前回のブログを最終回にしようかとひそかに思っていたが、病院に行くたびに新たな発見があり、またブログを書いている。

 

 と、その前に、予想通り転勤した。

 転勤と言っても家から通える範囲での転勤である。

 以前から希望していた「超忙しい」ところに異動した。

 

 そこは、効率的に仕事をするためにできたところで、仕事のスピード・正確さが重視される。

 着任して、周囲の仕事の速さと人々の仕事中の集中力にうっとりしてしまった。

 

 しかし、自分の担当する仕事は、今まで自分が関わってきた仕事ではない未知の世界の仕事であった。しかも、周囲のバリバリ働く人々も私が担当する仕事の知識が無い。

 つまり、私が仕事でわからない事があっても教えてくれる人が周囲にはいない。

 

 1枚のプリントを渡され、引継ぎを受けたが、それだけですぐに仕事をしていくのは怖い。

 慎重に仕事を進めるが、不思議なもので、そういう時に限ってレアな問題だらけの変な仕事にぶち当たったりするものである。

 順調に進まず、苦手意識を持ってしまう。

 

 覚えたつもりが、すぐに手が止まる。考える。手順書を読む。前任者に聞きに行く。(前任者は大きなフロアの遠くにいる。)

 聞くと嫌な顔をされる。(ような気がする。)

 

 萎縮する私。

 

 それに反して周囲は、どんどん仕事を終えていく。

 「私の仕事、終わったので、何かの仕事、手伝いますよ~!」と周囲は声を掛け合っているが、私の仕事は誰も知識がないので誰も手伝えない。

 

 すごく劣等感というか、落ちこぼれ感というか、置いてきぼり感が、半端ない。

 

 私はまたメンタルがおかしくならないよう、とにかく栄養をしっかりとるほかに、「マカ発酵黒にんにく黒酢」というサプリやら、やる気や元気の出るものを摂っている。

 

 「マカ」と言えば、通販のCMでおじいちゃんが「これを飲んで毎日元気です!!」と何やら怪しげなサプリであるが、飲んでみて元気は出てる気がする。

 

 日々、落ちこぼれ感がすごい。

 

 私が舌癌で舌を半分切除したことは、新しい職場の机を並べる8人には伝えたが、他の多くの人々には言っていない。

 

 知ってもらった方が、いいのだが、言うタイミングがなく、ただの「話し方が変で、声がおじいちゃんみたいに苦しそうに話す新しい人」になっている。

 

 そんな日々を過ごして、首が痛いと毎日思っていた。

 消えた癌がそろそろ出てきたか?と思いながら、半年に1回に変わったCT検査を受けに行った。

 

 「全然何ともないよ!!」と主治医に言われた。

 

 「首が痛くてたまらなかったので、てっきり癌が出てきたのかと思っていました。」と言うと

 

 「それは、放射線治療の後遺症で筋肉とか肉が固くなっているためで、画像は全く疑わしいものもなく、何ともないよ。」と言われた。

 

 今振り返ると、私は、新しい仕事から正当に逃げる手段として「癌という病気」を利用するつもりだったのだと思う。

 

 治療を理由に仕事を減らしたかった。

 

 でも周囲を見ると余裕は無さそうだ。仕事ができる人たちの集まりなのに、処理しても処理しても仕事は来る。

 

 

 大変なのはみんな一緒なのだから、がんばらなくちゃ!と思っても仕事が難しく、壁にぶち当たる。

 

 

 

 なんで癌患者で、若くなく記憶力が低下する年代の私が、難しくて知識の全くない仕事を担当することになったのか、どういう人選?と不満が強くなる。

 

 私だって、知ってる仕事だったら、みんなみたいに仕事を進めていくのに。

 

 その反面、みんなが知らない難しい仕事を覚えるのは嬉しいと思う自分もいる。

 新しい世界を知るのは楽しい。でも、量が多すぎる。

 

 毎日繰り返し見る手順書は、まだ数週間しか経っていないのに、まるで映画「ナイトミュージアム」で最初の方に出てきて、猿に取られたマニュアル本みたいにヨレヨレのぐるぐる巻きになっている。

