昨年12月に第2次安倍内閣が誕生して以来、我が国の政治論談やメディアでは自民党の「右傾化」を指摘し批判する声が高まっている。


慰安婦や尖閣問題などで国内のナショナリズムが高まっている上、自民党が河野談話や村山談話などの歴史認識見直しや竹島の日を祝う式典の開催、憲法改正を声高に叫んだこと等を受けての批判と思われる。


だが実際の自民党や安倍政権の動きを見れば、こうした「右傾化」批判が実に見当違いであることが分かる。なんと、実際には自民党は左傾化しているのだ。


まずは憲法改正。自民党は結党以来の悲願として憲法改正を掲げている。第2次安倍内閣が発足してから憲法の改正規定を改正するという所謂96条改正論が非常に活気づいていたが、アメリカが安倍内閣の「右傾化」に懸念を表明したり、世論調査で改憲を支持する声が予想よりも低い事が分かると急にトーンダウン。


菅官房長官は「96条の改正について、まだ国民的理解を得られている段階ではない」とトーンダウンし、政府関係者の中には「憲法は急がなくていい、政権の最後の切り札として温めておけばいい」と言っているそうで改憲の動きは急に鈍くなった。


さらに政府主催の竹島の日を祝う式典も今年は見送ったうえ、参議院選の公約では政府主催の式典開催は削除される見通しだという。


それだけではない。橋本市長の発言に端を発した慰安婦問題でも自民党は一歩、いや10歩も後退した。


橋本市長の発言に対して、あれほど河野談話見直しを主張していた稲田朋美、安倍総理などは河野談話の趣旨そのものの批判を繰り返し、あっさりと河野談話の踏襲を明言。


さらに村山談話に対しても基本的に踏襲すると表明し、小野寺防衛大臣に至っては橋本発言を念頭に「安倍政権は、そのような発言や歴史認識に組みするものではない」と手のひらを返したように自虐史観に逃げ込んだ。


結局、この半年間を振り返れば、歴史認識においては自虐史観を見直すどころか強化され、日本自立の第1歩である改憲も動きが鈍りだした。


それだけではない。安倍内閣は構造改革路線を復活させただけではなく、TPPや大幅な規制改革に乗り出し我が国をグローバル資本の餌にしようと目論んでいる。


そもそもグローバリズムとは、今まで日本が培ってきた価値観や国柄を捨て、それらを「世界共通の普遍的価値観」に置き換えるものであり、進歩的・左派的な思想である。


その点を踏まえれば国柄を壊し、経済至上主義を追求しようとういう安倍政権の経済政策は左翼的とも言える。


したがって、安倍内閣が右傾化しているとの批判は全くの見当違いであることが分かるはずである。


安倍内閣は右傾化どころか左傾化しているのだ。右傾化を批判するよりも、日本を守るためには安倍内閣の「左傾化」を心配する方が重要ではないだろうか。