今の骨髄炎の状況について説明を受けた。

 歯と顎のレントゲンとCTの画像と放射線の照射位置と量を示した画像と重ね合わせての説明だった。

 

 今、痛みがひどい場所は歯ではなく顎の骨で、その部分の歯は放射線治療が始まる前に抜いた。中で悪くなっている歯を抜いたのだった。

 

 その部分の画像は歯の根の抜けた形がそのまま残っている。普通は抜歯した後、骨が修復され根の部分が埋まるらしい。

 

 抜歯して3年9か月くらい経つが、骨の再生機能が働いていない様子である。

 

 

 骨は1年から4年の周期で作り直されると言うが、放射線を浴びた部分も作り直されるのですか?と以前他の先生に質問したら、放射線治療を受けた場所が新しい骨になることはないと言われたことがあった。

 目の前の画像を見て、本当だった、と思った。

 

 大学病院の先生は、骨髄炎ではあるが、口腔内のケアがよくできている。

 こんなに悪くなっていないのはすごいと褒めてくれた。

 

 私としては、他人に見せられないひどい口の中なのだが、お医者さんに褒めてもらうと、小さな努力でもこれからも頑張って続けていこう!!と明るい気持ちになった。

 

 先生はいつも放射線治療の色々な後遺症については、「あきらめるしかないんです。」というようなことを言う。

 

 その言葉しか返ってこないことに、私も最初からあきらめがついている。

 

 でも、今回は「よくがんばっている。」と褒めてくれて嬉しかった。

 

 先生は「痛みは神様からの贈り物です。病気に負けていたら痛みも何もなかったんです。痛みは一生続きますが、付き合っていくしかありません。」と言った。

 

 抗生剤の化膿止めを飲み、しばらく様子を見て、また炎症が始まったら抗生剤を飲むを繰り返し、だましだまし痛みを抑えていくしかない。

 

 

 先生に言われた時は納得できる。

 

 その気持ちは日々の状況で変わる。

 先生の言葉は、しょせん痛みを知らない人の言葉じゃないの、と思う日もある。

 

 とりあえず、現状維持のためにがんばろう。

 

 骨髄炎が悪くなると、顎にニキビのようなものがたくさんできて、そこから膿が流れ出すという話だった。

 そうなったら顎の手術をするそうだ。

 

 

 今、私が痛みを特に感じるのは左側の下顎。

 舌を半分切除したのは右側であるが、首の両側のリンパ節の癌は左側の方がかなり大きかった。

 舌の手術と同時に両側頸部の郭清をした。

 両頸部のリンパ節の手術はブルドーザーで土をすくうように、ザーっと手術すると、手術前に説明を受けた。

 

 「ブルドーザーで土をすくうように?

 広大なじゃがいも畑の芋ほり風景が目に浮かぶ。

 もっと丁寧な手術ができないのだろうか。

 私が皇室の人だったり、経済界の大物とか、社会的に地位の高い人間だったらもっとちゃんと手術してくれるのだろうか。

 平民界の中でも小物な上に、文句も言わなそうな人間だから、こんな雑な手術なのかな。」と思った。

 

(こんな罰当たりなことを言って、戦時中だったら牢屋に入れられるかもしれない。宮内庁の人の耳に入らないよね。)

 

 そのザーっと芋ほりみたいな雑だと思われる手術の後、再発予防のための化学放射線治療をシスプラチン2回、60Gyで行った。

 それから1ヶ月も経たない日に受けたPET CTで、左側の首に巨大ピカピカのまぶしすぎる光を見た時は、「今までの治療は何?」とわけがわからなかった。

 そして、すぐにオプジーボの治療が始まった。

 

 先生いわく、短期間で受けられる全ての治療を受けた、のである。

 

 もしもオプジーボの効果が現れず、まだ左首に大きな癌がある状態だったら、骨髄炎の痛みと癌の苦しみで大変なことになっていたかもしれない。(場所が近いし)

 

 先生に「現状維持が大事」と言われ、自分に良さそうなことは取り入れていこうと思った。

 

 一日の中で、心にダメージを与えそうなことに出くわした時は、これは自分にとっては小さなくだらない問題で、気にするほどのことでもない!!と思うことにした。

 そうすると、世間は小さなくだらないことだらけだ。

 自分にいいことを大切にやっていこう。

 

 

 将来、こうなってほしいなと思うことがある。

 

 それは、私が受けて効果が見られたオプジーボについて、研究が進んで、効果が現れそうな人を治療前に予測できて、治療の時間的ロスなどが減らせるようになって、効率的に治療が進むようになることだ。

 

 私がオプジーボを投与していた時、CTやMRIを何度撮っても、すっと効果が見られなかった。

 

 毎回、「バカだな。期待なんかしても無駄なのに。」と思って夜泣いては、「どんなに祈っても無駄なのだ。言われた結果を受け入れるだけなのだ。」と言い聞かせても、次の検査の発表前も心のどこかで期待してしまい、また夜泣いていた。

 

 「治らなくてもいいから、1回だけでもいいから希望を持ってみたい。1回でいいから。」と思っていた。

 

 

 

 ある日、まさかの、ピカピカが消えるという今でも信じられないことがおきた。

 

 みんながすごくすごく喜んでくれた。

 

 

 

 私の治療内容も研究に生かされて、より効果が現れる治療法ができたら嬉しい。

 

 一人でも効果がある人が増えて、「1回でも治療に希望が持てた」患者さんが増えたらいいなと思う。

 

 いつも勝手に心の中でそんな妄想をしていたが、今日はブログに書いてしまった。

 

 そして、こんなことを書いた途端に、また癌が現れるかもしれない。