タクシー
تاكي
(タークスィー)
観光客が市内を移動する手段としては、もっとも便利で使用頻度が高いのがタクシーでしょう。
アンマンでは黄色く塗られ、屋根の上にサインをつけたタクシーが町じゅうを流しており、運賃も市内なら0.5~2JD程度と日本の乗り物とは比較にならないほど安いです。
アンマンのムジャンマ・ジャヌーブで客待ちするタクシー運転手たち
タクシーの止め方
写真のような黄色くて、ドアのところに文字が書いてある乗用車がタクシーです。道端で流しのタクシーを止める場合は、タクシーが来たら腕を車道に突き出します。このとき、運転手の目を見て「乗りたい」という意思を伝えることが重要です。日本のような空車ランプはありませんから、ひょっとしたら小柄な人がすでに乗車しているかもしれません。そんな場合は運転手がなにがしかの合図をしながら通過します。空車でも、運転手が食事したいとか、誰かに呼ばれているとかいう場合は通り過ぎてしまいます。
乗り込んだら
車が止まったら、一般的に男性は前、女性は後ろの席に乗り込みます。ヨルダンでは、あくせく行動している人はほとんどいないので、ゆったり乗り込まないと、中東初心者の観光客と見られてぼったくられたりする原因になります。運転手の目を見て、「アッサラーム・アレイコム」くらいのあいさつを交わしてから行き先を告げましょう。日本のように相手を見もせず、行き先だけ言い放つのはじつに無礼なことと見られます。「アッサラーム・アレイコム」は直訳すれば「あなたのうえに平安あれ」という程度の意味ですが、イスラム教的な言い回しがイヤという人は「マルハバ」くらいにするといいでしょう。政教分離の国トルコでよく使われる「メルハバ」と同じで、こちらは宗教色が薄い言い方です。
行き先の伝え方
行き先はたいてい、まず地区名や交差点名を伝えておいて、近づいてからは客自身であっちこっちと道を指示するのが一般的です。ムジャンマ(バスターミナル)や大きなホテルやショッピングセンター、観光地でしたら名前だけで連れていってくれますが、小さな会社や家の住所を言ってもまずわかりません。アンマン市内の全ての通りには名前がついているのですが、運転手に告げて通じるのはやはりそれなりの大きな通りでしかありません。
行き先はそのまま「◯◯ホテル」、「ムジャンマ◯◯」「ダウンタウン」「スウェイフィーエ」などと告げるだけで良いです。エジプトみたいに行き先に続いて「インシャッラー」などと言おうものなら、運転手がちょっとびっくりします。ヨルダンでは運転手の方が「インシャッラー」と言うことはありますが、行き先を告げた客はあまり言わないのです。ちなみに「インシャッラー」は直訳すると「神(アッラー)の思し召しの通りに」といったぐあいですが、要するに「かしこまりました」といっているのと同じです。
メーターのボタンを押すのを確認しよう
アンマン市内では全てのタクシーにメーターが付いており、たいていは運転席と助手席の間の下の方にあって、よく見れば後部座席からも確認できるようになっています。運転手がボタンを押して、料金をリセットするのを必ず確認しましょう。リセットしないと、それまでに走った分の料金からスタートしてしまいます。2009年夏時点で、リセット後は「250」という数字が赤色で表示されます。これは250フィルスを意味しており、走り出すと猛烈な勢いで10づつ加算されて行きます。降車時に例えば1350とあれば、1.35JD、つまり1ディナールと350フィルスということになります。
観光客と見るやこのメーターをリセットしない運転手がいます。あいさつの後や行き先を告げた後で、ちらっとメーターを見るそぶりをすると、ちゃんと押す人が多いです。
それでも押さずに、「壊れている」と言ったり、あるいは行き先を聞くや否や5JDだと料金を言ってくる運転手がいます。そういうタクシーは、交渉したり口論したりすることなく、さっさと見限って別の車に乗り換えた方が時間と労力を省け、相手にも反省を促せます。1分程度走ったところで下車したとしても、運賃を払う必要はありません。
行き先を指示する4つの言葉
行き先を告げてもタクシードライバーが知らない場合は、近くまで行ってもらってからあっちこっちと客が指示することになります。ドライバーが英語を知らなくても、次のアラビア語を知っていればなんとかなります。
1 ドゥグリ (まっすぐ進んで)
2 レフ ヤミーン (右へ曲がって)
3 レフ シマール (左へ曲がって)
4 ヤーティクルアーフィエ (ごくろうさん、ここで停まって)
簡単ですね。ちなみにこれらの言葉はヨルダン方言ですが、シリアでもほぼ通じます。
意外と陽気でまじめな運転手も多い。
夜の割増し運賃
日本にも夜間割増しがありますが、ヨルダンではメーターはそのままで、ある程度追加して払うか、昼ならメーターで行く距離でも先に交渉して払う方法になります。おおむね深夜0時前後から加算して払うのがマナーです。
メーターに加算する場合は、最低0.5JD~を加えて、1.35JDなら2JDといったぐあいに切りのいい金額で払います。
交渉の場合は1JD以上加えるのが一般的です。私はよくメーター1.5JDの区間を深夜に乗りましたが、最高額で4JD(でもこれは数回)、もっとも多いのが3JD、ごくまれに2JDといったところでした。
空車のタクシーがつかまりにくい
アンマン市内の道端でタクシー待ちすればわかりますが、流しているタクシーの台数たるやかなりのものです。夜中でも大きな通りに出ればいくらでもつかまえられます。ただ、以下の場合は需要の方が多くなってつかまえにくいことがあります。
1 ラマダン(断食)中の日没前から日没後30分程度
ヨルダン国民に占めるイスラム教徒の率は90%以上、タクシードライバーに至ってはほぼ100%がイスラム教徒ですので、ヒジュラ暦9月は、多くのドライバーが断食をしています。彼らは夜明けの1時間前くらいに食事をしてから一切の飲食、さらには喫煙もしていないので、この時間帯は待ちに待ったお食事タイム。仕事をしている場合ではありません。まあ、イスラム教徒の大半が食事中ですから、タクシーが道路から消えても、異教徒以外なんの支障もありません。移動はあきらめて、安食堂なんかで一緒に飯を食べてみましょう。快く招いてくれるはずです。
2 朝8時前後のダウンタウン北行き
一般のヨルダン人サラリーマンや公務員は朝8時が始業時刻です。通勤でタクシーも空車が減り、ダウンタウンでは特にキング・ファイサル通りの北行(アブダリやジャバル・アンマンに向かう車線)は空車をつかまえにくくなります。どうしても乗りたい人は、南行きならわりと空車が来ますので、それを捕まえてアル・フセイン・モスク前でぐるっとまわってもらいましょう。
3 昼3~5時頃のダウンタウン
この時間は仕事帰りの男性や、買い物に来た主婦が帰宅する時間で、買った荷物を持っているので短距離でもタクシーに乗ろうとする人が多く、空車が非常に見つけにくくなります。特に暑い夏はみんな歩きたくないのでなかなか拾えません。アル・フセイン・モスク東側の信号(Police Hatと書かれた交番がある)の辺りが、一番空車を拾いやすいです。
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