台風により甚大な被害が発生しているフィリピンに自衛隊が1000人規模で派遣されることが決定した。


フィリピンでは医療支援や防疫、物資輸送などが急務であり、自衛官の皆様には感謝と応援の祈りを捧げたい。


さて、今回の派遣規模は海外派遣では最大級であるが、その中でも派遣される自衛隊にとって心強いのが「ひゅうが」型護衛艦の二番艦である護衛艦「いせ」の派遣だ。


「いせ」は平成23年に就役したばかりの最新鋭の護衛艦だが、全通式の飛行甲板と60×19メートルの格納庫および20×20メートルの航空機整備区画を備えた高い航空機運用能力を備えている事が特徴だ。


今回は海自は護衛艦「いせ」と輸送艦「おおすみ」を中核に輸送艦「とわだ」の3隻を派遣する。陸自からはCH-47輸送ヘリを派遣するのでおそらく「いせ」に搭載することになるだろう。


フィリピンでは「いせ」を被災地洋上に浮かべヘリコプターによる救援活動の拠点として使用するであろうが、「いせ」の高い航空機運用能力が大いに発揮されるであろう。


海自には実は海外での救援活動で苦い経験がある。


2004年に発生したインド洋大津波で大きな被害を受けたインドネシアに自衛隊が派遣された際も海自は物資の輸送やヘリの運用拠点としての機能を担った。


その際に海自は輸送艦「しもきた」にCH-47とUH-60を搭載し派遣したが、「しもきた」はエレベーターや格納庫のサイズ上、UH-60はローターを外してを艦内に格納せねばならなかった。より大型のCH-47は艦内に格納出来ないため、塩害を防ぐ防錆用のカバーで覆って「しもきた」の甲板に並べて派遣せざるを得なかった。


ヘリは被災地に到着してからカバーを外しローターを付けて飛行試験をしてから使用せねばならなかったし、「しもきた」には航空機整備能力が無いため、護衛艦「くらま」でUH-60の整備を行った。しかもCH-47は点検以外の本格的整備が出来なかった。


このような事から海自はインドネシアにおいて救援活動に有効なヘリの運用に相当苦労したようである。

ヘリの運用に対する支障は、場合によっては一秒一刻を争う救援活動においては致命的な欠陥になりうる。


しかし今回は本格的な航空機運用能力を備えた最新鋭の護衛艦「いせ」が派遣されるため、インドネシア派遣の時のような苦労は相当軽減されるだろう。


「いせ」ではCH-47の整備も出来る上、エレベーターのサイズ上ローターを外すか畳む必要があるかもしれないが艦内の格納庫にも収容できるので、塩害を抑えることが出来る。また、航空燃料の補給にも問題は無いし航空要員の受け入れも万全だ。


こうした高い航空機運用能力で「いせ」は大活躍に違いない。


今後自衛隊は海外派遣や国内の離島防衛などでヘリコプターの運用能力の向上が必須となる。そうした点を踏まえると「いせ」や建造中の「いずも」のようなヘリ運用の中枢艦の建造や「おおすみ」型より大型でヘリの運用が出来る揚陸艦の建造が必要になってくるであろう。