安倍政権が誕生してから前政権が決めた2030年までの原発ゼロの方針が見直された。経済界からの強い要望もあり、今後は安易に脱原発の流れにはならないであろう。規模を縮小しつつも原発を維持する方針になるのではないかと予想される。
自分は保守の立場から脱原発を主張している身であり、当ブログでは何度か安全保障上の観点から原発の危険性を訴えてきたが、未だに保守論壇では原発推進が主流である事に警鐘を鳴らしたい。
なぜなら原発は安全保障上の決定的リスクだからである。その思いをさらに強くした出来事があった。
それは韓国のネットメディア「デーリーアン」が、北朝鮮の朝鮮労働党宣伝扇動部が海外の同胞団体幹部向けに行った講演内容とされる音声ファイルを入手した事である。
その講演では宣伝扇動担当書記が、北朝鮮のミサイルについて「日本全土を打撃できる」「北海道から九州の南端までを攻撃するならば(射程は)1500キロで可能で、(ミサイルは)すでに地下開発施設でできている」と主張。
その上で、「ロケット(ミサイル)1発で、原子力発電所1カ所を攻撃すれば広島に落とされた原爆の320倍の爆発が起こり、日本という国を地球上から消し去ることができる」と発言しているのである。
この講演の内容から伺えることは北朝鮮が日本の原発を攻撃する能力を既に保有しており、常に狙っているという事実だ。
1996年に韓国で発生した北朝鮮特殊部隊浸透事件(江陵浸透事件)で逮捕された特殊部隊員のリ・ガンス氏は「日本を除いた戦争はあり得ない」と断言し、仮に朝鮮半島有事が発生した場合には米韓の後方支援を担う日本が必ず北朝鮮による武力攻撃の対象になると警告した。
原発を攻撃するとなれば前述の講演内容の通り弾道ミサイルによる攻撃が考えられるが、それ以外にも特殊部隊や武装工作員による侵入・破壊活動が想定される。
北朝鮮は18万人という世界最大規模の特殊部隊、ゲリラコマンド部隊を保有しており、そのうち数千人が対日作戦を実施する部隊とされ、朝鮮半島有事の際は数百人規模が日本に侵入すると見られている。(防衛省推定)
日本は朝鮮半島有事の際に米韓の後方支援を担うため、米韓にとってはアキレス腱のような存在である。だから米韓への支援を妨害するために、恐らく北朝鮮は開戦に先立ち日本に特殊部隊やゲリラコマンド部隊を送り込んで原発を攻撃するだろう。なぜなら原発を狙えば日本国民の間で厭戦世論を高められるからだ。
日本人は福島原発事故の恐怖を味わっており、原発事故がもたらす社会的混乱や経済的損失、健康への不安などを経験している。
北朝鮮が日本の原発を狙い「米韓に対する支援や在日米軍への協力を止めなければ日本の全原発を破壊する」と恫喝すれば日本国民は一瞬にしてパニックに陥ると同時に、「日本は北朝鮮と敵対するようなことはするな」「米韓への支援を中止しろ」と叫びだすであろう。北朝鮮は日本の世論がそうなることを熟知している。
つまり、日本が抱える多くの原発が北朝鮮などの敵対国家による恫喝の対象となり安全保障上の決定的なリスクとなってしまっているのである。
原発を推進する保守派や財界人にこの認識はあるのであろうか?
田母神俊雄氏は「原発の安全は二重三重になってるから、工作員が悪さできる確率は1%もない」と言っていたが、その認識は明らかに現実離れしており甘すぎる。
自分は以前も原発警備の脆弱性をしてきしているのでそちらを見てほしいが (拙ブログ「誰も指摘しない原発警備体制の脆弱性http://ameblo.jp/aam4/entry-11283607764.html 「韓国軍特殊部隊が証明した原発警備の脆弱性http://ameblo.jp/aam4/entry-11148886677.html 」)とにかく日本の原発など北朝鮮の特殊部隊にしてみれば鎧袖一触だし、ミサイルで攻撃され冷却機能が喪失されれば簡単に炉心溶融が起こる程の物なのだ。
このような大きなリスクに着目すれば、もはや安易に原発推進を主張することなど自殺行為に等しいものなのだ。かつて自民党の石破茂氏が「原発は潜在的核抑止力になり、安全保障上必要だ」と言っていたが、原発が日本の安全保障に資するどころか大きなリスクであるという点になぜ気づかないのか。
日本は脱原発に舵を切り、安全保障上の決定的なリスクを減らすべきだ。別に原発が無くても核武装は可能だ。(というか日本の軽水炉型原発は核転用に向かない)核弾頭はインドから購入するか共同開発すれば手に入る。
つまり自分がかねてより主張している脱原発と核武装の両立=他国による恫喝・攻撃の標的にされるような原発を減らしながらも、同時に核武装をして相互確証破壊能力の保有による抑止力を確立することが最も日本の安全保障に資するはずだ。
原発推進を主張する保守論壇や財界人はまずは自国が抱える原発の大きなリスクを認識しなければならない。その上で原発をどうするのかと言う議論をすべきだ。安全保障上の決定的リスクである点を無視して安易に原発推進を主張することはあってはならない。