平成30年度富士総合火力演習で、陸自の新装備である16式機動戦闘車が実弾射撃を初披露した。

 

16式機動戦闘車はゲリラや特殊部隊による攻撃、島嶼部への侵攻等に対応することをコンセプトに開発された。その特徴はキャタピラではなくタイヤで動き、最高時速は100キロである。16式機動戦闘車を陸路機動、もしくは輸送機C-2による空輸により展開することを想定している。

 

防衛省は陸自に15個ある師団・旅団のうち7個を機動師団・旅団に改編し、隷下の各1個普通科連隊を諸種混成の即応機動連隊に改編する予定であるが、16式機動戦闘車は即応機動連隊に配備される。

 

16式機動戦闘車については、かねてより必要性があるのか議論されてきたが、私も疑問である。以下の理由を述べてみよう。

 

・ゲリラや特殊部隊に対応するには、防御力が不足している。戦車よりも装甲が薄いため、携行型の対戦車火器や仕掛け爆弾で容易に撃破される。

 

・105mm砲はゲリラや特殊部隊を制圧することに向かない。採用されている砲弾は徹甲弾と対戦車榴弾であり、対人戦闘には適さない。本来なら敵の頭上で炸裂するような砲弾が必要である。

 

・C-2による空輸は現実的ではない。C-2の配備数は少なく、まとまった数の16式機動戦闘車を輸送できない上、滑走路が整備された空港が無ければ着陸できないため、離島への展開は机上の空論である。

 

・水陸両用能力が無いため、海上輸送するにしても、輸送艦による接岸かホバー艇のLCACでビーチング出来なければ離島に展開できない。しかもLCACは海自は6隻しか保有していない。どうせ開発するなら、水陸両用能力を付与するか、輸送機から投下できる空挺戦闘車の方が良かった。

 

・離島防衛における16式機動戦闘車の仮想敵は敵の水陸両用装甲車や軽戦車である。それならば105mm砲は必要なく、より小口径の対戦車砲、機関砲でも対応できる。

 

・タイヤのため、不整地走破能力が低い。

 

・90式戦車や10式戦車は120mm砲を採用しており、16式機動戦闘車の105mm砲弾と混在すると、兵站の負担が大きい。

 

主な疑問点、問題点を列挙してみたが、現場の運用サイドではもっと多くの問題が発生しよう。上記の理由から、16式機動戦闘車の必要性は無いと思うが、防衛省は16式機動戦闘車を200~300両調達する予定である。

 

本来、現防衛大綱で戦車定数が300両に削減されたのだから、余剰になった人員や経費などは別の分野に投資するべきである。16機動戦闘車を予定通り調達すれば、戦車定数が600両体制になるのと同じだ。

 

ネットワーク化や個人用装備の更新など陸自には優先して取り組むべき課題が山積している。ドローンやUAV、精密誘導砲弾の導入では中国軍よりも遅れている。16式機動戦闘車よりもそうした分野への投資を優先した方が陸自の戦力は向上するはずである。