Purple side


「休憩挟んで少し話し合って今日は終わりです、10分休憩してくださーい」


本番通りの流れに沿って行うゲネプロが終わった。


私はドッと押し寄せる疲労を隠しきれずに、ステージに座った。


紫「ん〜……」


橙「俺トイレ〜」


桃「俺も」


青「あ、俺も」


緑「汗拭いてこよっと」


黄「水〜」


ステージに座る私の傍らで、男子メンバー達が各々動き始めた。


真司郎がにっしーに付いて行くの珍しいな〜、なんて思いながらゲネプロ中に気付いた事を思い出していく。


紫「フォーメーション移動と、ステージに戻ってくるタイミングと……」


紫「MCの時間と……」


本番通りに通すのは今日が最後だった為、いつもより気付いたり、注意するべき点が必然的に多くなる。


口に出して一つずつ確認していった。


その間、周りの微妙な違和感に気付かずに時間はすぐ経ってしまった。


「話し合い始めまーす」


あっという間に10分が経ち、立ち上がった時に気付く。


紫「あれ?みんな帰ってきてないのに?」


そう言った直後会場内の照明がオフになり、一つのスポットライトが私に当たった。


紫「……え?」


何かわからず、たじろいでいるとマイクを通して声が伝わった。


橙「Happy Birthday to you おめでとう」


緑「生まれてきてくれてありがとう」


桃「Happy Birthday to you おめでとう」


青「今こうしていられることが」


黄「なにより、なにより」


「本当に嬉しいよ」


アレンジを加えたBirthday songを歌い、ステージ入口からケーキを持った5人が現れた。


紫「ありがと……っ」


すっかり自分の誕生日だということを忘れていた私は、この急なサプライズに驚きと嬉しさを感じ、涙してしまった。


桃「Happy Birthday to you おめでとう。元気でいてくれてありがとう」


黄「Happy Birthday to you おめでとう。想い出をたくさんありがとう」


緑「Happy Birthday to you おめでとう。幸せな気持ちをありがとう」


青「Happy Birthday to you おめでとう。素敵なその笑顔ありがとう」


橙「Happy Birthday to you おめでとう。心の底からありがとう」


「「Happy Birthday to you おめでとう。今こうしていられることが、なにより、なにより。本当に嬉しいよ」


そのまま自分達のソロも含め最後まで歌うと、


「「「「「宇野(ちゃん)、おめでとうー!!」」」」」


そう言って私の周りに集まった。


緑「宇野ちゃん、ロウソクの火消して!!」


リーダーに言われるまま、息を吹きかけて火を消した。


橙「あれ?宇野ちゃん泣いてる?泣いてるでしょ〜?」


青「にっしー煽りがうっさいねん。みちゃこが可哀想やろ」


会場内の照明が元に戻り、私たちもいつも通りに話し始める。


私が泣いている事以外は。


緑「ほら宇野ちゃん泣かないの」


1人落ち着いている直也くんが私の頭に手を置いてポンポンとした後、スタッフの元に行く。


桃「唇ありえねぇわ」


橙「おい、唇ってなんだよ」


黄「タラコ黙れ」


橙「えぇ〜、與〜」


青「キモい」


他の4人はなんのその。


スタッフからフォークを受け取り、戻ってくる直也くんの存在なんかに気付かず茶番を繰り広げる。


その間に直也くんがケーキをすくい取り、私の口に運ぶ。


緑「あの4人放っとこ。宇野ちゃん、はい、あーん」


直也くんから差し出されたフォークに口づけ、ケーキを食べる。


紫「んっ!!美味しい!!」


しかし、その声に気付いたのか4人が私を見る。


緑「あっ、宇野ちゃん生クリーム付いてるよ」


+タイミング悪く直也くんが私の頬に手を伸ばし、指で拭いとった。


青「俺ら置いてケーキ食べるとかいけんやろ!!も〜」


桃「ちょちょっ、俺の分取っとって」


黄「宇野食い意地張りすぎだろ〜」


3人はしょうがないな〜、なんて顔で見つめてきた。


けれど問題は残ったあいつ。


橙「なにあーんなんてしてるの?俺の実彩子がっ、リーダーによって汚される」


紫「いつの間に、にっしーのものになったのよ。勘違いしすぎ」


黄「なぁ?あいつ本当にめんどくさい」


日高くんが私の肩に手を置いて頷く。


桃「そもそもお前は真司郎のものだろ」


橙「えっ、やっぱり?」


青「俺に押し付けんでや!!なんで!!キモい!!」


緑「にっしー相変わらずだね〜」


もはや私の誕生日なんてどこに行った?って感じだけど、いつもと変わらない、なんてこの時間もいいかな……


桃「はいはい、西子やめて〜」


にっしーの暴走に止めに入る秀太と、それを見てゲラゲラ笑うだけの直也くん。


顔を仰け反らせる真司郎と、その真司郎に迫るにっしー。


紫「好きだなぁ……」


その様子を見て不意に言葉が出た。


でも、もうちょっと丁寧なおめでとうを期待してるんだけどなぁ……笑


そう思っていると、日高くんの手がいつの間にか反対側の肩に回っていた。


紫「ん?なんか移動してる……」


黄「移動してねぇよ」


紫「あっ、そう?笑」


顔真っ赤なの気付いてないのかな?普段こんな事しないから照れるなんて面白いね。


黄「うん、まぁ……とりあえず」


そこで声がフェードアウトする。


紫「……ん?なんて?」


聞き取れず耳を日高くんの口元に近付けた。


黄「おめでとう……実彩子」