来年度の防衛予算概算要求が過去最大となる見込みである。中国の海洋進出や北朝鮮のミサイルへの対応などが予算の増大を促している。

 

しかし、高い金を出して兵器を購入する以前に、自衛隊は定員に対して実員が大きく不足している、充足率が低いという大問題がある。

 

平成28年防衛白書より引用すると、自衛官定員が247,154人であるのに対し、実員は227,339人となっており、定員を2万人以上割り込んでいるのだ。

 

陸上自衛隊においては、1万5千人以上も実員が不足している。また、海上自衛隊では、潜水艦や護衛艦などの艦艇では、充足率が8割程度という深刻なケースも多いそうだ。

 

充足率が低いと、隊員一人当たりの負担が増大する。これは部隊の疲弊につながるし、有事の際は、戦う前から戦死者が出ているようなものだ。もし、この状態で実戦となり、1~2割の損耗が発生すれば、部隊としての組織的戦闘が不可能となる。

 

外国であれば、常備兵力を上回る予備役が存在するため、補充も容易だが、日本の場合は予備役が外国と比べ圧倒的に少ないため、外国のようにはいかない。

 

階級別でみれば、「士」が最も不足しており、陸海空全体で充足率は75%と深刻である。

 

士は任期制自衛官で年齢が一番若い。しかし士が不足し、曹や幹部クラスが相対的に増えれば自衛隊の平均年齢は高くなる。若くて体力のある士が不足していると、部隊の戦闘力や継戦能力が低下する。

 

いくら防衛予算を増額して装備品を調達したところで、定員割れが常態化していれば、その力を存分に発揮することはできないであろう。

 

政府と防衛省はこの事態を深刻に受け止め、充足率の向上を最優先課題として取り組むべきである。