風変わりなくまの絵柄の服に身を包む、芸術家気取りの英之。人生最大級の偶然に賭け、憧れのバンドマンに接近したゆりえ。舞台女優の夢を捨て、有望画家との結婚を狙う希麻子。ぱっとしない毎日が一変しそうな期待に、彼らはさっそく、身近な恋を整理しはじめるが……。
ふる/ふられる、でつながる男女の輪に、学生以上・社会人未満の揺れる心を映した共感度抜群の「ふられ」小説。
その章の主人公がフラれ、そのフッた相手が次の章ではフラれる主人公になるという、
失恋リレーのような物語。
☆
私、須藤が初めてフラれたのは2000年秋のおわり。ノストラダムスの大予言はまぬがれたけど、まさか自分の人生にこんな哀しいことが起きることは予想していなかった14歳。
それは初恋の相手と運良く付き合えて半年が経ったころ。「勉強に集中したいから」と彼から電話で告げられる。多分ほんとうの理由は違うんだろうなぁと感じたけど聞かなかった。
初デートは、目的地もなく二駅分ひたすらに道を歩いた。夏だった。途中デパ地下で試食販売をつまんだ。コンビニに一度だけ寄ってジュースを買った。
当時の私はディズニーランド土産のお菓子が入っていた缶を大切なモノBOXにしていて。
その時のコンビニのレシートもそこに入れていたし、フラれた後もホワイトデーのお返しに貰った小さな人形、卒業式で貰った第2ボタンなどが溜まっていった。しぶとく好きだった。
成人してから何でだったのか思い出せないけど、一度食事をした。カジュアルだけど夜景が見えるレストランに連れていってくれた。確か別れたばかりの元カノの話や仕事への情熱を語っていた記憶がある。彼はビールを飲んでいて、大人になったもんだなぁ、なっちまったもんだなぁと、思ったのを覚えている。その後その彼女とヨリを戻して結婚したと風の噂で聞いた。
ダンス公演を観に来てくれたこともあった。私にはノーコメントで「後輩の子カワイイ」とべらぼうに気に入っていた。
子供が出来たと聞いておめでとうと連絡をした。話しの流れの中で「仕事が命って感じだから子供とかいらないんだと思ってた」と言われた。ケッと思って返信しなかったけど、なんとも彼らしいなぁとも思った。
ん?彼らしいってなんだろう。私はそんなにその人を知っているのか?おこがましいぞ。でもそもそも知りたいと思う気持ちから、好きになったんだよなぁ。私しか知らない彼もいるだろう。ふだんはシャイであまり話してくれなかったけど、プッチモニの曲を電話ごしに流し分かりづらくも好意を伝えてくれるお茶目さが好きだったな。時間が進んでいることを抜かしても、私が知らない彼はもっともっといるんだろうね。
自分のフィルターをとおして相手を見るんだから、知っても知ってもそりゃあ知らないことがたくさんあるはずだ。勝手な期待や色づけも含めてそれは、おもしろくて素敵なことだと思う。
うまくいってもいかなくても、人と深く関わることってやっぱり楽しいねぇと思わせてくれた一冊。
