焦げ茶色の4WDのパトカーがあるなんて・・・ | it' my america

焦げ茶色の4WDのパトカーがあるなんて・・・

 続いてデスヴァレーに向かう途中で、痛恨の失態をやらかしてしまった。
「夕陽を撮りたいから、少し急いでくれる?」という、カメラマンK氏のリクエストに応えて、後ろを注意しながらアクセルを踏んだところ、焦げ茶色の4WDのバンが負けじとついてきた。おかしいなと思った瞬間、突然バンの天井が光りだしパトカーがその正体をあらわにしたのだ。

「え~っ、変な色したあんな車種のパトカーがあるなんて反則だよ。ずるいよぉ」
 こんな思いと、免許を取得してわずか2ヶ月で違反キップを切られてしまった落胆。そしてロング・ドライブの疲れがどっと出て、ハンドルを握ったまま警官が来るまでぐったりしていた。
 しかし、後日「そのポーズで待つことが、とても大切なことだ」と教えられ、改めて驚いた。
「もしも、バックミラーで警官が近づくのを見ながら、服の内ポケットから免許証を取り出すとか、ダッシュボードに仕舞ってある免許証を取り出そうと、上半身を傾けでもしようとしたなら、間違いなく拳銃を突きつけられていたよ」と脅された。
 拳銃所持が許されているこの国で、そんな動作をしたら「反抗」のサインになってしまうという。知らなかったでは許されない、こんな重要事項をどうして誰も教えてくれなかったのか、「ギャグにもシャレにならないよ」と思ったものである。
 いずれにしても、スピード違反の事実に変わりはなく、理由はどうあれ「罰金は取材費で落とすことはでき
ない」と、帰国して編集者に告げられて二重のショック。さらには、「免許書き換えのときに、1度も違反していなければ書類の送付だけで更新できるけど、違反した人はDMVまで出頭しなければならないはず」と、
追い討ちをかける情報まで耳に入ってきた。「あ~ぁ」である。
 それでも、デス・ヴァレーの夕陽にはなんとか間に合ったが、宿が取れずにモーテル捜しにひと苦労。日没後に、夕食も取らずに眠気をこらえて140km近く走ることになってしまった。
 翌日、偶然通りかかったレッド・ロック・キャニオンというキャンプ場で、モデルになった。このとき撮影したカットが、雑誌の特集の巻頭写真として見開きサイズいっぱいに使われるとも知らずに、である。
 予期もせず雑誌に載るのは、どこかこそばゆく変な気分がするものだが、それよりもキャンプ場を見晴らせる岩場に寝そべって、ここちよい風に吹かれたときの気分の良さが、忘れられない。

 発売された雑誌のキャプションにも、
「ストレスが身体の芯から溶けてゆくようだ」と書いたが、まさにそんな気分を味わった。
 そしてキャンプ場の入口の料金表に、ペットとしての犬は有料だが、ブラインド・ドッグつまり盲導犬はフリー(無料)とあったことも、おおいに感心したためか印象に残っている。
 ロサンゼルスの近くまでやって来ているのに、時間がなくて誰にも会わずに通り過ぎるしなかい。仕事でき
た辛さといえようか。ロスの北100kmほどのところをかすめて、出発地にもどるべく、ハンドルをさらに北へきった。
 次に紛れこんだのは、ジェームス・ディーン主演の映画『ジャイアント』そのままの世界。地平線の果てま
で石油を掘削する油井が並んでいる、タフトという田舎町である。空気そのものがガソリン臭い町には、石油の歴史を知らせる小さな博物館があった。
「インディアンが、原油の染み込んだ“燃える石”を使っているのに気がついた白人が、本格的に地面を掘っ
たところ高さ35フィートも油が噴出し、砂袋で囲んで広大な油の池ができた」
 当時の新聞記事や、時代を感じさせる掘削器具などが展示してあり、なかなか面白い。結局、カリフォルニア州サンフランシスコを出発して、オレゴン州やネバダ州にも足を踏み入れて、出発地に戻った6泊7日の一筆書きの取材旅行は、走行距離にして3500km。これは、日本列島最北端の稚内から最南端の波照間島までを、走り抜いた計算になる。
 しかも、免許取りたてピカピカの若葉マーク付き運転者にとって、初のドライブ旅行である。そして残念無
念にも、スピード違反という嬉しくない“土産”まで付いてしまった。