 かわいそうな手順書。

 そんなに熟読しているのに、身につかない。脳の衰えを感じて悲しい。

 

 腫瘍内科の主治医に、転勤したことと、新しい仕事が全く知識のない仕事をいきなり大量にこなさなければならず、覚えられなくて大変で、嫌になると伝えた。

 

 先生は笑いながら「私はもふこさんがあれだけの大変な病状からここまで良くなって働いているだけですごいと思うよ。」

 

 「私も仕事があることはありがたいと思いますが、覚えられなくて、何か最近『こいつヤバい奴?仕事できない奴?』と思われてるようで、劣等感がひどいんです。」

 

 「いや~、それは『私、年で覚えられないし、癌患者で体もしんどいんです。』って開き直ってみるのもあると思うよ~。2匹の蟻にも何とかかんとか・・・。」(最後の方がよく聞こえず)

 

 「え?先生、今の話、最後の方、もう一度お願いします。何かメモしたくなるような話、しましたよね。」

 

 先生の説明は

 

 蟻が10匹いると2匹の働かない蟻がいる。

 その2匹の働かない蟻を抜くと、残りの蟻のうち2匹が働かなくなる。(これは私も知っていた。)

 全部の蟻が働く世界はない。

 2匹の働かない蟻がいて全体のバランスが取れている。

 

 だから、2匹の蟻も全体のバランスを取るために必要なのだ。

 

 

 組織の中で完全に働ききれない人がいたとしてもそれを卑下しなくてもいい。

 

 何らかの存在の意味はある。

 

 

 

 「!!!!!!!!」(私)

 

 確かに!過去を思い出す。

 

 働かない、あるいは働けない人は常にいたけど、その人を見てホッとしたり、何かあった。(何かはすぐ思い出せないが)

 

 「先生!!私、すごく心に伝わりました!!今は仕事の覚えが悪く、働きの悪い自分ですが、やっていけそうな気がします!!」

 

 先生もニコニコして手を差し出してくれたので、固く握手した。

 

 握手。コロナ禍では握手なんてとんでもないことだったが、今は握手ができる。

 

 「先生と握手したから、もう仕事できそうな気がします。先生の頭の良さ、吸収しましたよ!」

 

 

 そして、その後、Z先生に口腔内と歯の様子を見てもらった。

 

 口腔内の炎症を少しでも改善するために、青い小袋に入ったうがい薬を処方してもらっているが、それについて良い方法を教えてもらった。

 私が使用しているうがい薬は「AZ含嗽用配合顆粒」で1包を100mlの水に溶かしてうがいをする。

 これをうがいのたびに水に溶かすのは、地味に面倒なのであるが、500mlのペットボトルに5袋入れて水を入れて溶かしておくと、楽にうがいができる。という話。

 いつも目分量100mlに溶かし、溶けきれない粉がコップの底に残っていたが、500mlのペットボトルを使えば、計らなくていい。

 

 今は夏なので冷蔵庫に入れておくといい。知覚過敏の人は冷蔵庫に入れるのはきついが、私は知覚過敏は過去の話で、歯茎が下がってだいぶ経ち、冷たいものが沁みなくなった。

 

 口の中が常に痛い感じがあるので、うがい薬をすぐ使えるのはいいことだ。

 

 そして、前回サインした論文について「外国の雑誌の名前知ってますか?」と聞くと、「今、上層部に内容を確認してもらっていて、投稿はまだしていませんが、わかったら知らせますね。」と言われた。

 

 上層部って・・・。個人レベルでちょろっと投稿するのをイメージしていたけど、結構本格的だったのね。

 

 

 あ・・・、それで、最初のありさんの話に戻るが、私はちゃんと仕事を覚えて、働く方のありさんに成長するつもりです。

 

 次の働かない、あるいは働けないありさんのために、2匹の席を譲るつもりで、落ちこぼれ感に負けず、日々、仕事をこなし、やる気を持続するための栄養摂取に努めます!!

 覚えても働きの悪いありさんのままかもしれませんが、自分を卑下ないようにしたいと思います。