「ひとりで並んでやろうかと思ったんです」

 

その方は、少し怒った顔でそう言いました。

 

駅の裏にある洋菓子店の、秋だけのモンブラン。一つ千二百円。

 

※ここに書くのは、いくつものご相談をもとにした架空のお話です。

 

気になっている人と行くつもりで、半月前から誘う文面を考えていたそうです。

 

送ったのは「来週の土曜、ここ行かない?」とお店の写真。

 

返事は「その週は出張なんだ、ごめんね」でした。

 

並ぶ前に、スマホを見せてもらいました

 

断られた次の土曜、その方はお店の前まで行ったそうです。

 

列は十人ほど。最後尾に立つ手前で、足が止まりました。

 

ここでひとりで食べたら、もう誘えなくなる気がした、と。

 

その話を聞いて、断りのメッセージを見せてもらいました。

 

「その週は」。

 

断られていたのは、その週だけです。

 

モンブランのことも、その方のことも、お相手はひと言も断っていません。

 

「出張って、本当なんでしょうか」と聞かれました。

 

本当かどうかは、私にも視えません。

 

ただ、断る理由に期限が付いているうちは、次を誘っていい段階です。

 

二度目は、日にちを二つ

 

お相手から別の日の提案がなかったことも、ずっと引っかかっていたそうです。

 

断ったうえで別の日を出すのは、断られた側が思うより気が重いものです。

 

今度は自分が誘う側に回るからです。

 

だから二度目は、こちらから日にちを二つ出しておく。

 

「再来週の土曜か、その次の日曜」。

 

選ぶだけなら、返事はずっと軽くなります。

 

そこにも「その日は」で返ってきたら、まだ忙しい時期。

 

「しばらくバタバタで」と期限が消えたら、そのときはモンブランをひとりで、ゆっくり味わえばいいんです。

 

どちらにしても、季節限定は十一月の半ばまで続くそうです。

 

その方は、列には並ばずに帰りました。

 

帰り道に、二つめの日にちを決めたと話してくれました。