◇かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける◇
夢の舞台を目指して、初めてのクイーン戦予選に臨む千早。
勝負の行方やいかに…!?
さらに、新派にも太一派にもたまらない胸きゅんシーンも!
以下、ネタバレ有感想です。
◆ユーミン
前巻に引き続き、クイーン戦東日本予選。
千早と前クイーン・ユーミンこと山本由美の対戦です。
前クイーンとの対戦に意気揚々と臨む千早。
しかし一方のユーミンは、昨年の防衛戦で詩暢ちゃんに圧倒的な差を見せつけられて敗れ、恩師・北野先生の重い期待に応えられない自分に疲れてしまっていました。
「イヤになる なんなのそんなキラキラした目して… 」
「ああもうなんで私… また予選になんて出てるんだろう…」
「なんなの 若宮詩暢といいこの子といい 勢いがあるのが当然って顔して!そんなものもうとっくにないですよ!」
ユーミンのネガティブ語録がすごい!
この疲れ具合、とても24歳とは思えません。笑
千早の勢いを前に、急速に心が冷めていくユーミン。
一時は千早の圧勝か?とも思いましたが、ユーミンから前クイーンのプライドが全くなくなっていたわけではありませんでした。
長年の経験から、まだやれるのではと思えたこと。
北野先生の言葉の本来の意味を理解し、また挑戦者になれるんだと思えたこと。
“前クイーン”という肩書に縛られ続けていたユーミンが、小さなきっかけを積み重ねてついに自分のかるたを取り戻しました。
“自陣の一字決まりなんて速くて当然なんだけど”はユーミンのプライドが感じられてめちゃくちゃかっこよかったです。
地味だけど強烈に印象に残る不思議なキャラクターのユーミンですが、そんなリアルな人間臭さが一つの魅力になっているのかなぁと思います。
結局そのまま巻き返されて敗退してしまった千早のクイーン戦予選。
敗者の一年が始まる…という重みのある言葉で締めくくられ、物語が新たなステージに入ることを予感させます。
◆千早が好きだ
ユーミンに負けたショックでクローゼットに立てこもってしまう千早。
出てくるよう説得する太一ですが、“おれの言葉じゃなんにも届かない気がする。新じゃないとダメな気がする”と弱気モード。
しかし、最終的に千早が出てきたのは、他でもない太一のためでした。
きっかけは、「原田先生と須藤さんの試合を応援しに行こう」という太一の言葉。
それを聞いた千早は突然クローゼットから飛び出し、「応援じゃなくて見てないと」と言います。
千早は太一がA級に昇格することを見据えて、いずれ太一のライバルになるA級選手たちの試合を見せるために出てきたんですね。
さっきまで落ち込んでいたくせに、「ごめん、行こう 太一」と太一の手を強引に引く千早。
そんな千早の姿を見て、太一は改めて自分の気持ちを自覚します。
そんなのみんな知ってるわ!と読者の誰もが突っ込んだ瞬間でしたが。笑
これまでの太一の千早への想いは、小学生時代の初恋の延長線上のようなものでした。
しかし、いつもネガティブに考えてしまう自分に前に進む原動力をくれる千早のまっすぐさに触れ、今の千早にもう一度恋をしたと言えるのかもしれません。
“ああ ダメだ おれ 千早が好きだ”
それが何故“ダメだ”なのか?と考えてみましたが
今のところ新のことばかり見ている千早を好きになっても、幸せな結末が待っている確証なんて全くない
それでも好きにならずにはいられなかった
ということなのかなぁと解釈。
恋愛に関しては主役がまだあんぽんたんなため、もはや太一がヒロインのようです。笑
◆新の変化
一方、名人戦西日本予選に挑んだ新は惜しくもベスト8で敗退。
かるたから離れていた日々を後悔する新。
“離れたらあかんかった。一日でも かるたを手放したらあかんかった”
改めてかるたに懸けようと決意した清々しい表情が素敵です。
そんな後悔を身をもって感じた新は、かるたから離れつつある兄弟子の村尾さんに戻ってきて欲しい一心で、村尾さん宅まで説得に乗り込みます。
“らしくない”、“おせっかい”と言われても。
新はクールであまり人の心に踏み込まないイメージでしたが、千早や太一に動かされて変わってきているんですね。
さりげなく中から見てる村尾さんが憎い。
新といえば、由宇ちゃんとの関係が気になるところ。
周りの女の子たちが新の様子がおかしい理由を由宇ちゃんに聞くあたり、恋愛とかは抜きにした公認の幼馴染というところでしょうか。
どさくさに紛れて「好きな人いるんかの」とか聞いてる子がいるあたり、新の隠れた人気ぶりが伺えます。笑
◆師弟の絆
8巻では、それぞれの師弟の絆が印象的でした。
【北野先生&ユーミン】
ユーミンや肉まんくんに過度のプレッシャーを与える北野先生は一見悪者のようにも見えがちですが、ユーミンは北野先生の言動に呆れながらも何だかんだ慕ってますよね。
クイーン戦に敗れたユーミンの「もう一度ここに来たい。ご指導お願いします」には感動!
【原田先生&千早】
ユーミン戦で敗れた千早に対して、技術的なことには何も触れず、「どんなに悔しくても礼を大事にしなさい」とだけ言ったのが印象的でした。
【原田先生&坪口さん】
名人戦東西挑戦者決定戦で敗れた坪口さん。
さっきまで飄々としていたのに、原田先生の姿を見た瞬間泣き崩れる…これは本当に泣けます!
二人の絆の強さが感じられる名シーンです。
余談ですが、坪口さんって地味なのになんか味があって好きなんですよねぇ。
◆かささぎ
出ました、新派にはたまらない胸きゅん名シーン、通称“かささぎ電話”!
