◇こぬ人を まつほの浦の夕なぎに 焼くやもしほの 身もこがれつつ◇
7巻では待ちに待った新の登場!
気になる伏線や印象的な名シーンも多数です。
以下、ネタバレ有感想です。
◆めぐりあいて
7巻といえばまずは何といっても、かるたの世界に戻ってきた新と千早の待ちに待った再会のシーン。
太一の応援のため、吉野会大会の会場に遅れて登場した千早。新が大会に出場していることを知ります。
そこから新を見つけるまでの、和歌を絡めた一連の描写が秀逸。
まず読まれたのが「こぬひとを」
これは、新が戻ってくるのをずっと待ち焦がれていた、という千早の気持ちにリンクしてますよね。
次に、千早が新を見つけた瞬間、読まれたのが「めぐりあいて」
この一連の流れ、そして見開き1ページ使った印象的な描写、なんてドラマチックな再会のシーンなんだ!と感動しました。
ちはやふるは和歌とリンクした心理描写が素晴らしい、というのは以前から書いていることですが、これはその中でも最も印象的なシーンの一つです。
こういうのを見せられると、やっぱり千早と新は運命としか思えないんですよね…
◆恋の歌に聞こえるんですか?
かなちゃんに試合会場から強制送還される千早、その帰り道でのこと。
「めぐりあいて」は恋の歌に聞こえるけど本当は幼なじみとの別れの歌。まるで新のことみたい。
そう言った千早に対するかなちゃんのモノローグ。
“恋の歌に聞こえるんですか?”
これ、すごく気になる伏線ですよね。
恋の歌に聞こえる「めぐりあいて」で新を連想する=無意識に恋愛感情を持っている自分と重ね合わせているから。
人の心の機微に敏感なかなちゃんはそう思ったのでしょう。
いつもと違う真剣な表情の千早を見つめるかなちゃんの視線も、何か特別な感情を読み取っているように見えます。
恋の歌に聞こえる。
この伏線がどう転ぶか。
恋の歌に聞こえたけどやっぱり友達の歌だった…ってオチじゃないことを祈ります…(切実)
◆新が来る/新が帰ってきた
一方、複雑な想いの太一。
吉野会大会会場で思いがけず再会した太一と新。
昇級をかけ、覚悟して臨んだはずの太一でしたが、新の言葉に動揺して3回戦であっさり負けてしまいます。
太一にそれほどまでの大きなダメージを与えた言葉、まずは「今日太一はA級で出ると思ってたんや」と言われたこと。
新は太一がさいたま大会で準優勝したことを知っているので、てっきり既に昇級してA級として出場してくるものと思ったのでしょう。
しかし、実際はなかなかA級に上がれず苦戦している太一にとって、この何気ない一言は屈辱的なものだったと思います。
そしてもう一つは、携帯の連絡先を書いたメモを渡して「もし必要やったらそれ千早にも教えて」と言われたこと。
新のことを何よりも恋のライバルとして意識している太一。
千早と新がいつでも連絡を取れる状態になったら、二人の関係が進展しまうのではないかという焦りが生まれるのは仕方のないこと。
しかしながら、太一の新コンプレックスはなかなか深刻なようです。
“新が来る”
かるたのライバルであり恋のライバル(今のところ太一が一方的に意識してるだけですが…)でもある新が戻ってくることに、強烈な焦りを感じています。
複雑な気持ちのまま、新の試合を見る太一。
しかし、新の復帰に涙を流して喜ぶ千早を見て、太一の目にも一筋の涙が。
“いやだと思う気持ちと一緒に おれの中にもやっぱりあるんだ やった 新が帰ってきた”
新の復帰に焦り、恐怖に近い感情すら抱きながらも、同時に涙を流すほど嬉しく思う自分もいる。
ライバルである以前に、やっぱり大切な友達なんですよね。
太一と新の関係はどうしても千早が介在するものという印象が強かったので、太一の中にもちゃんと新を大切に思う気持ちがあることが分かって安心しました。
“新が来る”と“新が帰ってきた”
この二つの台詞を対比させることによって、最後のシーンがより一層感動的になりますよね。
◆離れてるで…
携帯の連絡先を書いたメモを太一に渡し、「もし必要やったらそれ千早にも教えて」と言った新。
別れ際、俺に任されても困る、自分で渡せと突き返そうとした太一でしたが、それに対する新の反応は意外なものでした。
「離れてるで 太一と千早がつきあってたりしても わからんし…」
ここ、個人的に胸きゅんシーンの一つです。笑
普段何考えてるんだか分からない新ですが、意外とちゃんとそういう感覚持ってるんだなぁと。
確かに、新は小学生時代太一が千早に好意を持っていたのを知っているし、二人で連れ立って福井まで来るくらいだからそう勘違いするのも無理はないと思いますが。
「ほーなん?」とか聞くあたり、結構本気で付き合ってると思ってたっぽいですよね。
太一もそんな新の態度に拍子抜けした様子。
自分は新のことを恋のライバルとして一方的に恐れていたのに、当の新は太一と千早が付き合っているのではと思って気を遣ってたわけですから。
でもこの「離れてるで…」を太一はその後もしばらく引きずってるんですよね。その心理がいまいち分析しきれず。
◆名言
7巻には、ちはやふるでも屈指の名言が多数。
まずは駒野先生こと机くん。
勉強から逃げ出した千早に、“今やるべきことから目をそらすのは、逃げではないのか”とメールで冷静にキレる駒野先生。まずは軽いジャブ。
そして、極めつけはあの名言。
「やりたいことを思いっきりやるためには、やりたくないことも思いっきりやんなきゃいけないんだ」!
