今年も人間ドックに行った。

 

 わが職場では、人間ドックを受けろとうるさい。

 

 自己負担で受診する。(若干の補助はある)

 

 費用は、1万円以下の安いものから8万円くらいのものもある。

 

 今年は、初の胃カメラに挑戦するつもりで予約を取っていたが、当日まさかの却下であった。

 

 舌癌の手術、両頸部の手術、顎の骨の痛みが却下の理由であった。

 

 胃カメラ却下の代わりに胃のレントゲン検査を受けたのだが、舌癌患者にとって注意しなければならないことがあったので、ブログに書くことにした。

 

 胃部レントゲンとは、粉末顆粒の発泡剤を飲み、バリウムというドロッとした液体を飲み、動く台に寝転び、技師に指示されるとおりに体の向きを右や左に動かしたり、仰向けになったりうつぶせになったりと患者自身が動き、色々な方向から胃をレントゲンで撮影する検査である。

 

 私は、毎年受けていて、自分で言うのもなんだが、優秀な動きのいい患者のつもりだった・・・のだが、舌癌の手術により、できないことが増えてしまったのを今回感じた。

 

 今回の胃部レントゲン検査の担当は、技師ではなく年配の医師のように見えた。白衣を着ていたし、険しい顔をして貫禄があった。

 

 細身の私をジロッと見て、「こいつバリウム飲めんのかよ~~。胃が小さそうだな。」と思ったかはわからないが、圧がすごかった。

 

 「この発泡剤を一気に飲んで!一気に!」と手渡される。

 

 粉末は水に溶かさないと飲めないと思ったが、医師っぽい人の圧がすごく、舌癌で・・・と説明する間もない、とにかく、あおりにあおってくる感じであった。

 

 粉末を口に入れるが案の定、右のほっぺの内側にたまった。

 

 「このコップのバリウムを一気に飲んで!!ゲップしないで!!一気に!!ぐいいーーー!!ぐいいーーー!!っと!!」

 

 ぐいー!ができないんです、と説明したかったが、がんばって自分なりに思いっきり飲む。

 

 ちょびいい~~~!!ちょびいい~~~!!

 

 「いや!!そうじゃない!!ぐいいーーー!!ぐいいーーー!!だ!!」

 

 え??キレてる??

 

 もっとキレられたら困るので、超高速ちょびちょび!!で飲み干した。

 

 「はい!台が倒れるよ!!んじゃ、右の方向に体を向けて、はい!そのまま1回転して!!」

 

 1回転して頭痛。

 

 実は首がデリケートで、美容院のシャンプーでもひどいめまいで一日ぐったりするほどなのだ。

 

 でも、ここは、バリウム検査優等生のプライドにかけて、指示役のこの男性の理想通りの動きをしなければならない。

 

 

 この指示役の男性の普段のストレスも理解できる。

 

 バリウム検査の患者の中では、優秀な私はそんなどんくさいことをしないが、きっと患者の多くは、右を向けと言ったのに反対方向を向いたり、仰向けとうつ伏せの違いがわからなかったり、手すりにつかまって落ちないようにするのに、太り過ぎて自分の体重に勝てなかったり、もしかして、「俺が動くんじゃなくて、お前や機械が動け!!」と逆ギレする患者がいるかもしれない。

 

 私の思いやりが伝わったのか、それとも私の優秀な動きに感心したのか、指示役の男性は「もう少しで終わるからね。」と声が穏やかになってきた。

 

 「はい!右側の腰を上げて、ええと、もう少し後ろの方、足を少し前に」

 

 このポーズ、「とにかく明るい安村」ことトニーにあげたい。

 「安心してくださ!はいてます!!」のパンツコレクションに入れてほしい。

 

 怒涛のバリウム検査は終わった。

 

 最初の発泡剤の一気飲みとバリウムを飲むのがしんどかった。

 

 それよりあのおじさんが怖かった。竹刀をバシバシ打っていたような残像さえ勝手に残っている。竹刀などなかったのだが。

 

 あんなにキレる??もともとそういう人なのか?

 

 

 それにひきかえ、マンモグラフィの技師の女性は優しかった。

 

 マンモグラフィとは、乳癌の検査で板に乳房を挟みレントゲン撮影をする検査である。

 

 私の貧乳に(頻尿じゃないよ)文句を言うことなく、肉を集めに集めて、何とか体裁を整え撮影してくれた。

 

 痛かった。左右から挟むのと上下から挟むので4方向で、痛かった。

 

 痛かったけど、技師さんは優しかった。

 

 クリームをサンドしたスイーツに例えると、ゴーフルのような薄さにしかならなかったが(いや、ゴーフルは言い過ぎか、せめてビスコと言っておこう)、キレることなく肉集めをしてくれた。

 

 

 検査は11時台に終わったが、午後1時から医師による本日結果が出た検査についての説明があった。

 

 私は、目障りかなと思いながらも早めに待合室で待っていた。

 

 12時30分に女性の医師が現れ、「早いけど説明します。」と部屋に通された。

 

 丁寧な説明だった。

 

 そして、マンモグラフィや触診では異常なしだったが、胸のエコーで右側の胸に疑わしいものがあったと説明があった。

 

 私は、自分の母が乳癌で40代に他界したことを伝えた。

 

 先生は怪しい影の辺りを触診で検査し、大丈夫です、こういう怪しいものはよく見られるもので、心配はいらないと言ってくれた。

 ついでに、先生の個人的なお話もしてくれた。こんな1患者にしか過ぎない私に、良い話をしてくれた。

 

 

 

 最初、医師に「胸に疑わしいものが」と言われた瞬間、自分も母と同じ病気になり、同じような道をたどるのだろうか、とあきらめに近い感情がわいたが、何ともなくて良かった。

 

 去年は、胆管拡張症と診断されたが、今回は大丈夫と言われた。

 

 便の検査等は後日結果が郵送される。

 

 今年の人間ドックも無事終わった。

 

 来年の胃の検査をどうするかは、また後で考えよう。確か、去年もバリウムを飲むの今年でやめようと思ったのだが、すっかり忘れていた。今回の検査で、発泡剤を飲んだ時に「何かデジャブ」と去年も飲むのに苦労したことを思い出したのだ。

 

 来年は、私と私の周り、どうなっているのかな。