昔、私の趣味は読書と絵を描くことだった。

 「だった。」と過去形で書いたが、今はその趣味から全く離れてしまった。

 

 「絵を描のが趣味です」というと、「油絵ですか?」と聞かれるが、そんな大層なものではない。

 ジャンルで言うならイラスト?なのかな?・・・まあ、落書き的なものだ。

 

 絵を描くことが特別なことではなく、いつでも何となく描いていた。

 旅行に行ったり外食した時は、食べたものを絵にして、何が入っているとか味の感想を書くのが当たり前のことだった。

 それは、何も考えず当たり前にサラッと書いていたし、当たり前すぎて人に言うことでもなかった。

 

 舌癌になってからは、外食をほとんどしなくなったし、絵を描く気が全く起きない。

 

 それが、先日、ちょっと絵を描きたいと思うことがあった。

 

 テレビ番組で、怖い顔をした俳優が勢ぞろいしてトークを繰り広げていた。

 各人の面白エピソードが紹介された。

 怖い顔をした俳優Hさんが、映画の出演者だったかスタッフさんだったか、みんなでレストランに行ったそうだ。

 Hさんは、お料理の美味しさにすごく満足して、こう言ったそうだ。

 

 「いや~!本当に旨いね!ジブリ料理は!」

 

 正しくはジビエ料理である。

 

 スタジオのみんなは笑った。

 

 MCの松本人志は、「トトロの刺身か?まあ、トロはあるけどな。」と突っ込みを入れた。

 

(注)私の記憶で書いたので、Tverなどを見直したら、セリフに多少の違いはあると思うが、内容的にはこんな感じだった。

 また、私の説明では面白く説明できないが、天才松本人志が言うと、話の間とか声のトーンが面白いし、怖い顔をした俳優の愛らしさが際立つのであった。

 

 ジブリ料理と聞き、私はジブリ料理を描きたくなった。

 ジブリ作品に出てくる登場物たちをお料理にしたらどうなるか。

 

 しかし、松本人志が突っ込みを入れた「トトロの刺身」のような、登場物をそのまま食べるなんて、考えただけで恐ろしい。

 もし、私がトトロの刺身を書いてSNSにでもあげたら、熱狂的な動物愛護団体の方に、私が刺身にされそうだ。(どうか、私も動物の一種であることを思い出してほしい。)

 

 ジブリ料理を書くのは無理と思っていたら、今日テレビのニュースでトトロが食べ物から作られている映像を見た。

 

 それは、京都の福知山の「額田まつり」の名物「つくりもん」というものらしい。

 野菜などで作られた人形がお出迎えする伝統的なものらしい。

 映像の一つに大きな「トトロ」がいた。

 

 大きなトトロなだけで、美味しそうとかそういう感じはないが、4年ぶりにやっと開催されるお祭りに、みんなに愛され知名度の高いトトロが、みんなの愛情によって野菜で作られていた。映像を載せたかったが、ニュースが新しいのか、まだネット上には無かった。

 

 

 

 怖い顔の人の行動が可愛らしかったりすると、そのギャップが面白い。

 

 以前、職場にすごく怖い外見の人が転勤してきた。

 体形は、少し肉付きが良くスキンヘッド、眉毛が無く、ダブルのスーツにサングラス。

 みんなが顔を見合わせ震えあがり「怖い~~。」とひそひそ言っていた。

 ある日、その人が休んだ。

 その人の隣に座る、もう仲良くなり打ち解けていた若い女性が教えてくれた。

 「○○さんは、今日奥さんとディズニーランドに行くそうです。」

 「え?ディズニーランド?」

 全く真逆の世界の人間に見えるその怖い顔の人が?

 そして追い打ちをかけるように

 「山崎パンの懸賞でディズニーランドのペアチケットが当たったそうです。」

 

 「えええ~~~~!!!!」

 あれ、当たる人いるの?

 山崎パンの懸賞と、おかめ納豆の懸賞だけは、絶対当たらない、ただ切手代を損して終わるものなんじゃないの~~??

 

 ・・・てか、あの怖い顔の人、山崎パン食べるの~~???

 

 そして、シールまで集めるの~~??

 

 んで、今頃、ねずみランドで、ミッキーのカチューシャとか頭に乗せているかもしれない、いや、ミニーマウスか?

 

 もはや、ギャップしかない。

 

 その後、その怖い顔の人は心優しい、自分の顔が怖いことを悲しんでいる人だと知るのでした。

 

 言いたいことからちょっと道がそれたが、私の趣味の話に戻る。

 

 読書も趣味だった。

 

 きっかけは、小学校1年生の時に、姉が学校の図書室に連れていってくれた。

 ここにある本は、どれでも好きなものを借りられると教えてくれた。

 私は、本を選ぶのが楽しかった。

 まだ、知識も先入観もない子どもは、本のタイトルと本の表紙や絵で選ぶ。

 ためになるとか、人に勧めるとか、そういうものは無くて、読みたいから読んでいた。

 それが、本当の本を読む楽しさだと思う。

 

 今は、評判の良い本とか話題の本とか好きな作者で選んでしまう。

 

 じゃない。

 

 今は本を読みたい気がしない。

 

 絵も描く気がしない。

 

 小学2年生頃から少女漫画をこっそり描いていた。

 学校から帰るとすぐ机に向かい漫画を描いていた。

 少女漫画を読むのも大好きで、読む目線がコマ割りをこうすると読みやすいとか、登場人物をこう描くと感情が表れやすいとか、漫画を描く人目線のマニアックな見方をしていた。

 

 中学生になるとイラストに興味を持ち、綺麗なカードを作ったりした。

 

 今は、絵を描く気分じゃない。

 

 

 そのうち、いつか絵を描きたい。

 

 のどかな田園風景をやる気がない人の絵のように、時間をかけず、水彩絵の具で、きれいな色で色の組み合わせも好きな感じで、自分で自画自賛するような絵を描きたい。