約2か月間仕事を休んでいたが、3月末に仕事に戻った。

 

 心療内科の診断書にはもう少し長く休むように、舌癌の方の診断書には夏頃まで療養・休職をするようにと指示があったが、職場に言いくるめられたような感じでこうなった。

 私も目先のことばかりではなく、先のことも考え、これが一番良い選択だと思った。

 

 戻るまでは不安もあったけど、戻ったらいつもと変わらず、みんなが温かく迎えてくれた。

 

 やっぱり「えい!やあ~!!」だね。

 

 「案ずるより産むが易し」の言葉どおり、色々心配事はあるけれど、実際に行ってみると案外たやすくできてしまうものだ。

 

 仕事を長く休んだのは2回目で、1回目は舌癌の手術、放射線治療、オプジーボでの治療で1年とちょっと休んで復帰した。

 

 1回目の復帰は、体調も体力も心配だったし、人と話ができるか、食事は?とか不安だらけだった。

 そして、仕事についても再転移した癌がすぐ現れるだろうから、それまでのお試し期間のような気持ちで復帰したのだった。

 

 2回目の復帰は、週末明けにいつもどおり出勤したかのような違和感のない空気だった。

 

 

 

 私の席は移動されていた。

 

 嬉しいことに当分電話は出なくて良いらしい。

 

 嬉しいです!幸せです!

 

 電話のせいでいつも仕事が中断して進まなくて、それもすごくストレスだったのだ。

 

 あと、気になっていた私の仕事は課長がやってくれていた。

 

 さすが!!仕事ができる人は違う!引継ぎしていなかったし、課長はやったことがない仕事のはずなのに、誤りなくできていた。

 

 

 ここまでは、良い話。

 

 次は、やっぱりストレス溜まるわ~!と思った話。

 

 前からストレスの根源だった人。

 

 ストレッサーから取って「S氏」としよう。

 

 S氏が「すいません。これ、全然わからないのでやってください。」と大量の仕事を指さした。

 

 「ああ、はい。」

 

 また、来て「すいません、これもわからないのでやってください。」

 

 次にこそこそ来て、「これ、ちょっとやってください。」

 

 だんだん、自分の仕事をこそこそ持ってきて、表面上はS氏がやったように見せかけて、字が細かくて大変なのか、私にやらせよう「しめしめ、これもこれも・・・👿」って感じなのだ。

 

 私は心の中で

 

 ちょ 待てよ!

 

 

・・・すいません。実はキムタク好きじゃないんですけど、使わせてもらいました。

 

 このストレスを家に持ち込んで、家でふと思い出してイラッとしてしまう。

 

 簡単に書いたが、本当にひどい話なのだが、ひどい話を文字にすると、また私がそれを読み、嫌な気持ちになるので、このくらいでやめておく。

 

 私は、今年の夏に転勤すると思われるので、あと数ヶ月の辛抱だ(と思っている)。

 

 それに、新しい場所にもまた問題やストレスのもとはあると思うので、生きていくというのは、どこにいてもストレスがあるという認識で、それをうまく解消していくしかない。

 

 ところで、2ヶ月の休みを取って、すぐに体調が悪くなったのを感じた。

 

 もともと固くてガチガチだった首や肩が更に固く、石のようになった。

 

 放射線治療から3年。噂に聞いていた「晩期後遺症?」

 

 わからない。

 

 映画で、人間が悪魔に石にされるシーンがあるが、首と肩が石になったように感じる。

 

 歯の痛みも急にやってきた。

 

 右手も動きが悪くなり、動作によっては激痛が走った。

 

 でも、後遺症については仕方がない。

 

 医者に言ったところで、どうしようもない。

 

 そんな生きている人間の愚痴より、今まさに命を脅かされている患者さんの治療の方に力を注ぐべきだ。

 

 首・肩が石のようになって、寒さもあって気分は落ち込みそうだったが、仕事のストレスを感じないことで、とても救われたと思う。

 

 仕事を休むという不安な気持ちもあったが、「いかに先のことを考えず、今に集中するか。」を実行して、不安を少なくした。

 

 ある本によると、不安とは「未来を予測する」ことによって生じるもので、「今ここ」に集中することができると、不安に突き動かされて生じる妄想的な予測に振り回されることがなくなる、らしい。

 

 私は、復帰する時に、心も体も良い状態で出勤できるように一日一日に集中して過ごした。

 

 また、電話にストレスを感じなくなるように、話し方(滑舌)やかすれて聞き取りにくい声を良くするためのトレーニングをした。

 

 朝は6時起床、テレビ体操、ヨガ、ストレッチ、食事はしっかりゆっくり。歯磨きも心を込めて優しく。

 

 滑舌と声のトレーニングを午前と午後(だいたい歌を歌う。お前は歌手か~?)

 

 本屋に行き仕事関係の本で勉強(すぐ眠くなるのがわかっているのに、行かずにはいられなかった。)

 

 飽きたら、断捨離。

 

 夕方は帰ってきた娘に「ちょっと、話し方のトレーニングだから、私の話を聞いたフリするだけでいいから」と、今日の話やニュースの話をして、話し方のチェック。(娘はスマホを見て、私の話を聞いているような聞いていないような感じで付き合ってくれた。)

 

 この規則正しい生活を初日から最後まで続けた。

 

 毎日、飽きもせずよくこんなにコツコツつまらない生活を続けられるよな~、と自分で感心していた。

 

 こうしないと不安だったし、少しでも自分に良いと思えることをしたかった。

 

 石のような首・肩はより石に近づいている気がする。

 

 このまま、化石になってしまうのでは?

 

 どんなに、声のトレーニングをしても気管(空気が通る管)が固くなる速度の方が勝っている気がする。

 

 でも、その速度に負けないように歌の練習をしたら、歌える歌が増えてきた。

 

 涙そうそう(夏川りみ)や聖母たちのララバイ(岩崎宏美)が歌えるようになった。

 

 ・・・と思ったら、次の日は声が出にくい。気管が締め付けられる。

 

 毎日、良くなったり悪くなったり。

 

 「どんなに練習してもダメなのか?」とある日、難しくて声が出ない歌をやけっぱちで歌った。

 

 声が出てびっくりした。

 

 好きだけど歌えない歌。天空の城ラピュタの「君をのせて」

 

 

 歌えたことにびっくりして何度も繰り返し歌った。

 

 「出るんだ。」と驚いた。

 

 首・肩は石みたいになっても私の細胞が頑張っている。えらいよ~~!!

 

 3月31日歯が抜けた。

 

 激痛を私にくれた1本だった。

 

 最後は出血もせず、ポロッと抜けた。

 

 「虫歯ではありません。治療すると顎の骨の壊死になる場合がありますから、自然に抜けるのを待ってください。抜けた時にその場所が歯や骨が見えず肉で覆われているのがベストです。」と歯科医が言っていたが、虫歯じゃなかったし、抜けた部分を鏡で見たら、ピンク色の歯茎で覆われていた。

 

 左上の奥歯。放射線治療の後、3本なくなった。

 

 でも、これで最後だと思う。