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ああ、レバノン杉のTシャツか、たいしたことないなあと通り過ぎようとすると、店員が「これ3ドル」と出してきたのが、ヒズボッラーTシャツ。
فان حزب اللًه 神の党ヒズボッラー
ヒズボッラーとは、直訳すると、「神の党」。「神」とはもちろん、アッラーです。ただ、誤解があるかもしれないので確認しますが、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は一神教、つまりただ一つの神を信じる人達というわけなのですが、この神は、いずれも共通なんです。ユダヤ、キリスト教徒が言う「その名を口に出すのもはばかられる」神(といいながらよく、God...!と叫んでいますが)と、ムスリムがあらゆる機会に口から出るアッラーは、別の存在ではなく、同一なんだそうです。
だから、2009年の年末に話題になったように、マレーシアのカトリック団体が、神の訳語として「アッラー」を使いたいと裁判に訴えるようなことが起きるのですね。ちなみに、インドネシアの聖書では、すでに「アッラー」になっているそうです。実はマレーシアでも、キリスト教徒は長年「アッラー」を使ってきたそうです。
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もともとはレバノン内戦のさなかに台頭した過激派で、過去にはベイルートのアメリカ大使館攻撃なども彼らがおこしたとされています。
そんな過激派がなぜ政党として支持されているかというと、民兵として地域の治安を担当したり、そこから発展して学校や病院を運営するなど、政府に代わって教育や福祉のサービスを提供しているからです。現在、中東ではこうした武装組織を持った政党が数多く台頭しています。例えば、パレスチナのハマースなんかがよく知られています。イラクで反米運動を担ったサドル派だって、今や議会のキャスティングボードを握る与党です。
右上の写真はバールベック遺跡前に飾られていた各国の国旗。よく見ると、この中にもヒズボッラーの旗があります。写真中央、日陰になっているところに立っている黄色い旗がそうです。
![アーディで行こう](https://stat.ameba.jp/user_images/20100603/09/aadydeiko/1e/53/j/o0300033910572351112.jpg?caw=800)
このヒズボッラー、シンボルカラーは黄色で、シンボルマークは、右の写真。イスラーム過激派にありがちな泥臭いものではなく、垢抜けています。真ん中の大きなロゴは、アラビア語の党名をデザインしたもの。武器を手で掴んでいるところが出自を物語っていて、私はかなり秀逸な出来だと思いますが...
機関銃の上のアラビア語は、
فان حزب اللًه هم الغالبون
The Hezbollah are the victors
つまり「ヒズボッラーは勝者だ」
ロゴの下には、
المقاومة الاسلامية في لبنان
The Islamic resistance in Lebanon
イスラーム・レジスタンスですね。
まあ、一般的に体制側から見ればテロ組織、反体制側からみれば抵抗運動です。ヒズボッラーは今や与党ですから、この場合はイスラエルに対する抵抗運動といったところでしょう。
この間イスラエル軍がガザ国際援助船の襲撃・拿捕をして死者まで出し、国際社会から非難されていますが、いったい何を考えているのでしょう。中東で唯一にして最大の理解者であるトルコとの関係も悪化して、どんどん国際社会から孤立していくように思えますが。
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![アーディで行こう](https://stat.ameba.jp/user_images/20100603/09/aadydeiko/cf/4a/j/o0300019010572351110.jpg?caw=800)
ところでヒズボッラーTシャツというのは、2006年のイスラエル再侵攻あたりからレバノン・シリアで流通していたものです。ヒズボッラーのカラーである黄色の地に、上のシンボルマークをあしらったもので、たいてい、ヒズボッラーの指導者であるナスラッラー師など、政治色の強い絵柄がプリントされています。右写真はそのころ私が入手したもの。これは演説するナスラッラー師という、比較的おとなしめのデザインですが、もっとすごいのになると、
・ イスラエルのものと思われる船が
空からのミサイルで爆撃される
・ 自爆攻撃に出発する人と、それを
おだやかな顔で見守るナスラッラー師
といった絵柄があって、かなり過激(というかシュール)です。
だいたいこのTシャツを着ること自体が、ヒズボッラー支持表明の政治的メッセージになるので、親米、反イラン(というか反シーア派)の人も多いヨルダンでは、あまり好ましくないとされて、外では着用しないことを推奨されていました。「洗濯しても外に干すな」とまで言われたものです。
ある日本人が、とある中華料理店でこのTシャツの話をしていたら、そこのギャルソンが話に乗るというより、尋問調に「どこで買ったんだ」とかしつこく聞いてきたそうです。まあ、ヨルダンにもあちこちに秘密警察はいるので。
![アーディで行こう](https://stat.ameba.jp/user_images/20100603/09/aadydeiko/1d/be/j/o0300029210572350641.jpg?caw=800)
![アーディで行こう](https://stat.ameba.jp/user_images/20100603/09/aadydeiko/f2/65/j/o0300029210572350642.jpg?caw=800)
さて、今回声をかけてきた店員は、まず始めになんと緑地のTシャツを出してきたのです。あれ、シンボルカラーのイエローじゃなくていいんかい? でもこの緑じゃあ、日本で着るにもちょいといまいちだなあ、とか一同言い合っていると、次に出してきたのが、写真の黒! そのシブさに見た瞬間、みんな虜になってしまいました。黒に黄色はかなりビビッドです。
結局おとな4人、全員買ってしまいました。サイズもM、L、LLとちゃんと揃っていました。
いやあ、いい買い物をした。
さっそくこの間、その4人で旅行清算会(と称した飲み会)をした際に、みんなで着てみました。
右上が前、右下が背中です。これにはシュールな絵が入っていないので、普段着にもできます。でも我が家は田舎だから、だれにもメッセージが伝わらないけど、名古屋あたりに着ていくと、だれかわかる人がいるだろうなあ。