この言葉、読者の心にもグサッときたはず。笑
確かに、これだけかるたに時間を割いてるのに学年一位をキープしている太一は相当な努力家なんだなぁと思います。
そしてもう一つは、かの有名な太一の名言。
名人戦予選前のA級昇格が叶わなかった太一。
太一の頑張りを誰よりも理解している原田先生は、白波会のルールを破ってまで昇級を持ちかけますが、太一はそんな原田先生の心配を一蹴します。
「先生 おれは A級になるより 逃げないやつになりたい」
太一が少しずつ変わっていこうとしているのが伝わってきます。
決して楽な道を選ばず困難に向かっていこうとする姿、本当にかっこいいです。
短期間で本当に成長しましたよね。
そんな太一を見つめる原田先生の驚嘆の表情がいいですよね。笑
◆かるたが好きだ
第38首では、千早の言葉「かるたが好きだ」が2回登場します。
まず一つは、「私 かるたが好きだ 新をもう一度 連れてきてくれた」。
この言葉、結構深い意味があるとと思うんです。
これまで千早の中では、新のことを「かるたの神様みたい」と言っていたように、新とかるたは切っても切り離せないものという印象がありました。
しかしこの文脈を見ると、新という存在をちゃんと認識できているように感じます。
無意識のうちに、新に対する気持ちが少しずつ変化してきているのかなぁと思いました。
もう一つは、かるた部メンバーといる時の「かるたが好きだ」。
この言葉が出た経緯としては、
・かるた談義に熱が入る太一と肉まんくんを見たこと
・女帝に「クイーンの予選がんばるのよ」と応援されたこと
・机くんの指導のおかげで赤点をまぬがれたこと
が挙げられます。
千早はかるたを通して、新や太一だけではなくたくさんの大切な仲間たちと出会うことができました。
そんな幸せを改めて感じたことで、この言葉が出たのでしょう。
◆周防名人
現クイーン・詩暢ちゃんに続き、満を持しての登場です。
現名人・周防久志。
詩暢ちゃん同様、強烈なインパクトの登場シーンでした。
周防名人、初登場から安定の変人ぶりです。たい焼きギュイーン。笑
しかし、そんな周防名人にも闇の部分が垣間見えます。
詩暢ちゃん同様、天才であるが故の孤独を抱えているんですよね。
「すみません 強い人としか戦いたくないんです…」と言った時の空しい表情。
そして、自分と戦うために他の選手たちが頑張っている様子を見ないとテンションも上がらない、というモチベーションの上がらない状況。
周防名人、詩暢ちゃんについては、村尾さんとユーミンがそれぞれ「周防久志には勝てんよ」「最後に控えてるのは若宮詩暢 勝てない」と言っています。
この二人は本当に圧倒的な強さなんですね。
肩を並べる相手のいない、張り合いのない現状。
この先、千早や新がこの孤高の天才たちを孤独から救い出してくれることに期待です。
そういえば詩暢ちゃんと新、実は旧知の仲だったようですね。
◆村尾さんと新
名人戦西日本予選。
新の兄弟子・村尾さんがまさかの初戦敗退。
村尾さん、深刻な燃え尽き症候群な様子です。
新と村尾さんの関係はこれまで詳しく語られていませんでしたが、第40首のたった2コマの回想から新がどれだけ村尾さんを慕っているのかが伝わってきます。
小さい頃から慕っていた村尾さんがかるたから離れていってしまうことが、新にとってどれだけショックなことか。
ここで重要なのは、新を救ったのが太一からのメールだったということ。
いまだA級に上がれず苦戦している太一ですが、新へのメールに「新もがんばれよ」と打っていたところ、“がんばれじゃねえよ”と思い直し「おれも必ず東日本代表を目指すから 新は西日本代表になれ」と打ち直して送っていたのでした。
少し成長した太一が送ることのできたメールが、遠くで頑張っている仲間がいるんだと新を勇気づけ、折れそうになった心を救った。
この二人も、お互いを高めあえる良い関係を築けているんだなぁと嬉しく思いました。
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いやー、長くなってしまいました…
ちはやふるは見どころが多すぎて、感想を書くのも一苦労です。
頑張りますよ、最新巻まで…
8巻感想に続きます!