クラスのクリスマス会の最中、千早は「ここにいたらいいのにって思う人はもう家族なんだって」という机くんの言葉に新を思い浮かべ、初めて新の携帯に電話をします。
新の声が聞こえた嬉しさに、暫く言葉が見つからない千早。
やっと出てきた言葉は「携帯電話ってすごいねえ~、かささぎみたいだね~」
そして「声聞けてよかった!またね!」と一方的に電話を切る強引さ。
かささぎとは、織姫と彦星が天の川で逢うのを翼を橋にして導いた鳥。
イブの夜に電話して、自分たちを織姫と彦星に例えるって、なんてロマンチックなんだ!
電話中の表情といい、この時の千早は乙女でかわいいなぁと思いました。
かなりの大胆発言だと思うのですが、新の反応は「かささぎ?」
(まぁそりゃ急に言われたらポカーンてなるよね)
このクールさ、太一にも分けてやりたいくらいです。
◆しのぶれど
千早と新が和歌とリンクさせてドラマチックに描かれているのに対し、太一はまだ切ない恋の歌ばかり。
他校の男子に告白された千早に、「着信拒否にしといたから 明日からは早起きしておれと同じ電車に乗れ」と言う太一。
それを見たかなちゃんは、「しのぶれど」と「こひすてふ 」、隠しきれない忍ぶ恋を歌った2首に太一の想いを重ね合わせます。
かなちゃんの和歌に例えた心理分析は絶妙ですよね。
あんぽんたんばかりの瑞沢かるた部に恋の訪れはやってくるのでしょうか。笑
◆詩暢ちゃんのルーツ
さて、年が明け、名人・クイーン戦の季節がやってきました。
今年のカードは周防名人VS武村さん、詩暢ちゃんVSユーミン。
久々登場の詩暢ちゃんは謎の激太り!
なぜ激太りさせる必要があったのか?ただのネタなのか、それとも何か意味があるのか…謎です。
ここで初めて詩暢ちゃんの過去が描かれます。
札一枚一枚と強く繋がっている詩暢ちゃんのルーツ。
詩暢ちゃんは、他人からの愛情に恵まれない不遇な幼少時代を過ごしていました。
両親の離婚により、祖母の家に居候することになった詩暢ちゃん。
躾に厳しい府議会議員の祖母と、体裁ばかり気にする母親。
友達のいない学校生活。
そんな周囲の人たちから十分な愛情を注がれることのない環境の中で、詩暢ちゃんを救ったのがかるただったのです。
“私がかるたを好きなように、かるたも私を好きなんや”
詩暢ちゃんにとってはかるただけが家族であり友達。
唯一愛情を感じられる存在だったんですね。
詩暢ちゃんと札との関係性は詩暢ちゃんのプレースタイルに顕著に表れています。
試合中、取り逃した札には“ごめん”と謝り、“こんなんやってたら嫌われてまう”と思ってしまう。
そのかるたへの執着はちょっと異常なほど。
詩暢ちゃんにとってはかるたで強くなることがかるたと繋がる手段で、かるたがなくなったら自分には何も残らない、と思っているようです。
しかし、そんな詩暢ちゃんですが、全く救いがないわけではなさそうです。
それは、おばあちゃんの存在。
小さい頃かるたに興味を持った詩暢ちゃんをかるた会に連れて行ってくれたり、本当は孫想いな人なのではないかというのが感じられます。
一見ただ躾に厳しいだけの人のように見えるのは、おそらく詩暢ちゃんのことを想うがゆえの厳しさ。
クイーン戦で着ていた超一流の着物についても同様です。
詩暢ちゃんは“着物の自慢したかったんかな”と言っていましたが、クイーン戦という大舞台に臨む孫に、その地位に相応しい装いをさせたいという想いからなのではないでしょうか。
近い将来、詩暢ちゃんが自分のことを大切に想ってくれている人がいるということに気付き、孤独から救われる日が来ることを願います。
◆名人・クイーン戦
瑞沢かるた部御一行は真島家にて名人・クイーン戦を観戦。
ここでは千早が太一のことを珍しく、というか初めて?男として認識したようです。
「おれの部屋行く?」(誘ってるw)と言う太一に、以前「男の部屋なんて気安く入るもんじゃない」と諭されたことを思い出しドキッとする千早。
ついに太一も報われる日が来たか!?と思いきや、ドキドキがミセスプレッシャーと両方にかかってるのが憎い。笑
太一は太一で「なんか 千早が部屋にいる…」と。
(千早もベッドに座るのはいかんよね。笑)
青春だなぁ。笑
そして、さりげなく太一の変化が描かれています。
練習したがっている千早を見て付き合ってやるか、と考えた太一ですが、以前の千早の“来年はA級でみんなライバルでしょ!?”という言葉を思い出し、視線をテレビに戻します。
これまでの太一は、かるたをするのは千早のため、という他人(千早)本位なところがありました。
かるたを始めたのは千早と新への対抗心からだし、かるた部を作ったのも千早のクイーンになるという夢を応援するため。
だから、千早のお願いを無視するなんて今までの太一にはありえないこと。
徐々に太一が、自分自身が強くなることを意識しはじめているのが分かります。
そんな太一をはじめ日本全国のカルター男子たちが注目するのは、今日しか見られないという周防久志の名人戦。
なんかもう、オーラがやばいですね。
ここで初めて周防名人のプレースタイルが明らかになります。
周防名人は「一字決まりは28枚」という超人的な聴力の持ち主。
千早は、新は、太一は、そんな周防名人から何かを得ることができるのでしょうか。
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ということで、かるたも恋も熱い8巻でした!
かるた界最高峰の戦いに触発されたそれぞれの今後が気になるところです。
9巻感想に続きます!
