『寿々、頼みがあるんだけど・・・』
メニュー考案に行き詰っていた政人が、熟れかけのキュウリにも似た薄青い顔をして寿々に言った。
『ん、何なの?』
外の路地を吹き抜けた小さな秋風が、両手で掴めるくらいの渦を巻いて、辺りの枯葉を巻き上げていた。
『どうしても新しいメニューのアイディアが浮かばないんだよ』
『寿々が考えてくれないか・・・』
昔乃美術大学の音楽科を中退し、このレストランでアルバイトをしていた寿々に、政人はお願いをしてみた。
『ん?』
『私がメニューを考えるってこと?』
『それならOKよ』
『私が考えてあげる』
寿々は快諾した。
『料理も音楽も同じよ』
『いろんな食材を並べて、ハーモニーを作れば良いだけじゃん』
『簡単 簡単!』
『私に任せてよ』
これまで幾つもの受賞を重ねていた料理人の政人は、遂にアイディアが枯渇してしまい、
全くの素人である寿々に新メニュー考案を頼んだのであった。
その新メニュー披露の日までは、あと、一ヶ月を切っていた。