{0D15D5F3-2761-4191-8AF5-69E5523663D8}
演劇を通して世界に立ち向かう売れない劇作家の永田と、服飾学校に通う女優の卵、沙希。
夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った。
夢と現実のはざまでもがきながら、かけがえのない大切な誰かを想う、切なくも胸にせまる恋愛小説。



小学校四年生の学芸会は、なんとオーディションがおこなわれた。
「もしも私の夢が叶うなら~♫」とソロパートを歌う役があり、私はなんとかその役をゲットしたくて、練習を重ねた。

ついにやって来た審査当日の朝。
私は高熱でうなされていた。
我ながら、超わたしらしい。
何時もふざけてばかりの父が私のことを「情けないクン~」と、からかってきた。泣いた。

幸いオーディションは五時間目からだったので、ギリギリまで自宅で休み、みんなが給食の片付けをしているところへ、母の自転車の後ろのカゴに乗せてもらいどうにかして登校。
しかも運良く合格した。

そうして気合い十分で臨んだ本番は、ソロパート中に声が裏返ってしまい、落ち込んだ記憶が強く残っている。
うん、超わたしらしい。


時は流れ、父は今でも私が舞台に出演するたびに何人も友人を連れて見にきてくれる。
感想はあんまり聞かせてくれないけど、ふざけた調子で「小学生の頃と、おんなじだね~」とだけ言ってくる。
私は、おいおいそれってどうなのよ、と心の中で突っ込みながら、「そうかもね」と笑う。



気付けば学芸会の時に一緒に歌っていた同級生たちは皆んな、スーツを着て働いている。
どんどん母親、父親になっていく。

そんなとき私は、自分だけ「子どものまま」のような気分になる時がある。

ふと、思う。
だけど、私が大人だ、と勝手に思っている同級生達も、父親でさえも、もしかしたら、自分だけ「子どものまま」な気持ちになる時があるのかなぁ、と。

だとしたら、おもしろいなぁ、と。

どんな大人も、みんな、人から生まれた子どもだもんね。



【劇場】を読むと、そんな「子どものまま」を抱えた大人の心の葛藤がよくみえます。
どうにかしたいのに、どうにもできない、もどかしさ。
主人公の男性とその恋人の心の成長の差と、二人のすれ違っていく様をみて、時間を一緒に育てていくことの大切さと難しさを感じました。

大人になりきれないあなたへ、
頑張って大人になったあなたへ、
気づいたら大人になっていたあなたへ、
そして、演劇やってる人あるあるがいっぱい出てくるから、演劇を愛するあなたにも、
オススメしたい一冊。



追伸: 
オーディションで特技披露があった時の私の最終兵器は「口を閉じたまま、カエルの歌を唄う」です。腹話術みたいな。
18歳の時からこれやってる。最近もやった。
...大人になろう!
{0E0922AB-AA67-49F7-A536-AD47D1EDA7B5}