RTDに初挑戦 | it' my america

RTDに初挑戦

  独り薄暗いアパートに居ても、何のためにアメリカまで来たのか分からないし、このままでは旅の意味がない。電話帳から路線バスの地図を破り取り、独りで外出する決心をした。目的地は、サンタモニカ。ウエスタン通りのバス停からバスに乗り、ウィルシャー通りで乗り換えチケットをもらって下車し、ウィルシャー通りの西の終点であるサンタモニカを目指す事にした。</p><p> バスを降りて数分も歩くと、南北に果てしなく続く西海岸と、陽を浴びてきらめく太平洋に出た。遙か彼方にある日本から、ここまでやって来た感慨を新たにし、ピア(桟橋)に向かった。その入り口には、ルート66号線終点のアーチが架かっている。シカゴからサンタモニカまで続く、ルート66号線は、アメリカのマザーロード(母なる道)と呼ばれ、車社会の黎明期の大動脈だった道だ。</p><p> 日本でも同名のテレビ映画が放映され、ジョージ・マハリスが歌う「ルート66」もヒットした。2人の若者が、シボレー・コルベット・スティングレーのオープンカーに乗って、この道を旅しながら人との出会いやトラブルなどを重ねながら進んでゆくドラマを、テレビにかじり付きながら観ていただけに、ピア入り口に架かるアーチを見上げながら、鳥肌が立つような感動を覚えたものだ。</p><p> ピアに続いてショッピングモールを散策し、ファーストフードを食べてアメリカらしさを満喫していると、早くも4時を回ってしまった。「外出は日没まで・・」の教えを思い出し、帰り支度をしなければとバス停を捜した。すると、ピコと書かれたバスが来たので、その後を追いかけてバス停を見つけ、次のバスに乗り込んだ。</p><p> バスは最初の内は空いていたが、アフター5を過ぎた頃からどんどん乗り込む人が増えてきて、ついには満員すし詰め状態になってしまった。しかも、乗客は黒人とメキシコ人ばかりで、白人は一人としていない。</p><p>自分も有色人種である事を忘れ、その中にポツンと一人居る心細さ包まれ、言いしれぬ恐怖心さえ湧いてきた。しかもあろう事か、下車したいピコ通りの手前で、「このバスはここが終点だ」と全員降ろされてしまい、次のバスを待つ羽目に陥ってしまった。</p><p> 悪霊が跋扈するトワイライトゾーン(黄昏時)に、独りポツンと立っていると恐怖心が増すばかりなので、後ろを振り返りつつ、早足で歩き始めることにした。しかしこの辺りは、高級住宅街とはほど遠い環境で、200mおきくらいに1人ホームレスがいて、「ギブ ミー マネー」と近寄ってくるので、恐怖心は増すばかり。20分近く歩いたところで、やっと後方にバスが見えて来たので、一目散に走ってバス停にたどり着き、汗をかきかき「ホッ」と胸を撫で下ろしたものだ。