか?」


この某さんから電話をいただいた後、設備屋さんを連れて現地へ行き、

配管(上水、下水、雨水)のチェックをしましたが、異常はありませんでした。


浄化槽設置区域ですので、雨水も汚水も前面道路の側溝に放流します。

わざと晴れ間が続いた日を選んで、雨水枡のチェックも行いました。

一方、汚水は今時は皆、インバ-トですから、枡に汚水も溜まるはずもなく・・・。


そして、前面道路の側溝を見た瞬間、擁壁の水抜き穴から出る水の原因がほぼ、

見当が付いたため、某さんに原因をお伝えし、その時はそのまま帰りました。


ところが、某さんから説明を受けているはずの田んぼのおじさんは、

その後、全く納得せず、とうとう先日、当社までやってきた・・・というわけでした。



実は、某さんとこの田んぼのおじちゃんの敷地は東西に並んでおり、

前面道路の側溝の勾配は、田んぼのおじちゃんの方へ水が流れる勾配に

なっておりました。

ところが、このおじちゃんは、自分の敷地の前の側溝・・・・全部、土で埋めてある。

意図的に埋めたわけではないかもしれませんが、水が通らないほうがいい!と、

側溝の中の土を今後も、処分するつもりが無いと言うのです。


 せき止められた側溝


(写真は某さんの敷地との境界部分。

このあたりは、まだ側溝の形が見えますが、この先は、側溝の姿が識別できない

ほど、土と草で、側溝は完全に埋まっております。)


こんな側溝に水を流すと、水は行き場を失い、

某さんの前の側溝はプールになってしまう。


話しによると、毎日、朝、決まった時間に擁壁の水抜き穴から水が出るという・・・。

そして、某さんも、朝一番に、お風呂の水を流し、洗濯をされるそうで、

これは、その横のもう一棟の当社の分譲住宅に住む、これまた某さんとて、

同じことで、2棟の住宅から、毎朝、大量の水が前面道路の側溝に放流され、

せき止められた側溝はプールと化す・・・・この状態・・・もはや異常事態であります。


この溜まった水はどこにいくのか?

実は側溝に使われるU字溝というのは、長~い一本モノではなく、

ある決まった長さのものをつないで使っています。

ジョイント部分はモルタルでつめてあるだけで、U字溝の継ぎ目からは、

水は多少は外部にもれるように出来ています。


ですから、結論から言うと、このU字溝にナミナミと溜まってしまった水が、

U字溝の継ぎ目から某さんの敷地に流れ込み、いつの間にか水の通り道が

出来てしまい、擁壁の穴から流れる・・・・という結果になったと思うのです。


そこで、午後から、某さんの奥様立会いのもと、実験開始。


①まず、某さんと、お隣の某さんのお宅が午前中、水を使っていないことを確認。


②この段階で、擁壁の水抜き穴から水が出ていないことも確認。


③某さんのカーポートの散水栓をお借りし、ホースを使い、側溝に直接、

 大量の水を放流する。


④建物内部では、現在、長時間、水を使っていないわけですから、

 敷地内の配管から現在は水が漏れているはずがない。

 (現に、この段階では、擁壁の水抜き穴から水は出ていない。)

 この後、擁壁の水抜き穴から、水が出てきたら、それは側溝(U字溝)の継ぎ目

 からもれた水としか考えられない!・・・・ということになるはず。


側溝へホースを使って直接、放流し始め、約5分が経過。


すると・・・・・・来た!


今まで乾いていた擁壁の水抜きから、


 水が出てきた!


予想は当たりでした。


この結果、田んぼのおじちゃんと某さんの立場は逆転しました。


今までは、田んぼに水が入って迷惑だ!

・・・・・と言うのが、おじちゃんの立場でしたが、今度は、


側溝をせき止めたせいで、自分の敷地の内部に、水の通り道ができてしまった!

将来、敷地が陥没したらどうしてくれる!

側溝をせき止めた、あなたは責任取れるのか!


・・・・・と、田んぼのおじちゃんは、非難される立場に逆転してしまったのであります。


実際、敷地内に水の流れる穴が出来てしまうのは、建物にとっても、

敷地にとってもいいことではありません。


私は、この後、このおじちゃんに話をしました。


「今のままでは、あなたは被害者どころか加害者です。

側溝をすぐにでも、掃除してください。」



・・・・今日も、疲れる一日でした・・・・。