政府は12月中にも決定する防衛大綱において、戦車の削減を決める方向だという。2010年に定められた防衛大綱では戦車定数を600両から400両に削減された。今回はさらに100両削減し陸上自衛隊の戦車定数は300両になるという。


冷戦後のソ連の着上陸侵攻への対処から南西諸島や朝鮮半島方面での離島防衛が重視されるため、重装備の戦車は削減される流れが定着した。


冷戦期の戦車定数1200両から4分の1に削減されるわけである。現代戦では殆ど使えないと思われる旧式化した74式戦車が未だに陸自戦車の主力を占めている状況を考えれば、戦車定数の削減は単純な減殺とはいえないだろう。


しかし、陸自の火力の低下は確実である。もし戦車定数を300両にすれば機甲師団である第7師団は廃止か旅団に格下げ。師団、旅団の戦車大隊や戦車中隊は廃止して、各方面隊に直轄の独立戦車大隊でも作らなければ300両に削減するのは難しいだろう。


仮に師団、旅団の戦車大隊、戦車中隊を廃止、縮小する事になれば、只でさえ火力の貧弱な陸自の師団、旅団の戦力のダウンは免れないし、連隊戦闘団を編成する際にも機甲戦力が不足することになるであろう。


そもそも、ミサイル防衛や離島防衛の予算捻出のために戦車を削減するというのもおかしな話だ。戦車は対テロ、ゲリラコマンド戦でも有効であるし、普通科の火力支援にも無くてはならない存在だ。


カナダ軍は戦車を廃止しようとしたが対テロ戦で戦車の有効性が認められて戦車の廃止を撤回した。戦車の火力と重装甲が実戦において役に立ったからだ。


また戦車の不整地走破能力も魅力的だ。陸自では装輸式の機動戦闘車を開発して離島防衛に使用するとしているが、道路網の整備が未熟で海岸や田畑などの不正地の多い離島ではやはり装軌式の戦車の方が有効である。


こうした点を考えれば安易に戦車を削減するのは危ないのではないか。せめて05大綱の際の戦車定数600両程度は維持するべきである。各師団や旅団の機甲戦力を奪えば、師団、旅団の自己完結型の戦闘機能を保つことは出来なくなる。


民主党政権から自民党政権になり防衛政策は多少はマシになるとは思っていたが、大幅な方針転換でもしない限り陸上自衛隊が軽視される風潮は続きそうだ。