この1週間で急速にTPP交渉参加のムードが高まっている。自民党内のTPP反対派は2月ごろまでは強硬に反対していたものの、昨日のTPP対策委員会であっさりと交渉参加を容認した。




TPP対策委員会の会合では交渉参加容認決議の決定を拍手で了承されたという。野田政権の時は民主党内には離党も辞さない覚悟で反対した議員もいたが、今回の自民党はそういう骨のある議員がいなかった。これでは学芸会、茶番劇ではないか。




自民党のTPP対策委員会では交渉参加に際して農産品(米、麦、牛肉など)の関税や国民皆保険制度や公的薬価制度、食品の安全基準、金融サービス、ISD条項、自動車の数値目標などを列挙して「守るべき国益」と位置付けた。




これに安心してTPP反対派が容認に回ったのかもしれないが、これらの条件を守ったとしても、だからといってTPP交渉参加にメリットがあるわけではなく、TPP対策委員会で厚労分野を担当した高鳥修一議員が自身のブログで「交渉を通じて「守るべき国益」はあるが、攻めて「勝ち取る国益」は具体的に無いということです」と暴露している




つまりメリットもないのにTPP交渉参加にまっしぐらになっているのだ。だから「守るべき国益」を仮に死守しても、それはダメージが若干和らぐだけで、国内産業や国民の生活への影響がなくなるわけではない。




そればかりか自民党TPP対策委員会が列挙した「守るべき国益」すら守れない可能性が極めて濃厚だ。




例えば新たにTPP交渉に参加する場合は(1)包括的で高いレベルの貿易自由化を約束する(2)合意済みの部分をそのまま受け入れ、議論を蒸し返さない(3)交渉の進展を遅らせない--という条件を呑まなければならない。




要するに交渉参加後発国はすでに交渉に参加している9か国が決めた条件を受け入れなければならず、新たに主張を通すことが出来ないのだ。




また、日本がTPP交渉参加を表明しても実際に交渉参加が認められるのは7月以降になるために、7月に行われるTPP交渉には参加できずに9月のみ1回きりの交渉参加になってしまうのである。




しかも7月で重要な事項の交渉は終わってしまうという情報もあり、仮に9月の交渉に参加しても日本に有利な条件を勝ち取ることなど不可能で、それまでの交渉で事前参加国が決めた条件を諾々と呑むしか道は残っていない




当然「守るべき国益」を守ることなど到底できないし、本日の東京新聞の報道によれば、TPP交渉参加をめぐる日米事前協議で米などの農産品の関税撤廃の例外は議題にすら上がっていないし今後も取り上げられる予定はないというではないか。




そのため、日本が農産品の関税保護の交渉は、事前協議がなければ、ぶっつけ本番に近くなる。ということは9月の交渉に参加した時点で、既に農産品の関税撤廃が決定していればそれを覆す事が不可能だということだ。




このように明らかに日本に不利なことが判明しているのに交渉に参加すればもはや「ネギを背負った鴨」と同じであり、日本の国内市場や莫大な金融資産を狙うアメリカをはじめとしたグローバル資本にいいように搾取されるシステムが完成する。




もちろん一度乗ったバスは途中で降りることなど出来やしない。つまりTPP交渉に参加を決めた時点で日本の敗北は決定するのだ。




実は安倍総理自身もTPPが日本に不利な条約であることを重々承知している。それにも拘わらず「強固な日米同盟」などという空虚な言葉をかざしアメリカのご機嫌をとるために参加を強行しようとしているのだ。



これは明らかに国民への背信行為であるとともに、2000年続く我が国の国柄の否定、そして明治維新以来、日本の近代化・発展に貢献した先人の苦労や欧米列強から日本を守るために血を流した英霊の気持ちを踏みにじる行為だ。



もしTPP交渉参加を安倍総理が表明すれば、安倍氏自身そして交渉参加を容認した自民党議員は全員超ド級のA級戦犯、国賊となる。安倍総理と自民党議員よ、国賊となる覚悟はあるのか?




そして盲従的に安倍総理を応援している一部の保守派、財界人はこれでも安倍総理を支持するのであろうか。



自分はかつては改憲をはじめとした戦後体制脱却を掲げる安倍総理を支持した。しかしTPP交渉に参加するというのであれば話は別だ。今総理がやろうとしているのは戦後体制脱却どころか戦後体制従順。ただただアメリカに追従している。



TPPに参加し日本をアメリカをはじめとしたグローバル資本に売り渡す者を応援することなど出来やしない。



今、保守派や善良な国民に求められているのは、安倍総理を敵に回してでもTPP交渉参加に反対する覚悟と気概があるのかだ。保守派は日本の国柄や国益を保守するのであって決して安倍政権を保守するのではない。



TPP阻止のために国民は死力を尽くし、徹底抗戦せよ。