今月22日にブルネイで行われたTPP第19回交渉会合では「初日は閣僚会合に加え、市場アクセスや、著作権の保護期間などを話し合う「知的財産」、公共事業の入札ルールを決める「政府調達」の3分野の作業部会がスタート」(産経新聞)というように、公共投資が交渉の議題に上がった。


自分がTPPのデメリットとして気になるのは公共投資の海外企業への開放がもたらす影響だ。


これまでは政府調達として行う公共投資は23億円以上の発注額でなければ海外企業を入札に参加させつ必要は無かったが、TPPでは発注額の少な事業であっても海外企業に門戸を開くことになる。


よくTPP推進派は、「TPP加盟国が行う公共投資に日本企業が参入するチャンスだ」などと言っているが、仮に日本の土建屋が海外での公共事業に入札し参入できても、日本人の雇用が増えるわけではない。


なぜなら落札元が日本企業であっても、実際に作業を請け負うのは現地の労働者だからだ。理由は簡単。超低賃金の海外での事業に日本人がわざわざ働きになど行かないからだ。それに、人件費を抑えたい企業経営者も人件費の高い日本人労働者を雇おうとはしない。


だから仮に海外での事業を日本のゼネコンが落札して、利益を上げたとしても日本人の雇用は増えないし、日本に利益が還元されることはない。


逆に、日本政府が日本国内で行う公共投資を海外のゼネコンに落札されたらどうなるか。


TPPではヒトの移動もハードルが下げられるので、安い労働力を売りにする海外のゼネコンが日本国内の公共事業を請け負う形になり、日本人の雇用が奪われる他、政府が公共投資として財政出動を行っても、その金が海外に流出することになるのだ。


とくに公共投資の海外企業への開放は地方経済において死活的問題だ。


地方経済は、道路工事や防災事業などの公共投資への依存が強く、多くの雇用を支えている。特に小泉政権や民主党政権で公共投資が削減された結果、多くの土建屋が経営難に陥っている。


もし公共事業の海外への開放の結果、海外のゼネコンに公共事業が奪われれば地方経済は大きな打撃を受けることは想像に難くない。


また、地方では地元の土建屋が災害発生時の復旧作業や、豪雪地帯の除雪、平時の防災事業を請け負っており、いわば地域密着型の事業を展開している。これは地方の人々の暮らしを支えている大きな要素だ。


つまり地域密着型の経営を行う地元の土建屋が淘汰されることは、地方の人々の生活のレベルの低下にも直結する。これは大げさな話ではない。つい2年前の東日本大震災では応急復旧に地元の土建屋が即戦力を発揮したではないか。


このように考えても経済、雇用、防災などの面で日本の土建屋の存在が地方にとってどれだけ重要かが分かる筈だ。


海外への公共投資の開放が地方の大きな衰退をもたらすことを改めて警告しなければならない。


TPPは農業だけの問題と思ったら大間違いだ。今、TPP交渉に首を突っ込み無条件降伏への道を歩もうとしている安倍米国傀儡政権にNOの声を上げTPP反対の大義を貫かねばならない。