それから7年ほどの時が流れた。
林業で森を守っている森尾守。
国立難波大学で研究員となった石村浩太。
2人は立派な成人の男性となり、今でも親友であった。
夏休みで大阪から帰省していた浩太は、久し振りに守と会っていた。
そして。
守の家でお酒を飲みながら、子供の頃の懐かしい話をしていた。
『守さぁ、授業中なのに机の上でミヤマクワガタ対ヒラタクワガタを戦わせていて、平野先生にすっごく怒られて、クワガタを没収されたよなぁ』
『あれは大事な戦いだったんだぞ!』
『予選を勝ち抜いた同士の決勝戦だったんだから!』
『でも、放課後にな、平野先生と二人だけで決勝戦をやったんだけどな・・・』
『実は平野先生も昆虫が大好きだったんだよ』
『アハハハハ・・・』
ふたりの笑い声が六畳の居間に響いた。
『お兄ちゃーん、お茶っ葉の缶はどこにあるの?』
淀川短大を卒業したあと、大阪の商社に就職していた亜矢子も長期夏季休暇をとって、実家に帰省していた。
『流し台の左側の棚だよ』
『前から同じ場所だからすぐに分かるだろ』
『どこを探しているんだよ』
『お前 もう忘れちゃったのか・・・』
『守さぁ』
浩太は神妙な顔をして、浩太と向かい合った。
『なんだよ浩太、クソ真面目な顔をして・・・』
『あのさ 守っ』
『実は俺たちふたり・・・』
流し台の前で。
ふたりの会話に耳を澄ませながら。
亜矢子は息を潜めて、ぼんやりと立ち竦んでいた。
終わり