宇野side
5時、か.
……ほんとは、4時から始める予定だったのに. ばあか、あほ、変態隆弘. 1人リビングのソファーで悪口大会.
宇母「もうそろそろ隆弘くん呼んできたら?」
宇「……でも今バイト中だし、」
宇母「じゃあそのバイト先のところで待ってればいいじゃない?隆弘くんかっこいいんだからガツガツ攻めないと!!」
なんとママも千晃と同様、私と隆弘が結ばれると勘違いしているうちの1人なのです. 隆弘みたいな変態野郎好きになんかならないし.
宇「何言ってるの、私隆弘のこと好きじゃないし」
宇母「はいはい、早く呼んできなさーい」
ママに押し出され、渋々隆弘のバイト場所に向かう. 確か学校の横のカフェって言ってたっけ. なんで隆弘に限ってカフェ店員なんて.
宇「……あ、ここ、か」
意外とカフェは近かった. そこはこじんまりとしながらもすごくお洒落で. 少し入ることに躊躇しながら扉を開けた.
宇「……あ、隆弘…っ」
初めに目にしたのは綺麗なお姉さんが隆弘に笑いかけたあと私の入店に慌てて頭を下げる姿だった. …もしかして
宇「…かの、じょ……」
なのかな、なんて想像. まぁもしそうだとしたら隆弘がキレるまで弄ってやるつもりだけど.
西「実彩子!?なんでいんの!?え?迎えに来てくれたの?!」
?「あら、この子が例の幼馴染?笑」
…隆弘、わたしのこと話したんだ. 本当に彼女だとしたら幼馴染の私のことなんて話したら駄目じゃん. 隆弘のばか.
西「ちょっ……そうですけど…っ、」
?「やばぁー!めちゃかわ!隆弘くん趣味いいねぇ」
_____趣味とは.
顔は綺麗なのに声は可愛い. そんな美人店員さんにまじまじと顔を眺められる. さっきの隆弘の視線を体験しているような感覚. こりゃ…惚れるわ.
?「西島くんもう上がっていいよ?」
カウンターの奥で頭を下げていたもう1人の男の店員さんもかなりのイケメン. 手に持ってる赤ワインが似合う.
このカフェの顔面偏差値どうなってるの. 隆弘も一応かっこ可愛い部類に入るだろうし. 悔しいけどさ.
西「でもまだ4時半……」
?「大丈夫大丈夫!早くラブラブしな〜」
ラブラブって. ……あ、てことは彼女ではないのか.
宇「いやっあのっ私、彼女とかじゃなくて!!」
友「いいの笑 今更だけど初めまして!私後藤友香里だよ、あなたはミサコちゃんとか言ったっけ」
宇「宇野みっ「宇野実彩子です」
被せるように言ってきた隆弘に手を引かれる. 繋がれた手はずっと涼しいところにいたからかひんやりとしていて気持ちがいい.
西「早く行こ、友香里さん、ありがとうございました」
?「おい俺には……っ」
西「直也さんもありがとうございます、では」
呆れたようにカウンターから隆弘を睨むさっきのイケメン店員さんは直也さんと言うらしい. イケメンすぎて顔を見ただけでにやけてしまう. タレ目な真っ直ぐな瞳が私を射抜いて.
……というか…、えっと、隆弘、不機嫌?
宇「直也さん、友香里さん、さよならっ」
ぐいぐいと痛いくらいに手を引っ張られてUターンするようにお店を出ると、無意識に私の口からこぼれ落ちた感想.
宇「…直也さん…って…イケメン…」
西「…………っ」
宇「っあ、なんでもない!」
幼馴染の前でこんな乙女チックなこと言うなんて恥ずかしい.
隆弘のこと変態とか言ってられないじゃんか.
西「…直也さんのどこがいいの」
隆弘がボソッと呟いた言葉は、私の耳にギリギリ届いて. 私はその声のトーンの低さに目を見開いた.
直「実彩子ちゃんが彼氏じゃないって言った後の西島くんのテンションね」
友「ジェットコースターみたいに急降下したよね」
直「入店して来たときの西島くんのラブオーラ半端ねぇ…笑……」
友「お似合いだと思うけど……実彩子ちゃんはまだ好きじゃなさそうだよね」
直「まっ、見守っていきますか!」
友「直也くんウキウキしてんね……」