『ぅうっん・・・』

『平沼橋までお願いします・・・』

『うぅんっ・・』


乗客は、青い鮮やかなネクタイをした、さわやかな30代後半くらいのサラリーマンだった。


『どうしたら良いぃんだろうかぁ・・・』

『ぅうっん・・・』


その男は唸りながら難しい顔をして乗り込んで来たのである。




『お客さん』

『今から私が独り言を言いますので、宜しかったら聞き流してください』

そう言って吉田は話を続けた。



『息子さんは大丈夫ですよ』

『今は、登校拒否をして、家に籠りっぱなしですが』

『何も心配することはありません』

『今の高校を卒業するころには、新しい流れが、息子さんを包んでいますから』

『その時を待てば良いだけです』

『息子さんは、今、現実の矛盾と戦っているだけですから・・・』




『そして、大学は、アメリカのケゾンブリッジ大学に行きたいと言って来ますので、快く、行かせてあげて下さい』


『詳しくは分かりませんが、息子さんは、将来あなたと同じ道を辿り、外交の仕事で活躍しますから・・・』

『あっ それと・・・』