『運転手さん』
『どこでも連れて行ってください』
吉田のタクシーに若い女性が乗り込んで来た。
『えっ』
『どこへでもって?』
行先が決まらないため、停車したまま、吉田は女性に聞き返した。
『どうかなされたのですか?』
『宜しかったら、お話を伺いますよ』
『どこでも良いから発車して!』
彼女は返した。
暫く問答をしながら、タクシーはタクシー乗場を離れ。
駅前のロータリーを廻って、左折し浅間の方へと走らせた。
『お客さん、もう彼の事は諦めた方が良いですよ』
『丁度いい時期に来ていますから・・・』
吉田は彼女に向かって話を続けた。
『心配しなくても良いですよ』
『貴女は、今年の秋に、新しい男性と出会って、幸せになれますよ』
『なにも悩むことは無いのです』
『えっ!』
『どういうこと?』